『マルコムX』、『ドゥ・ザ・ライト・シング』など、独自の視点で、アメリカ黒人社会の光と影に迫ってきたインディペンデント映画界の重鎮、スパイク・リー。彼の最新作『セントアンナの奇跡』は、戦場を舞台にした初めての作品だ。第二次世界大戦下のフィレンツェと、現代のニューヨークを結ぶ、実話から生まれた壮大な物語は、彼の新境地を感じさせてくれる力作に仕上がっている。
Text:原田優輝
現代のニューヨーク。真面目で温厚な郵便局員が、窓口に現れた一人の男性客を、突然射殺した。やがて、その郵便局員の家からは、歴史的に極めて重要な彫像の頭部が発見される。
第二次世界大戦中のイタリア、トスカーナ地方。過酷な最前線に送り込まれたアメリカの黒人兵だけによる部隊「バッファローソルジャー」の中に、若き日の郵便局員の姿があった—。
この作品は、大きく隔たる2つの場所/時が、様々なエピソードとともに交錯する「奇跡」についての物語だ。
ナチスとの激しい戦いに身を投じていたバッファローソルジャーのトレインは、爆撃に倒れた少年・アンジェロを発見する。その少年を救出したために、部隊からはぐれてしまった4人の黒人兵士たち。彼らは、やがてある村に辿り着く。村中に貼られた”敵国・アメリカ”のポスターに、最初はとまどう黒人兵たちだが、母国のような黒人に対する偏見がない村人たちとの間には、やがて人種や国籍を超えた絆が育まれていく。
だが、反ナチ組織「パルチザン」たちが村を訪れ、事態は急変する。それをきっかけに、明らかになる少年の出自。彼は、パルチザンの掃討作戦を展開していたナチスが、罪のない市民たちを大量虐殺した事件「セントアンナの大虐殺」が起きたその街からやって来ていたのだ。
現存するセントアンナ教会で撮影されたというその虐殺シーンは、「奇跡」とはほど遠い絶望的なシーンだ。神父たちが懸命に捧げる神への祈りは、非情な銃声によって打ち消されてしまう。やがてその悲劇は、村の人々にも襲いかかることとなる。
それでも、この作品は、冒頭でも触れた通り、ある「奇跡」についての物語だ。だがそれは、神によって救済がもたらされるような、人知を超えた現象として描かれることはない。人間によってもたらされた絶望を救済するのもまた人間であることを、この映画のラストシーンは雄弁に物語ってくれる。
『 セントアンナの奇跡 』は、7/25よりTOHOシネマズ シャンテ、テアトルタイムズスクエアほかにてロードショー。

Information
『セントアンナの奇跡』
監督:スパイク・リー
原作・脚本:ジェームズ・マクブライド
出演:デレク・ルーク、マイケル・イーリー、オマー・ベンソン・ミラー、マッテオ・シャボルディ、ジョン・タトゥーロほか
配給:ショウゲート
2008 / アメリカ・イタリア / 163分
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