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1978年横浜生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、2003年独立。クラフト感の強いタイポグラフィとグラフィックをベースに、ASA-CHANG、ピエール瀧、SAKEROCK、POLYSICSなど、多くのアーティストのCD、DVD、ミュージックビデオのアートディレクションや演出を手がけるほか、書籍の装丁、挿画、UKAWANIMATION!への参加、映像チーム「山田一郎」としての活動など、分野を問わず幅広く活動中。2009年より、パーソナルな文字のZINEシリーズ『MOZINE』をスタート。10月31日より、初の個展をNO.12 GALLERYにて開催予定。
contact 大原大次郎 URL:omomma.in E-Mail:ohara@omomma.in |
SAKEROCK、ASA-CHANGなどを始めとする様々なミュージシャンのグラフィックや映像のアートディレクションを中心に、目覚ましい活躍を見せている新鋭、大原大次郎。ミニマルなツール(紙、鉛筆、定規etc)を用い、膨大な労力と時間をかけたクラフト感覚満載の仕事は、誰もが簡単にデザインを手にすることができるようになった現代を生きる僕たちに、改めて「もの作り」本来の喜び、そして、厳しさを伝えてくれる。映像チーム「山田一郎」への参加、ZINEシリーズ『MOZINE』の立ち上げなど、近年ますます活動領域を広げ、さらに今秋には、自身初の個展も控える彼のアトリエを訪ねた。
Text:原田優輝
大原さんの作品は、手作り感覚あふれるものが多いですが、もともと手を動かして何かを作ったり、絵を描いたりということが好きだったのですか?
他のデザイナーさんは、子供の頃から美術が得意だった方が多いと思うんですけど、僕は全然ダメだったんです(笑)。もともと音楽が大好きで、特に中学に入ってからは周りの友達の影響で、食費を抑えて、レコードを買っていました。「お前はヒップホップで、オレはテクノ」みたいに友達と分担して(笑)。そのうち、それぞれがテープを作って交換するようになって、中三くらいからは、そのテープにレビューをつけていくことが流行り始めたんです。やがてそれが「少年くそマガジン」というジンになっていきました。当時は、デザインのことなんてまったく意識せず、すべて手描きと切り貼りで作っていましたね。

スゴい情報量と”熱量”ですね。
今見てみると、結構面白いですよね。受験勉強もせずに、こんなことをやっていました(笑)。そのうち、その中のひとりが、「空手サイコ」という名義で、1人宅録ユニットのようなものを始めたんです。彼がテープを作ってきて、僕がジャケを作り、レコード屋に持ち込んで、無料で配布したり委託販売してもらうような日々が続いていくうちに、当時はまだ高校生だったこともあって話題になり、CDをリリースする話にまでなったんです。その時にやらせてもらったCDジャケットが、ギャラを頂いた初めての仕事です。
ジャケットをデザインしてみようと思ったきっかけは何だったのですか?
最初はやっぱり自分も音楽がやりたかったんですけど、試しにやってみて「自分はやっちゃいけないな」と(笑)。それで、結構早い段階で、「デザイン」というか、「側」を作っていくところで関わっていきたいと思うようになったんです。その頃から、「デザイン」というのは、まず先に音楽ありきで、それをビジュアルで訳していく翻訳作業と捉えているところがあって、それは今もあまり変わりません。


(左) 『Instant Replay』空手サイコ、(右) 『BeatBox Collection』空手サイコ
学生時代もCDジャケットのデザインの仕事などをしていたそうですね。
アルバイト的な仕事ですが、その頃知り合ったASA-CHANGさんやピエール瀧さんに、自分の制作物を見せているうちに、少しずつ仕事を回していただけるようになりました。ちょうどその頃、Macを初めて手に入れて、それまでの完全な手作業から一度離れかけたのですが、結局また戻ってきちゃいましたね(笑)。
大学を卒業してからは、すぐに独立されたのですか?
もちろん色々悩んだんですけど、就職をすると、それまでのつながりを一回切ることになるような気がしたし、会社で働きながら外部の仕事を続けたしても、結局どっちつかずになってしまうと思ったので、やれるところまで自分でやってみようと思ったんです。僕の場合は、割と早い時期に良いアーティストの方に出会えたことがスゴく大きかったと思います。ある程度年を重ねてからだと、自分の表現が固まっていたりするだろうし、向こうも若造だからこそ鍛えられるというところがあると思いますからね。ヘタクソであることを前提にやらせてもらいながら、とても良い波に乗せていただいたと思っています。


