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2006年アントワープ王立芸術アカデミー PR01. Tel:03-3406-0430 URL: www.mikiosakabe.com E-Mail: info@mikiosakabe.com, pr01_pressroom@hpgrp.com |
06年にアントワープの卒業コレクションで首席を獲得し、世界のファッションシーンから一躍注目を集めた坂部三樹郎。その後の動向が注目された彼は、自国日本へと戻り、自身のブランド「ミキオサカベ」を、パートナーのシュエ ジェンファンとともにスタートさせた。その直後の08年春夏シーズンには、ヨーロッパ帰りの同世代デザイナーたちが中心となり、21_21 DESIGN SIGHTで開催した合同展示会『ヨーロッパで出会った新人たち』展に参加し、その後も東京、ミラノ、パリで並行して作品を発表するなど、東京ファッションシーンの新たな潮流を作る中心的人物として、各方面から急速に注目度が高まっている。日本が誇るポップカルチャーのエネルギーを、自国から世界へと発信することで、新たな東京オリジナルのモードを確立しようと目論む坂部に話を聞いた。
Text:原田優輝
ファッションデザインに興味を持ったきっかけは?
元々は、ファッションよりアートがやりたかったんです。それで、イギリスのセントマーチンズのアートコースに進むために、まずはファンデーションコース(基礎コース)に入学したんです。基礎コースでは、ペインティング、彫刻、ファッションなど色々な分野にトライさせられるのですが、その時の担任の先生に、アートよりもファッションや音楽、イラストレーションなど現在とリンクした表現の方が合っているんじゃないかと言われたんです。僕自身、多くの人に見てもらうことがまず大事だと思っていたし、現代性のあるクリエーションがしたかったので、(ファッションを)やってみようかなと思ったんです。
それまではファッションに対して、どのような印象を持っていたのですか?
そんなに頻繁に洋服を買ったりはしていなかったのですが、当時は、世界中の色々なところから面白いクリエーションが出てきていて、日本でもモードとはまったく別の軸で、裏原宿のムーブメントが起きたりしていて、とても新鮮さは感じていました。
その後アントワープに入学されるまでの経緯を教えてください。
そのままセントマーチンズに進もうとも思ったのですが、当時はポンドがスゴく高くて…。フランの方がだいぶ安かったこともあり(笑)、パリのエスモードに入学しました。でも、実際に入ってみると、英語では教えないという学校側のポリシーがあるようで、先生はフランス語でしか教えてくれず、とても苦労しました。ちょうどその頃に、パリコレに来ていたファッションジャーナリストの平川武治さんと話をする機会があり、アントワープに行くことを薦めてくれたんです。それで、アントワープの AFヴァンデボーストにインターンで入り、デザイナーの話などを色々聞いたりすることができ、アントワープ(王立芸術アカデミー)の試験を受けてみることになったんです。
(左)MIKIO SAKABE 09 S/S Collection、(右) MIKIO SAKABE 08-09 A/W Collection
アントワープ王立芸術アカデミー在学中のお話を聞かせてください。
将来デザイナーとして活躍できる見込みのある人しか卒業させない学校なので、1年ごとに明確な課題があり、それをすべてクリアできた人だけが卒業できるというシステムで、とても厳しかったです。入学当初は、表現したいものを一応洋服で作ってみるという感じで、アートの時との違いをあまり認識できずにいました。でもある時、のめり込んで自分を突き詰めていけば良いアートとは違い、ファッションではもっと客観的な目が必要で、ひと目で理解してもらえるようにバランスを取ることが重要だということに気付いたんです。自分がやりたいことをただ見せつけるのではなく、人が着たいと思うものの中に、いかに自分の表現を入れて、相乗効果が出していくかということを、アントワープで学びました。
それは言い方を変えると、「自分を殺す」ということなのでしょうか?
僕も最初はそう思っていたのですが、逆に、枠があるからこそ面白い表現ができるということに気付いたんです。アートと違って、ファッションには元となる基準が明確にあるので、それを少しズラすだけでも、変わったことがハッキリ分かるんですね。例えば、スーツを着ている男の人のネクタイが「ゴールド」というだけでも目立つ。一から自分でクリエイトするという作業と、すでにあるものを崩していくという作業の違いを理解した上で、ファッションの場合は、元からあるものを崩す表現の方が、強くなる場合も多いことがわかったんです。
卒業コレクションで注目を集め、海外からのオファーもあったかと思いますが、日本に戻ってこられた理由を教えてください。
卒業してからしばらくは向こうにいたのですが、まずはビザの問題が大きかったですね(笑)。その頃はヨーロッパの方が知り合いも多かったし、ベルギーからも結構援助が出たので、やろうと思えば向こうでもできたと思うのですが、色々な先輩デザイナーに相談した上で、1週間で膨大なデザイナーが参加するパリコレで、新人の自分が発表しても、なかなか見てもらう機会も少ないだろうという結論に至ったんですね。それなら、東京を拠点に新たなムーブメントを起こせないかと思ったんです。今の東京のファッションウィークは、まだ世界に出て行ける程の強さはない。だからこそ自分の生まれた国を拠点に、世界に発信していくのもひとつの手かな、と。


アントワープ王立芸術アカデミーでの卒業コレクション
アントワープの卒業ショーでもアニメを題材にしていましたが、日本のポップカルチャーをファッションに落とし込もうという意識は強いのですか?
