『ウェイキング・ライフ』(01)、『スクール・オブ・ロック』(03)のリチャード・リンクレイター監督による最新作『ファーストフード・ネイション』が公開される。インディペンデントとメジャーを軽快に行き来する俊才が今回目を付けたのは、アメリカのファーストフード業界だ。
Text:原田優輝
ファーストフード業界の実体を描いた映画としては、モーガン・スパーロック監督自らが実験台となり、30日間マクドナルドのみを食べ続けるというドキュメンタリー『スーパーサイズ・ミー』(04)が記憶に新しい。業界の闇を暴いたこの作品は、その斬新な手法も含め、大きな反響を巻き起こしたが、この作品が生まれた背景に、エリック・シュローサーによる著書『ファーストフードが世界を食いつくす』(草思社)の存在ががあったことはご存知だろうか? 著者の徹底的な取材により次々と明らかになる衝撃の事実が綴られたこのドキュメンタリーは、全世界で140万部を越えるベストセラーとなっている。
今回紹介する『ファーストフード・ネイション』は、同書をフィクションとして映画化した作品で、著者であるシュローサーもリンクレイター監督とともに脚本を執筆している。
利潤追求を最優先するハンバーガー・チェーン「ミッキーズ」の本社幹部、下請けの精肉工場で酷使されるメキシコからの不法移民、そして「ミッキーズ」の店舗でアルバイトとして働く学生たち。そんなファーストフード業界を取り巻く人々の日常が、牛肉パテへの大腸菌混入という事実が発覚することにより錯綜していく—。
ファーストフード業界という、いわばアメリカの現代社会を象徴する題材だけに、センセーショナルな側面ばかりに目が向きがちだが、業界の病理を暴くべく制作された『スーパーサイズ・ミー』とは異なり、リンクレイターの焦点は、あくまでも業界に関わる様々な人間たちの多種多様な“ドラマ”を描くことにあったように感じる。「巨大なシステムに振り回される弱き人間たちのパーソナルな物語」という伝統的なフォーマットを踏襲し、「格差社会」「食の安全」「劣悪な労働環境」という資本主義が生み出した負の遺産への彼なりの問題意識を提示した“フィクション作家”としての本領発揮といえる作品だ。
『ファーストフード・ネイション』は、2/16よりユーロスペースほか全国順次公開。

Information
『ファーストフード・ネイション』
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
原作・脚本:エリック・シュローサー
主演:グレッグ・ギニア、イーサン・ホーク、アヴリル・ラヴィーン、カタリーナ・サンディノ・モレノ
配給:トランスフォーマー
2007 / アメリカ・イギリス
©2006 RPC Coyote,Inc.