(左) 『ホニャララ』、(右) 『会社員と今の私』SAKEROCK
そういう意味では、SAKEROCKとの出会いも大きかったのではないですか?
そうですね。SAKEROCKとは、それまでに(ピエール)瀧さんやASA-CHANGさんに鍛えられたものと、もともと持っていた「少年くそマガジン」感が混ざり合って、自分なりに濃度を高めるということができるようになってきた時期に、出会うことができたんです。SAKEROCKの結成3年目くらいに、映像作家の大関泰幸くんを通して知り合ったのですが、もともと彼らの音楽を聴いた時に、直感的に合うんじゃないかと思っていたので、懸命に仕事でアピールしました(笑)。最初の仕事は、ツアー用のDVDに使われる文字などのデザインでした。
SAKEROCKの一連の作品などを見ていると、大原さんは文字に対してスゴく独特な感覚を持っているように感じます。
50~70年代のグラフィック・デザイナーの方々からの影響が強いかもしれません。欧文をクールに組めるデザイナーさんはとても多いと思うのですが、自分はその対極として、日本語で少し変わったことをやりたいと思っています。文字を作る時は、何度も描いて試行錯誤を重ねつつも、最終的には第一印象というか、直感的に決めることが多いですね。練れば練るほど良くなっていくのかもしれないですが、その分失われる勢いというのもあると思うんです。「結局ラフの方が良かった」ということも少なくないですからね。


「STUDIO VOICE」Artwork
確かに、手作業のラフな質感をあえて残したような作品が多いですよね。
昔から、アニメーションやマンガのラフを見る度に、「カッコ良い”生きた”線だな」と感じていて、自分のデザインもそういうところに落とし込みたいと思っています。きちんとしたデザイナーの方が見たら、「何でここで終わらせるんだ」と怒ると思うんですが、自分としては、体温が残っている状態でOKにしたいんですよね。手作業は、効率を考えると決してパフォーマンスは良くないのですが、実験と手数によってしか得られないアイデアや質感というものがあるんです。
実際の制作過程について教えてください。
まず始めに、紙、鉛筆、定規といったミニマルなツールを使って、ラフを制作します。その後、インク、水彩、アクリル、粘土、木材、彫刻刀など、適した描画材で実作業し、撮影、スキャニング、編集、合成などのデジタル作業を経て、アウトプットしています。実作業の段階では、写真など、自分には出せない質感やスキルが必要なものに関しては専門の方にお願いしていますが、中高生でもできるもので、自分でも線や質感を出せるツールに関しては、できるだけ自分でやるようにしています。もともと、DIY精神が染み付いているんです。それは、やっぱり昔から好きだったヒップホップやテクノなどの音楽の影響だと思います。





『手塚治虫生誕80周年記念展 tezuka gene Light in the Darkness―手塚治虫の遺伝子 闇の中の光 展』 Cover Artwork
木彫りや粘土などを使うグラフィック・デザイナーは、なかなかいないですよね(笑)。なぜそこまで多岐に渡るツールを用いるのですか?
そのアイデアが先に出てしまうので、後で苦労するしかないんです(笑)。ただ、行程はなるべくシンプルにするように心がけています。例えば、同じおいしい料理でも、フランス料理のように専門的で緻密な行程が必要なものもあれば、冷蔵庫の残り物だけで作れる料理もありますよね。僕は間違いなく後者で、誰にでもできる方法や素材を使っているところがありますね。あと、最近気をつけていることは、「ネタ」中心になりすぎないようにしたいということなんです。版画をやって、次は木彫り、刺繍…という感じでやっていくと、いつかはネタが尽きてしまいますからね(笑)。だから、手法を押し出すのではなく、タイポグラフィだけで見せられるような強度を出していければ、それが理想だとは思っています。