そうですね。特にあのコレクションでは、世界に進出しているマンガやアニメ、ゲームなどをはじめとする日本のエンターテインメントをモチーフにしたファッションを考えてみたいと思ったんです。基本的に、今動いている日本のカルチャーのエネルギーを、アートではなく、もっと軽いカタチで伝えたいという想いが強いです。ひと昔前までは、着物や浮世絵といった伝統的な表現や思想が世界から注目されていたと思うのですが、それらはやはり「アート」として認識されていると思うんです。一方で、アニメやゲームは、完全に「エンターテインメント」として捉えられている。それらが今注目を集めているのは、世界がエンターテインメントを求めているということだと思うんです。僕は、日本が一番エンターテインメント発信の上手い国だと感じているので、今は日本人にとって大きなチャンスだと思っています。
海外生活を長く経験されて、日本の見え方は変わりましたか?
8年間くらい海外にいたのですが、帰ってきて、信じられないくらいお笑い番組が多くてビックリしたんです。そこからも感じたのですが、8年前と今の大きな違いは「軽さ」なんですよね。例えば、哲学的な番組のように、大きな意味を持っていたり、人の心を揺り動かすものは、見ていて疲れてしまうから、今の人たちはもっとユルくて軽いエンターテインメントを求めていると思うんです。最初は、その軽さがちょっとイヤで、テレビもつまらなくなったなと感じていたのですが、しばらく生活していると、その「軽さ」の必要性をスゴく感じるようになったし、そういう流れがとても新鮮でしたね。それが前回のコレクション(09年春夏シーズン)でも重要なテーマになりました。僕は基本的に、ファッションの流れや洋服そのものとは全然違うところから発想を得ています。服作りのためにリサーチをすると、どうしても偏ってしまうし、もっと今の日本のカルチャーをバランスよく見て、表現していきたいと思っているんです。
MIKIO SAKABE 09 S/S Collection
前回のコレクションが生まれるまでの経緯をもう少し詳しく教えてください。
実は、そもそも「軽さ」「ユルさ」に興味を持ったきっかけのひとつが、お笑い芸人のさまぁ〜ずの存在なんです。彼らはダウンタウンのようにアーティスティックなお笑いではないですよね(笑)。とにかくユルい(笑)。でも、なぜか僕も見ちゃうんです。それはなぜかと考えた時に、さまぁ〜ずの番組は何より疲れないということに気付いたんです。『モヤモヤさまぁ〜ず』なんてホントに何もないんだけど、ただボーっと見てしまう。それがひとつのきっかけになり、コンセプチュアルなものよりも、もっと軽いものが今の人たちの心を掴むのかなと思うようになり、そうした「軽さ」を与えられるものを作りたいというところからスタートしたんです。
そうした動機をどのように洋服に落とし込んでいったのですか?
ファッションに「軽さ」を落とし込むアプローチとして、素材や色に目をつけることにしました。今、日本では新素材が色々生まれていて、日本発の化学繊維などがたくさん世界に出ているのですが、多くはスポーツ素材として使われているんです。それなら、それらの素材をモードで表現すれば、新しい「軽さ」が出せるんじゃないかということで、日本発の新素材を使い、新しいエレガントを提案するということが、大きなテーマになっていきました。
コレクションの重要なキーワードとして、「耳鳴り」という言葉も挙げられていましたね。
これはコレクションの雰囲気を伝えるためのキーワードです。耳鳴りというのは、根本的には自然のものですが、聴こえてくるのは「キーン」という機械的な音ですよね。自然のものと金属的なものが混じり合う感じがコレクションのニュアンスだったので、最後の段階になって、この言葉を選びました。
MIKIO SAKABE 08-09 A/W Collection
東京でコレクションを発表されて数シーズン経ちましたが、今どのような想いを抱いていますか?
東京を拠点に活動をするようになって一番強く感じていることは、東京における「モード」の位置付けがよくわからないということです。どうしたらモードをもっと面白くできるか、皆に興味を持ってもらえるかということを、一から考えないとダメなのかなと感じています。例えば、東京コレクションに出ていて、ある程度有名なブランドはいくつもありますが、正直、社会的に強い影響力があるという程ではないと思うんです。ヨーロッパでは、モードが文化として認められていて、生活の一部にもなっています。でも日本では、モードとい言うと特殊で敷居が高く、距離感があると思うんです。だから、多くの人たちはもっと身近な距離で楽しめる東京ガールズコレクションや H&M などに興味がいっているのだと思います。
坂部さんにとって、「モード」の定義はどういったものなのですか?
モードは、人々が求めるものに応じて、1ヶ月ごとに定義が変わっていくようなものだと思うんです。その上であえて定義するなら「服を通して人に夢を与えるもの」ですかね。根本的にはそうあって欲しいのですが、皮肉にもその部分を一番失っているのがモードのような気もします。本来は、実際に着られるか否かに関わらず、人に「着たい!」と思わせるくらい夢を与えるものがモードだと思うのですが、今は売れなければモードじゃないという風潮が世界的に広がっていて、作り手もどんどんリアルクローズに向かっています。結局それがモードが弱く見える原因にもなっているような気がします。でも、そういう時代だからこそ、僕たち新人にとっては新しい提案がしやすい状況だと思うし、もう一度新しいデザイナーたちが、変えていかなきゃいけない時期だと感じています。

MIKIO SAKABE 08 S/S Collection














