オーストリア、リンツで開催されている世界的な電子芸術祭『アルスエレクトロニカ』。その30周年を記念して、東京都現代美術館にて国内では初となるアルスエレクトロニカ特集展『サイバーアーツジャパン-アルスエレクトロニカの30年』が開催中だ。「アルスエレクトロニカ」には、日本で活躍する作家も多数入賞しており、繋がりも深い同芸術祭。歴史を紐解く貴重な資料と共に、メディアアートを体験できる。
Text:石井幸太

スズキユウリ『Physical Value of Sound』
アナログなアクションで動作するサウンドインスタレーションを制作するスズキユウリ。5本のアームを持つレコードプレーヤー『Prepared Turntable』と、バラバラにしたレコードをレール状にして繋げ、自走式のプレーヤーを走らせる『Sound Chaser』を出展した。

八谷和彦『PostPet NOW』ほかインスタレーション
アルスエレクトロニカを受賞したメールソフト、PostPetをTwitter版として進化させた『PostPet NOW』のデモ版が出展されている。操作パネルを用いて来場者は、画面を操作することができ、またこの展示空間のみ記念撮影も許可されている。八谷氏はこの他にデバイスアート・プロジェクトにも参加している。


児玉幸子『モルフォタワー』
磁性流体と呼ばれる磁気を帯びた液体を用いた作品を多数発表している児玉幸子。艶のある黒色の液体のウネウネとした磁性流体独特の動きは、まるでコンピュータグラフィックスが画面から飛び出し実体化したかのような非現実感がある。

野口靖+安藤英由樹『Watch Me!』
世界中の街角で、機械仕掛けで動き出す熊のぬいぐるみを設置し、隠しカメラで撮影した人々の反応から視線を抽出した作品。突如現れた、可愛らしくも無気味な動作をする異質な物体に驚き、視線をそらす者から好奇の眼差しを向ける者まで、文化や世代の違いで異なる反応を観察することができる。

真鍋大度『Face Visualiger, instrument, and copy』
音楽と共に顔面の筋肉に電気が流れ、表情がいびつに変化していく映像作品。自らの意志、感情とは関係なくコンピュータ制御で痛々しくも表情が変化していく様は、コンピュータ社会に対する警笛とも見て取れる。

平野啓一郎+中西泰人+森野和馬+ケンイシイ『DAWN』
今話題の3D映像技術を駆使した作品。平野啓一郎氏の小説『ドーン』を題材に森野和馬氏がCG映像、ケンイシイ氏が音楽、中西泰人氏が空間構成を行なった。小説のS.F.的世界観がサイケデリックに表現されている。


(左)EXONEMO『祈り』(右)EXONEMO 『迷い』
EXONEMOはICCで展示していた『ゴットは、存在する』の別バージョンを出展。Twitterやマウスなど、普段使っているネットメディア、コンピュータデバイスに“神”を降臨させた。また、自身がアルスエレクトロニカの大賞を受賞し、贈呈されたゴールデンニカ像そのものを用いた挑戦的な作品も新たに制作した(写真右)。

明和電機
アルスエレクトロニカには、過去に明和電機もインタラクティブアート部門で受賞しており、これまで作られてきた製品(作品)が年代順に並べられた。

河口洋一郎
1975年からコンピュータグラフィックスに着手、日本人初めてのアルスエレクトロニカ受賞者となった河口洋一郎。日本とアルスエレクトロニカとの歴史に深い繋がりのある彼は多数の立体造形、映像作品を出展した。
鈴木康広/東京大学「デジタルパブリックアートを創出する技術」プロジェクト『木陰のスクリーン』

鈴木康広/東京大学「デジタルパブリックアートを創出する技術」プロジェクト(左)『空気の港』(右)『まばたきの葉』
メディアアーティストや研究者が参加する東京大学「デジタルパブリックアートを創出する技術」プロジェクト。デジタル表現、技術を駆使したパブリックアートを作り出している。『木陰のスクリーン』は、Suica、PASMOなどの非接触型ICカードからこの作品に辿り着くまでに利用した交通機関を読み取り、作品上部の回転するプロペラに星座のように投影する。『まばたきの葉』は床に散らばる眼のイラストが描かれた木の葉型の紙を作品に投入することで、上部から吹き出され、葉が舞うという作品。イラストとして描かれた眼が、まばたきをしているように見える。
絵画や彫刻に比べ、線引きが曖昧なメディアアート。しかし、逆に言えばそれだけ自由だということかもしれない。毎週末に行われる作品デモでは、作品制作の際には考えるに違いない難しい理論や計算などは感じさせずに、メディアアートの過去、現在、未来を楽しみ、知ることができる。
Exhibition Information

『サイバーアーツジャパン-アルスエレクトロニカの30年』
February 2 - March 22 2010 at 東京都現代美術館企画展示室地下2階・アトリウム
出品アーティスト:h.o + 株式会社電通、クリスタ・ソムラー&ロラン・ミニョノー、河口洋一郎、岩井俊雄、鈴木康広、デバイスアート・プロジェクト、岩田洋夫、明和電機、八谷和彦、クワクボリョウタ、稲見昌彦、児玉幸子、平野啓一郎+中西泰人+森野和馬+ケンイシイ、池田亮司、真鍋大度、tEnt(田中浩也+久原真人)、エキソニモ、スズキユウリ、野口靖+安藤英由樹、渡邊淳司+田畑哲稔+安藤英由樹、渡邉英徳、国立天文台4D2Uプロジェクト、JAXA宇宙ステーション(ISS)/「きぼう」文化・人文社会科学利用パイロットミッション












