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ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、フリーランスのヘア&メイクアップアーティストとして活動してきたMIKAとフリーランスの造形作家として、映画などの映像作品を中心にさまざまなメジャー作品に携わってきたCHISHINが結成したユニット。2008年より『MIKA+CHISHIN』としての活動を開始。トリックヘアメイクという独自の領域でファッション・アートなど幅広い分野での活動を展開している。
contact MIKA+CHISHIN URL:mika-chishin.com E-Mail:info@mika-chishin.com |
トリックヘアメイク。聞き慣れない言葉だが、現在、このトリックヘアメイクを武器に、ファッションやアートの分野で注目を集めているのが、今回紹介するMIKA+CHISHINだ。ロンドンで舞台芸術に関わるヘアスタイリングや特殊メイクを学び、帰国後はヘア&メイクアップアーティストとして活動してきたMIKAと、フリーの造形作家として映像作品などに参加していたCHISHINによって、2008年に結成されたユニットだ。
まるで、モデルの皮膚にもともと存在していたかのような不思議なパーツやディテール。彼らが創り出すビジュアルには、見る者が思わず目をこすってしまうような「トリック」が隠されている。特殊メイクの枠を超え、トリックヘアメイクという未知の領域で、独自のクリエイションを生み出しているMIKA+CHISHINのメンバー、MIKAに話を聞いた。
Text:日比野紗希
まずはおふたりの出会いについて教えてください。
もともと私はロンドンに留学していて、舞台のヘアメイクを専攻していました。最初の1年で基礎コースを受け、ヨーロッパの年代別ヘアメイクやファッションヘアメイクなどを一通り学び、その後は特殊メイクを含む舞台ヘアメイクを学ぶコースに進級し、ボディペインティングやウィッグ制作、色々なテーマに基づいた舞台作品用の特殊メイクのピース制作等をしていました。制作のプロセスとしては、特殊メイクのピースだと、人の体の型取りから始めてまず土台を作り、その上に粘土で原型を彫刻し、そこから出来た鋳型に素材を流して成形します。ウィッグ制作の場合は髪の毛一本一本を毛流れを作りながら専用のレースに編んでゆく、というようなことですね。卒業後はしばらく現地に残り、アルバイトをしながら雑誌やショートフィルムの撮影の仕事を頂いてヘアメイクとして参加したり、フォトグラファーと作品を作ったりしていました。その後帰国して、自分のポートフォリオを持って、雑誌社や特殊メイクのアトリエなどをいくつか営業活動して回り、少しずつお仕事を頂けるようになったのですが、2年ほど前に携わった某映画の撮影現場で造形作家として関わっていたのがCHISHINだったんです。
共に制作をするようになったきっかけは?
ちょうどその頃に、私がとある現代美術家の方からのお仕事をお受けしていて、CHISHINにその制作に関して相談をしたりアドバイスをもらったりしていたのですが、結果的には最後まで関わって手伝ってもらうことになったのが最初のきっかけです。その直後に、雑誌での特殊メイクを使った撮影の依頼をタイミング良く頂き、「じゃあふたりでやってみようか」ということで、一緒に制作するようになりました。
日本で仕事をするようになって、海外との意識の違いなども感じましたか?
海外で学んでいて感じたことは、とにかくアイデアソースは日常のどこにでもあるということでした。学生時代、クラスメート皆が持ってくるアイデアは、たとえ最終的な作品のクオリティそのものには反映されなくても、「ホントに実現できたら凄いだろうな」と思わせてくれるようなぶっ飛んだものも多かったです。彼らのスケッチブックなんかを見ても、もう厚さが違うんですよね。絶対何かがはみ出しているし(笑)。気になるものはどんなに小さなものであっても片っ端からとにかく拾い集めてイメージを固めていくその作業が、作品の完成度を上げるために何よりも大切なプロセスであることを学びました。みんな平均的にリサーチ内容のクオリティはとても高かったと思います。これは私個人の意見ですが、西洋と東洋の感覚というのは、大きく違うと思うんです。東洋の美意識には、「まとまり」や「収まり」というのがどこかにあるように感じるし、私自身もきっと無意識にそうなっている、だからこそ、外国の人の大胆さや斬新さにはとても驚かされたし、良い刺激にもなりました。


