|
NY・コロンビア大学在学中に知り合ったエズラ・クーニグ(Vo/G)、ロスタム・バトマングリ(Kb/Vo)、クリス・バイオ(B)、クリストファー・トムソン(Dr)によって2006年春結成。直球で、スマートで、ダンサブルでちょっとアフロっぽい実験的なポップ・サウンドが売り。楽曲のクオリティとライブの評判の良さが話題を呼び、争奪戦の末XLレコーディングスと契約。同年7インチ「マンサード・ルーフ」をリリースし、デビュー。2008年デビュー・アルバム「ヴァンパイア・ウィークエンド」は世界中で約100万枚の大ヒットを記録。ロックの新人としては全米で最高の売り上げをたたき出し、一気に世界的ブレイクを果たした。
Contact VAMPIRE WEEKEND URL:www.vampireweekend.com www.myspace.com/VampireWeekend |
2008年1月にリリースしたデビュー・アルバムが全世界で100万枚を超える大ヒットを記録したニューヨークの4人組バンド、ヴァンパイア・ウィークエンド。その30年前に同じ街から登場したトーキング・ヘッズのように、アフロやカリビアンといった非西欧音楽を取り入れた彼らは、しかし、当時と比べてはるかに複雑に、そしてグローバル化した世界の様相を映し出すように、クラシックや80年代のエレクトロなど、様々な音楽を取り入れながら、それをさらに洗練させてみせたセカンド・アルバム『CONTRA』をここに完成! 別プロジェクトのDISCOVERYでも高い評価を得ているキーボーディストにして、プロデューサーでもあるロスタム・バトマングリとバンドの要となる変則的なリズムを叩き分けるドラマーのクリストファー・トムソンの2人が語る、アルバム『CONTRA』の秘密とは果たして?
Text:小野田雄
100万枚のセールスを記録したデビュー・アルバムを経て、バンドの実体とパブリック・イメージのズレを感じていませんか?
クリストファー(以下C):まぁ、確かにね。それはある程度成功に付いてくるものなんだと思う。どんなバンドもちょっとした成功を収めると色んな話題に上ったり、知りもしないのに語られたり、聴いてもいない人からものを言われたりもする。そんななかで誤解されたり、ウソが出回ったりっていうことも成功の一部というか、副作用ってことなのかもしれないね。
ロスタム(以下R):話のなかに推測が多いんだよね。そのなかには僕ら本来のコンセプトを誤解したものが多いんだ(苦笑)。
C:ただ、こちらにできることといえば、そんなことはさっさと忘れることくらいだろ? だから、そこから先は自分たちのやりたいことに専念するだけさ。
Photo:Kazumichi Kokei
そうはいいつつ、ニュー・アルバム『CONTRA』は、テレビゲームのタイトルでもあり、ニカラグアの反革命組織の名前でもあって、誤解を生む可能性が大いにありますよね。個人的には今の世界のリアリティ、コントラディクション(矛盾)を指摘しているようにも思いましたが。
R:英語には「CONTRA」という言葉は単体では存在してなくて、今言ったように他の言葉の一部に含まれているところが面白いと思ったんだ。「反する」という意味合いが「CONTRA-」にはあって、それ自体では具体的な意味を持たないからこそ、その解釈はリスナーにお任せしたいところだね。でも、「矛盾」と結びつけて考えるよりは、「CONFLICT」(=衝突、対立)に近いニュアンスを想像してほしいかな。
今回はアルバムのアートワークが実に印象的で、ポロシャツを着た女性が写っていますが、いつの時代のものなのか、スグには分かりませんでした。この写真をジャケットに持ってきた理由は?
C:あの写真はね、ある晩、ロスタムが見つけたものなんだ。実際には1983年のニューヨークで撮られた写真なんだけど、作業中だったアルバムの音楽性と合っているんじゃないかって彼が感じて、僕らも賛成したんだけど、前作のアートワークとの連続性を感じさせる写真でもあるよね。あと、写っている女の子の表情も解釈の幅があるように思ったし、それは僕らの音楽における多面性にも通じるところがあるんじゃないかな。


(左)『CONTRA』(2010/XL Rexordings / HOSTESS)、(右)『VAMPIRE WEEKEND』(2008/XL Rexordings / HOSTESS)
そして、先日の代官山UNITでのライヴでは、インプロバイズに気持ち良さがあるアフロやカリビアン・ビートを用いながら、それを引き延ばすことがありませんでしたよね。それは作品にも言えることですし、もっと言ってしまえば、過去のシングルにはリミックスがほとんど収録されていません。これはヴァンパイア・ウィークエンドがダンス・ミュージックと一定の距離を置いていることを意味しているように思えるのですが。
R:そうなんだ。アフロやカリビアンは5分、10分という長さで表現されるものだったりするけど、僕らの音楽はそういうものじゃない。ただ、もちろん、ダンス・ミュージックからインスピレーションを受けた部分も僕らの音楽にはあるよ。それは一瞬のフレーズをキープして、面々と繰り返していくところだったりするだけど、現代音楽にもそういう手法はあるよね。
つまり、そのビート感も多面的に解釈出来る余地がある、と。ちなみにそうしたアフロ、カリビアンは、どういったアーティストを聴き親しんできたんですか?
