日本におけるアート・アニメーションブームの先駆けとなる『ストリート・オブ・クロコダイル』(86年)でセンセーションを巻き起こした双子の映像作家、ブラザーズ・クエイが、最新作『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』を完成させた。彼らの大ファンと公言するテリー・ギリアムを製作総指揮に迎えたこの作品で、彼らはどのようなクエイ・ワールドを展開してくれるるのだろうか?
Text:原田優輝
チェコの芸術家/映像作家、ヤン・シュヴァンクマイエルを敬愛し、彼からの影響を多分に感じさせるシュルレアリスティックな魔術的映像作品で、世界中のクリエイターたちにインスピレーションを与えて続けてきたブラザーズ・クエイ。日本においても、パペット人形、時計、ネジなどに生命を吹き込むアミニズム的志向によるパペット・アニメーション作品『ストリート・オブ・クロコダイル』で、カルト作家としての地位を不動のものにした彼らだが、その記念碑的作品から20余年の時を経て、ついに最新作『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』が公開される運びとなった。
あるオペラ演奏会の最中、結婚式を間近に控えた美しき歌姫マルヴィーナの魂を抜き取り、恋人の前で誘拐する狂気の科学者ドロス博士。彼は、マルヴィーナの美しい歌声を利用し、孤島に建つ自身の邸宅で、自分の音楽を受け入れなかった者たちへの復讐として、破滅的なオペラ演奏会を企てる。
そのオペラ演奏会のために発明された演奏機械人形の調律を依頼されたピアノ調律師フェリスベルトは、博士の恐るべき計画に気付き、マルヴィーナを孤島から救い出そうと思案するが—。
ピアノ調律師を誘惑する家政婦アサンプタ、囚われの身にある不遇の歌姫マルヴィーナを通して描かれる独自のエロティシズム、演奏機械人形に投影されるメカニカルなシステムへのフェティシズム、そして、不条理に満ちたカフカ的世界観。
クエイ兄弟にとって、初の長編作『ベンヤメンタ学院』以来2作目となる”生身”の俳優をキャスティングした本作だが、独特のクエイワールドは相変わらず健在だ。
結局のところ、ドロス博士の狂気を巡る登場人物たちは、クエイ兄弟が創り上げた密室的空間の中で、人形のように操られているだけなのかもしれない。
これまでの短編作品にはない豊かな物語性と、実写とアニメーションを融合させた魔術的な映像が、約100分間に亘り展開されるめくるめく幻想世界へと誘ってくれるだろう。
『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』は、10/18よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開。また、公開に先駆け、シアター・イメージフォーラムでは、10/17までクエイ映画祭『ブラザーズ・クエイの幻想博物館』が開催中で、日本初公開作品も含む過去作が上映されている。

Information
『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』
監督:ブラザーズ・クエイ(スティーヴン・クエイ/ティモシー・クエイ)
製作総指揮:テリー・ギリアム
主演:アミラ・カサール、ゴットフリード・ジョン、アサンプタ・セルナ、セザール・サラシュ
配給:東北新社
2005 / イギリス
(c)2005 Konick Studio Ltd.,Lumen Films, Mediopolis Film-und Ferneshproduktion GmbH Leipzig, UK Film Council, Arte France Cinema












