青山真治監督最新作『サッド ヴァケイション』が公開される。デビュー作『Helpless』(96年)、そして彼の代表作『EUREKA ユリイカ』(00年)の登場人物たちが集結し、物語が再び動き出すーー。10年余に渡る“北九州サーガ”の完結編ともいえる本作は、現時点での青山監督の集大成的な作品となっている。
Text:須永貴子
『Helpless』で高校生だった健次(浅野忠信)は、幼い頃に自分を捨てた母・千代子(石田えり)にひょんなことから再会する。彼女の夫が経営する運送会社には、脛に傷持つ流れ者たちが肩を寄せ合い、干渉し合うことなく、疑似家族のように働いていた。その中の1人が、『EUREKA ユリイカ』のバスジャック事件で生き残った少女・梢(宮崎あおい)である。健次が千代子への復讐を秘め、そこに加わることで生じる一触即発のスリルが、観客をドラマに釘付けにする群像エンターテインメント。ごく少数の人間を閉じた関係性の中で描いていた前2作に対し、北九州という場所で形成された現在と過去の人間模様を、俯瞰する視点で描くという視点の大きさに青山監督の変化を感じる。
そんななか、強烈なインパクトを残すのが、「個」はさておき「家族」として血と家を継ぐことを至上とする千代子の存在。その立ち位置は、健次に「いちばん大事なのは生きること」と正論をぶちかまし、家族以外の人間は平気で殺す中国人マフィアにも通じると言ったら言い過ぎか。
巷では“北九州サーガ”とも称されている健次を中心にした一連の物語は、実は“三部作”ではないのかもしれない。少なくとも、観客のイマジネーションの中で、彼らの旅はこれからも紡がれていくはずだ。
『サッド ヴァケイション』は、9/8よりシネマライズ他にて全国順次ロードショー。
青山真治監督のインタビューはこちらから。

Information
『サッド ヴァケイション』
原作・脚本・監督:青山真治
主演:浅野忠信、石田えり、宮崎あおい
配給:スタイルジャム
2007 / 日本
(c)間宮運送組合 2007










