ウェス・アンダーソン監督が、最新作『ダージリン急行』の舞台に選んだのは、混沌の国インド。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)、『ライフ・アクアティック』(05)により、天才監督の称号を与えられた彼が本作で挑むのは、インドの列車を舞台に風変わりな3兄弟が繰り広げるロードムービーだ。
Text:原田優輝
父の死がきっかけで疎遠になっていた3兄弟が1年ぶりに集い、結束を取り戻すための“心の旅”に出るべく、インド横断列車に乗り込む—。
そんな奇抜な設定に、またもニヤリとさせられてしまうウェス・アンダーソン最新作『ダージリン急行』。
ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン(劇中ではホイットマン3兄弟の末っ子ジャック役を務めている)との共同執筆によるこの作品は、なんと本物の列車を約3ヶ月間貸し切り、インド北西部ラジャースターン州の砂漠地帯を実際に走らせながら撮影されたのだという。
頭に包帯を巻きながら旅を続ける長男フランシス、妊娠した妻との間に問題を抱える次男ピーター、失恋の痛手を負っている作家の3男ジャック。父は他界、母は行方不明という恵まれない境遇に加え、それぞれがパーソナルな問題を抱えながら旅を続ける彼らは、時にいがみ合い、時になぐさめ合いながら、すべてを飲み込むインドという巨大な存在を前に、次第に自己と向き合わざるを得ない状況へと向かっていく。そして、様々な試練を乗り越えた(?)末に、行方不明になっていた母パトリシアが孤児たちと暮らしているというヒマラヤの修道院を訪れるが…。
一度乗り込んでしまったら、線路の上を進む列車に身を委ねることしかできない乗客たちの関係は、ともすると運命共同体としての「家族」に近いのかもしれない。(彼らを乗せた列車が“迷子になる”劇中のシーンは象徴的だ。)
“家族の絆”を再認識し、それぞれが抱える個人の問題への答えを導き出していくホイットマン3兄弟の列車の旅を通して、これまで描き続けてきた「喪失」「家族」といったテーマをさらに深めていくアンダーソンの手腕に、観客はまたしても引き込まれていくことだろう。
『ダージリン急行』は、3/8よりシャンテ シネ、恵比寿ガーデンシネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

Information
『ダージリン急行』
監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン
主演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン
配給:20世紀フォックス映画
2007 / アメリカ
(c)Twentieth Century Fox Film Corporation










