『叫』(2007)、『LOFT』(2006)とホラー作品の発表が続いていた黒沢清が、初めて「家族」というテーマに真正面から向き合った最新作『トウキョウソナタ』。どこにでもあるような平凡な家族の物語の先に見えるのは、果たして現代社会への絶望か? それともアカルイミライへの希望なのだろうか?
Text:原田優輝
社会生活におけるミニマムな共同体である「家族」は、あまりにも近いその関係性が故に、本当に向き合うことは、実は、そう多くはない。
それぞれが「家族」という枠組みの中で与えられた役割を演じ、淡々と流れていく日常。その”無感覚”な日常は、常に内外の様々な要因に影響を受けながら、ある決定的な出来事が引き金となり「崩壊」に向かうこともあれば、あるいはそれでも「何も起きない」という事実によって、空虚感だけを残すこともある。
本作『トウキョウソナタ』は、そんな現代に生きる典型的な家族の物語が、何気ないワンシーンに恐怖や笑いを潜ませる黒沢の確かな手腕によって描かれた秀作だ。
リストラされたことを家族に隠す父、ドーナツを作っても食べてもらえない孤独な母、アメリカ軍に入隊し戦場へと向かう兄、そして、両親に内緒でこっそりとピアノを習うボク—。
一見平凡だが、それぞれが家族に言えない秘密を抱える東京に住む4人家族。その空虚な関係の中で日々を過ごしていた家族に、ある日強盗が押し入り、ついに一家は訪れるべくして訪れた「崩壊」の時を迎える。
今年に入り、是枝裕和『歩いても 歩いても』、橋口亮輔『ぐるりのこと。』など、日本を代表する映画監督たちが、相次いで「家族」や「夫婦」にテーマを当てた作品を発表している。そこには、決して明るいとは言えない現代社会における逆らい難い大きな流れの中で生きる、最も身近な人間の関係性に目を向けることで、何らかの希望を見出そうとする共通の想いがあるのかもしれない。
黒沢監督自らが「ある種の希望にたどり着きたかった」と話る本作『トウキョウソナタ』もまた、その文脈にある作品と言えるだろう。
崩壊した一家がラストシーンで包まれる「希望」は果たして、劇場の外に出ることができるのだろうか?
『トウキョウソナタ』は、9/27より恵比寿ガーデンシネマ、シネカノン有楽町ほかにて公開。

Information
『トウキョウソナタ』
監督:黒沢清
脚本:マックス・マニックス、黒沢清、田中幸子
主演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇 海、役所広司
配給:ピックス
2008 / 日本
(c)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会