「Ocappa」2008.8月号
photograph: 久高 将也 / hair: 植村 隆博(DADA CuBiC) / model : (右)プリシラ, (左)下田美咲 / make-up & trick make-up / Mika + CHISHIN
制作における役割分担を教えてください。
私がデザイン画を描いて大まかなイメージを形にし、それをもとにCHISHINが土台を作り、そこから話し合いながら発展させていくという感じです。細かなニュアンスは二人でとことん話合います。普段ユニットとしてではなく個人で担当するヘアメイクのお仕事の場合は、造形的なことをするにしても、ちょっとしたヘアピースやウィッグなどを作る程度ですが、ユニットとして彼が造形のスーパーバイザーになってくれることで、作品に幅も出て、クオリティも上がる感じはします。また、私は集中力があまり持続しないタイプなのですが、彼は自分にも作品にもとてもストイックで一切妥協しない人なので、精神的な部分で励みになるし学ばされることも多いです。活動領域に関しては、もともと雑誌などの紙媒体で作品を発表することにとても興味を持っていたので、今は本当に面白いですね。素敵な機会を与えてくださった方々にはいつも本当に感謝しています。
通常の特殊メイクの場合、映像が主な活動の場になると思うのですが、紙媒体での表現はまた違うのもなのですか?
私にとっては、ムービーとスチールは全く別物です。映像になると動きが入るので、必要以上にリアリティが出過ぎてしまい、時には逆にフェイクっぽさを強調してしまうこともある気がします。リアルであることが映像作品の利点でもあるのですが。スチール表現の場合、見せ方やアングルを撮影の時点で操作できるので、必要のないディテールや、視覚的な質感などは敢えて曖昧にしたりして、見えそうなのに見えない、というもどかしさと好奇心を見た人に意図的に残すことができます。リアルな描写を求め過ぎると、「SF」とか「モンスター」「クリーチャー」というような方向に行きがちじゃないですか。それがいわゆる皆さんが想像されている「特殊メイク」だと思うのですが、そういうステレオタイプとは対極でいたいという、アンチ精神のようなものも少なからずあります。だから敢えて、私たちの表現には「特殊メイク」という言葉はあまり使いたくなくて。そういう意味でも、「トリックヘアメイク」と呼んでいるんです。それでも実際のところ、カテゴリーに関しては結局どれにもあまりピンとこないというのが正直な気持ちです。作品を見て頂いた方から、よく「想像していたのと違った」と言われるのですが、それはとても嬉しいですね。
確かにおふたりの作品は”自然”ですよね。
あまり日常からかけ離れたくないと思っています。「本当か? 嘘か?」という狭間で表現することが、自分の中ではいつもテーマになっています。思わず二度見されてしまうようなもので、なおかつ二度と忘れられないような作品を作りたいですね。リアリティだけど、ノンリアリティ。ありがちなテーマかもしれないですけど、そこが自分の中では一番こだわるポイントですね。

