4時間に迫る衝撃作『愛のむきだし』の記憶も新しい園 子温監督が、早くも最新作『ちゃんと伝える』を完成させた。毎回物議を醸すラディカルなアプローチで、現代社会を挑発する数々の作品を世に送り出してきた彼が、亡き父に捧げたという本作は、意外なほどに私的な映画に仕上がっている。
Text:原田優輝
『愛のむきだし』『自殺サークル』など、数々の衝撃作で、国内外問わずコアな映画好きを熱狂させてきた園 子温。だが、本作『ちゃんと伝える』は、これまでの園作品を支持してきたファンからすると、ある意味肩すかしをくらうものになるかもしれない。
父と子、男と女、家族、友人。迫り来る死を前に、愛する者たちに本当の想いを伝えることができるのか? 本作は、そんな古典的とも言えるテーマを、真摯に描ききった作品だ。
だがその設定は、やはり園らしく、いささか変わっている。癌に蝕まれた父を見舞う息子にも、非情な癌の宣告がされてしまうのだから。
地元の高校のサッカー部の鬼コーチとして知られ、家庭でも、”絶対的君主”であり続けた徹二(奥田瑛二)と、そんな父親にこれまでの人生でちゃんと向き合うことができなかった息子・史郎(AKIRA)。だが、迫り来る父の死を前に、ふたりの間には親密なコミュニケーションが芽生え、退院後には、2人きりで湖に釣りに行くことを約束する。
そんな折に、史郎にも下される思いもよらぬ癌の宣告。しかも、その進行は父よりも深刻なものだった。
自身もまた癌であるという絶望的な真実を、両親はもちろん、フィアンセ・陽子(伊藤歩)にも伝えることができない史郎。彼には、ただただ父に先に逝ってもらうことを祈ることしかできなかった—。
父と子、そして、それをとりまく家族、恋人、友人たちの心の動きを、繊細に捉えるクローズアップが印象的だ。一方で、これまでの園作品にはほとんど見られなかったロングショットも多用されている。美しい田舎の風景、そして、淡々と反復される日常の営みを捉えるカメラが、美しくも無情な時間を雄弁に伝え、日常と死の距離感を縮めていく。
死を目前に交わされた最期の約束、そして、再生していく愛する者同士の絆は、果たしてどこに行き着くのか?
園監督が、自身の経験を元に描き出した物語には、切ないまでにピュアな人間の性が描き出されている。
『ちゃんと伝える』は、8/22よりシネカノン有楽町1丁目ほか全国ロードショー。

Information
『ちゃんと伝える』
監督・脚本:園 子温
出演:AKIRA、奥田瑛二、伊藤歩ほか
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2009 / 日本
(C)2009「ちゃんと伝える」製作委員会