C:70年代のジンバブエで録音されたトラディショナルなハレルヤ・チキン・ラン・バンド(トマス・マプフーモが在籍していたことでも知られる)、アフリカン・ブラザーズ・バンド・インターナショナルetc…。その辺はみんなで聴いたもので、それ以外は個人個人、若い頃に聴いていたものもあるけどね。
R:ただ、そうはいっても、僕らは特定のリズムを再生しようと思ってやっているわけではなく、そうした音楽から受ける漠然とした印象を楽曲に活かしていこうとしているんだよ。そうすることによって、自分たちのオリジナルなビートを強調することにもなるし、生み出したいムードや持っていきたい体の動きへ聴き手を誘導することができるっていうわけさ。

Photo:Kazumichi Kokei
さらに、ヴァンパイア・ウィークエンドはギターをかき鳴らすこともないし、8ビートを用いることもないことから、ロックのクリシェを避けているように感じます。そう考えると、ダンス・ミュージックでもなく、ワールド・ミュージックやロックでもなく、どういう音楽を目指しているのですか?
C:そういう、どこにもない音楽だよ(笑)。僕らが聴いているのは多種多様なジャンルだから、そういうところからインスピレーションを得て、それをまとめることで独自なものを作ることができたらなって思っているんだ。
R:僕らはバンドらしい音、バンドらしいレコーディングや曲の書き方を自分たちに課すことによって、音楽性を制約されたくないんだ。それを避けることが、他のバンドとの音楽的な差別化につながるシンプルなやり方なんじゃないかな。今回の多くの曲は、みんなでジャムるんじゃなく、持ち寄ったリズムのアイデアからスタートしているんだけど、そうすることがロックのクリシェから距離を置くことにつながってるんだと思う。
今回のアルバムでは、前作のリズム・アプローチを発展させていますが、ストリングス・アレンジはより現代音楽的に、そして、80年代のエレクトロの要素も比重を増しているように思ったんですけど、今回はどういったアルバムのイメージがあったんですか?
R:ファーストの個性として、クラシカルな音は全体にちりばめられていたと思うんだけど、今回の作品ではそういう要素とは距離を置いたんだ。もちろん、ストリングスは必要だ。必要ではあるんだけど、それがバッハのようなストリングス・アレンジメントとして鳴っていては困るという意味においてね。そういう意味ではヴァンパイア・ウィークエンドの個性をあえて外すことはひとつのチャレンジだったと言える。それ以外のリズム・アプローチや曲作りにおいて、ファーストより洗練されている部分は当然あるとは思うんだけど、それは計算して複雑にしたわけじゃないよ。そう考えたことは一度もなかったな。
Photo:Kazumichi Kokei
今回の作品はアップリフティングでオープンなフィーリングがあって、それは「California English」という収録曲に象徴されるように、米国西海岸の音楽的風土に対する憧れであるように思ったのですが。
C:やられたな(笑)。全くその通りだよ。カリフォルニアに対しては、子供の頃から憧れを抱いてはいたんだけど、このバンドで本格的にツアーをするまでは南カリフォルニアには行ったことがなかったんだ。でも、2007年のツアーでロスに行ってみて思ったのは、アメリカという国は東から始まって、西へ西へと進んでいって作られたわけだけど、そんなことを考えているうちに面白いフィーリングを感じたんだ。
ただし、このアルバムにはアップリフティングでオープンなフィーリングがありつつ、アルバム・タイトルに「Conflict」の意味合いが込められているように、ただハッピーなだけの作品ではなく、深い部分にはある種のパンク・スピリットも感じます。もしそういうものがあるのだとしたら、おふたりにとってのパンクとはどういうものですか?
R:そうだね。パンクのスピリットには共感を覚えるよ。つまり、人からこうしろと言われてやるのではなく、自力ですべてをやっていくっていうメンタリティだよね。自分たちもそうやって活動してきたつもりなんだけど、それもこれも人に頼っていたら何もできなかったから、そういうやり方になっただけであって、それがたまたまパンクのアティテュードと合致したってことなんだろうね。パンク・ミュージックって言えば、僕らは色んな時代の、その時代なりのパンク・ミュージックを聴いてきたつもりだよ。人によっては「それはパンクじゃないよ」って思うようなバンドをパンクだと思っていたりもするし、人それぞれにパンクの解釈は違ったりもする。カリフォルニアに行った時にショウを含む、ドキュメンタリー映像を撮って、そこで80年代パンク、90年代パンクについて現地の人に語ってもらったんだけど、BLINK 182のトム・デロングは、「パンクという言葉は使われすぎて、もはや意味をなさない。根本的にはアティテュードを示す言葉だから、意識して持てるものではないんじゃないかな?」ってことを言ってたんだ。だから、僕らにとっても、バンドの在り方にとってのひとつの材料にパンク的なやり方があるんだろうね。なかには僕らが取り入れているクラシックをパンクに対するアンチテーゼと捉える人もいるだろうけど、だけど、だからこそ、それだけれども、そのふたつを無理矢理くっつけて相互作用を起こそうとするところに僕らは魅力を感じるし、それはヴァンパイア・ウィークエンドにとって自然なやり方であることを分かってもらいたいんだけどね。
Information
『CONTRA』(XL Rexordings / HOSTESS)は、1月13日リリース予定。
Photo:Kazumichi Kokei












