黒沢清が教鞭をとり、北野武が名誉教授を担う東京藝術大学大学院映像研究科「監督領域」。07年4月、自主映画作家として国内外の映画祭の常連だった真利子哲也は、あるカリキュラムに惹かれてこの学舎の門戸を叩く。それは、修了制作には200万円の製作費が支給され、大学の機材が使い放題で、作品は映画館で上映されるというもの。真利子監督はそのチャンスをフルに活用し、プロの俳優もキャスティングして、『イエローキッド』は完成した。
Text:須永貴子
「イエローキッド」とは、100年前に実在したアメリカンコミック。このキャラクターを使って「イエローキッド」シリーズを描くマンガ家の服部(岩瀬亮)と、そのマンガシリーズの大ファンであるボクサー志望の青年・田村(遠藤要)が出会ったことで、二人の現実と虚構が交錯していく。
どうしようもない日常からの突破口として、イエローキッドに自分を重ねていく田村。田村とイエローキッドの融合に心と筆を踊らせ、マンガの中のことが現実になっていく感覚に興奮する服部。まったく接点のなかった二人の人生が、マンガ「イエローキッド」を交差点にして、まるで遺伝子モデルのようにうねり進み、そのダイナミズムを増していく。
その先で二人を待ち受けているものは、素晴らしき別世界か、それとも破滅か。エンドロールの後に描かれる、あるカメラが捉えた無音の映像が意味するものは、この映画の中で二人に起きたことのどこまでが現実だったのかを表すヒントである。すべてを描ききらないさじ加減もまたニクい。
長編第一作とは思えない理由を挙げていったらきりがない。鏡や車のバックミラーを効果的に使ったカメラワークや、ある決意をする田村を捉えた商店街一発撮りの長回しなど、映像主義のようでいてそれはすべてキャラクターを構築する意味をちゃんともっている。また、オリジナルのマンガ「イエローキッド」のクオリティも高ければ、チャンチキトルネエドのメンバーである鈴木広志と大口俊輔が担当したサウンドトラックも可愛気がないほどにハイセンス。このマンガと音楽で始まるオープニングだけで、この映画、そしてこの監督のやんごとない様はじゅうぶんに伝わってくる。
『イエローキッド』は、1月30日より、ユーロスペースほか全国順次公開予定。
真利子哲也監督のインタビューは、INTERVIEWページで間もなく公開予定!!

Information
『イエローキッド』
監督:真利子哲也
主演:遠藤要、岩瀬亮ほか
配給:ユーロスペース
2009 / 日本













