ハーモニー・コリン8年ぶりの新作は、マイケル・ジャクソンのモノマネをして生きる孤独な男が、本当の自分に向き合う勇気を獲得するまでを描くポエティックな物語だ。
Text:須永貴子
パリの街角でマイケルのモノマネをしている青年は、マリリン・モンローのモノマネをする女性に出会い、惹かれる。彼女に誘われるがままに、〈モノマネ仲間〉が暮らすスコットランドのコミューンに加わるマイケル。そこで、疑似家族のいる幸せな毎日と、残酷な現実を突きつけられることで、他の誰でもない、自分として生きていく決意をする—。
その過程は、〈アンファン・テリブル 恐るべき子供〉として畏れられたコリンが、映画への愛を失い、〈孤独=ミスター・ロンリー〉にさすらい、再び映画作りに向き合うまでに、見事にシンクロしている。
イメージのコラージュは美しいけれど、観客の理解を拒絶していた『ガンモ』や『ジュリアン』に対し、本作のマイケルの物語は他愛もないくらいわかりやすい。マイケルの成長に、コリンの成長を重ねて見ると感動的ではあるけれど、映画は作家の人生とは無縁な部分で成立しているべき。そう考えたときに、本編にインサートされる第2のストーリー、〈飛行機からパラシュートなしでダイブする尼僧の奇跡〉が発揮する効果は絶大だ。
このアイデアだけでミュージックビデオが撮れてしまうほどの映像力と詩。そこに潜在する信仰心と強迫観念。それが、「マイケル・ジャクソンになりたい男」のキャラクターをふくよかに肉付けし、鮮やかなインパクトを残すのだ。
〈わかる人だけがわかる〉個性的な映像作家から、〈誰にでも容易に理解できるが、他の誰にも真似の出来ない映画を作る〉真の映画作家へと、ハーモニー・コリンは見事に再生した。
『ミスター・ロンリー』は、2/2よりシネマライズほか全国順次ロードショー。
ハーモニー・コリン監督のインタビューはこちらから。

Information
『ミスター・ロンリー』
監督:ハーモニー・コリン
脚本:ハーモニー・コリン、アビ・コリン
主演:ディエゴ・ルナ、サマンサ・モートン、ドニ・ラヴァン
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2007 / イギリス・フランス