「high fashion」- 2008.12月号
photograph: 三枝崎 貴士 / styling: 渡邊 由樹 / hair & make-up: 池田慎二(mod’s hair)/ model: 杏 / trick make-up: Mika + CHISHIN
雑誌のファッション撮影などで、フォトグラファーらのスタッフとコラボレーションする場合と、純粋なプライベート作品として表現する場合とでは、何か異なる点はありますか?
コラボレーションをする場合は、自分たちが想像する完成イメージが、どう裏切られるかというところが一番楽しいですね。撮影現場では、フォトグラファーやスタイリストなど、たくさんのクリエイターの方と試行錯誤をして現場でひとつの作品を創り上げていくのですが、そこで生まれる相乗効果には毎回感動します。「足を引っぱれない」という緊張感もあるし、毎回学ぶことや反省することもたくさんあります。一方で個人作品の時は、よりパーソナルな部分を掘り下げているのかもしれません。また、個人作品では最初から到着地点を描きながら制作していくことが多いので、パーツ作りから始まる雑誌などの撮影とは流れも真逆ですね。
ところで、制作にはどのような素材が使われているのですか?
沢山ありますが1つ挙げると、通常特殊メイクで皮膚の質感を作るのによく使われているフォームという素材があります。加工後はふわふわとしたスポンジのような質感になり、とても軽くて肌への負担も比較的少ないので、広範囲への装着や長時間の撮影にも対応でき、ペイントも可能なので、多目的に使用されます。


「荘苑2009.4月号より撮影オフショット」
styling: 渡邊由樹 / model: Emilia/ trick make-up & wig making / Mika + CHISHIN
やはりメイクを施すモデルさんの個性も重要になりますか?
そうですね。そのデザインイメージに合うモデルであるということは重要です。その人物がどんなタイプで、どういう洋服を着ているかなどをイメージしながら、シチュエーションを考えていきます。例えば、子供の背中にポケットや羽根が付いた作品の場合、正面からの視点だと遊んでいる無垢な子どもたちの姿が映るはずですが、そこに本人たちも気付いていないかのように存在する静かな違和感を作り、何か秘密の場面を二人の背後からこっそり覗き見ている気分になる、そんな余韻を残そうとしています。今後もう少しテーマを突き詰めて、見た人にも何か想像してもらえるようなストーリー性を持った作品作りができたらなと思っています。
確かに、おふたりの作品を見ていると、色々な想像が掻き立てられます。
皮膚って面白い素材だと思うんです。皮膚素材として使って遊ぶなんて、結構ショッキングなことであり、ファニーでもありますよね。そうやって現実には有り得ない、むしろタブーにすらなり得る世界を日常に忍ばせることで、見る人の想像力を挑発したいんです。私の好きな写真家に、イギリス出身のティム・ウォーカーという人がいるのですが、おとぎの国の世界を実写で表現してしまう作品の数々は、独自の物語性にあふれていて、わかりやすくてシンプルなのに必ずドキッとさせる意表を突いてくるのが素晴らしくて、とても刺激を受けます。あと、ミッシェル・ゴンドリーなんかも好きなのですが、彼らの作品は、遊び心にあふれているので、視覚的にもとても面白いですし、何よりハッピーになれるんです。私達の作品も、受け止められ方はどうであれ見た人に興味を持ってもらい、楽しんでもらえるものであれば嬉しいです。
今後やっていきたいことがあれば教えてください。
先ほどもお話しましたが、今は映像よりもスチール作品を作りたい思いがあり、しばらくはそのフィールドでの作品を増やしつつ、自分たちの作風というかスタイルをもっと固めていく必要があると感じています。作ってみたいテーマもまだまだたくさんあるので、これから可能な限りひとつひとつ形にして行くつもりです。その流れでゆくゆくは作品集も作りたいと思っています。まだユニットを結成してから1年ほどなのでまだまだ開拓中ですが、好奇心に忠実に、自分たちにとっても毎回が新しい驚きである作品を発表して行くつもりです。また、幸運にもこれまでに多くの素晴らしいクリエイターの方々とお仕事をさせていただく機会を得たことで、改めてコラボレーションワークの偉大さを感じられたので、今後ますます多くの方々とご一緒できることも現時点での目標の一つです。

「private work」- 2009
photograph: 三枝崎 貴士 / styling: AOMI / models: Bunpei & Renny / trick make-up: Mika + CHISHIN



















[...] Mika+CHISHINさんは最近こちらのサイトでもインタビューされています。 Mika+CHISHINさんの仕事coolです! [...]