『Songs of Instrumental』SAKE ROCK
PC上の作業はどの程度やられているのですか?
自分にとって、PCでの作業は、音楽でいうところのマスタリングに近いのですが、そこにはかなりの時間をかけています。一見雑に見えますが、実はPC上で結構細かく調整しているんです(笑)。原画のままだと生々しいことが多いので、クリーンアップ作業とフィニッシュワークのためのPC作業は欠かせないです。
最近スタートした「MOZINE」や、映像ユニット「山田一郎」など、最近は自発的な活動も増えていますね。
そうですね。もちろん、今までのような仕事も続けていくのですが、一方で自発的な行動やメディアが必要だと思っています。こないだ制作した一冊目の「MOZINE」は、「少年くそマガジン」をまとめたものなのですが、10月30日からNo.12 Galleryでやる個展のために、さらに何冊か作る予定です。結局、こういう自分のルーツからは、逃れられないんだなと感じますね。


『コンピューターおばあちゃん』POLYSICS Music Video
映像制作に関してはいかがですか?
「山田一郎」というユニットでは、SAKEROCKの星野源くんと、映像作家の山岸聖太さんと僕の3人で、できる限りのことをやって映像を作っていこうと話しています。先日、SAKEROCKのバラエティ番組と銘打ったDVD作品「ラディカル・ホリデー その1」をリリースしました。ナレーションも撮影も出演もアニメーションも、やれることは出来る限り自分たちでやった完全にDIYな作品です(笑)。「山田一郎」では、今後SAKEROCK以外のコンテンツも作っていきたいですね。あと、BEAMSがスタートしたDVDレーベル「BARTS DVD」から、来年頭頃にDVD-ZINEをリリースさせてもらう予定です。そこでは、文字にスポットを当て、タイポグラフィの楽しみ方を色々見せられないかなと構想中です。最近は、タイポグラフィを自発的に考えていくというところも、ひとつのテーマなんです。

「文字採集」
具体的にはどのようなことなのですか?
本来タイポグラフィというのは、まず先に言葉がないと成立しないものですよね。結局、そこを辿っていくと、ネタや言葉や文字の先に行き着くのは、それを発している「人」なんです。その「人」との関係がないと、タイポグラフィにも辿り着けないような気がしていて、それが「MOZINE」でやろうとしていることにもつながっているんです。今「文字採集」というプロジェクトもやっているのですが、これは自然の風景から無理矢理文字を引っぱり出してくるというものです。自分が生成するだけじゃなく、探すだけでもタイポグラフィが作れるというのがコンセプトです。例えば、ワークショップなどで、撮ってきた写真を見せて、「この中から文字を探してください」という投げ掛けとかもできるかもしれないですよね。仕事の傍らでこういうこともどんどんやっていきたいなと思っています。
『大原大次郎の少年タイポ展』が、10月31日から11月8日まで、No.12 Galleryで開催予定。




「MOZINE」制作風景
Exhibition Information
クリエイティブスタジオ「ANSWR(アンサー)」が運営するオルタナティブスペース『PUBLIC/IMAGE.3D』のオープン記念企画第1弾として開催されるグループ展「FUNTASY(ファンタジー)」に、大原大次郎の参加が決定しました!

PUBLIC/IMAGE.3D presents『FUNTASY』EXHIBITION
作家: 大島慶一郎、大原大次郎、菱沼彩子、針谷建二郎
会場:PUBLIC/IMAGE.3D
東京都世田谷区池尻2-32-2 デパール池尻1F
会期:2009年11月6日(金)- 11月15日(日)
レセプションパーティー 11月6日(金)19:00-22:00
12:00-18:00 (月曜日定休)入場無料
物販:T-shirts / ZINE …
























