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横浜ドリームランド出身のマイクロフォン担当、サイプレス上野(先輩)とターンテーブル担当、ロベルト吉野(後輩)の2人組。通称「サ上とロ吉」。「HIPHOPミーツallグッド何か」を座右の銘とし、あらゆるジャンルを取り込んだサウンドメイキングとライヴパフォーマンスに定評がある。2007年にファースト・アルバム『ドリーム』をリリースし、今年セカンド・アルバム『WONDER WHEEL』をリリースした。
contact サイプレス上野とロベルト吉野 URL:www.sauetoroyoshi.com |
写真などでルックスだけを見ると、「あれ、おふざけHIP HOP?」なんて思いがち。でも、その先入観はこのアルバムで払拭される。ファースト・アルバムから連綿と続く「地元レペゼン」というヒップホップマナーを今作でも守り、愛情溢れるアルバムなのだ。日本のヒップホップの影響を受けて育った第一世代のアーティストといえる彼ら。ムロのラップをサンプリングし、スチャダラパーへのオマージュを感じさせる曲など、ジャパニーズヒップホップへの深い造詣、そして90年代初期の良き雰囲気を大いに感じることができる。ハードコアなトラックやパーティチューンが揃う前半から、メローな後半へ。聴かず嫌いのヒップホップヘッズにこそ聴いて欲しい作品だ。そして彼らの深い世界観を味わって欲しい。
Text:大草朋宏
ファースト・アルバムからセカンド・アルバムへは、どのように意識を変えて作ったのですか?
サイプレス上野(以下C):ファーストの時は、聴いてる人数なんてまったくわからなかった。日本語ラップのマニアしか買ってくれないんじゃないか? ヘタしたら、地元のヤツしか買わないんじゃないかと(笑)。だから、地元のヤツらが喜んでくれればいいやみたいなノリで、その時期をうまくまとめたとは思うんですけど、あくまでもその瞬間のものであって、永久に続くものじゃなかった。でも今作は、先を見据えたというか、ずっと聴いてもらいたいという想いです。「アイツらキレイになりやがって」って思うかもしれないけど、汚い部分とか変な部分ばかり出してもまとまらないので。他にもアナログとかCD-Rで配るだけとか、メディアや手法は色々あるし、ライヴだけでやっている曲とかもあるんです。でもこのアルバムは、パッケージングされて広く世に出るモノだから、オレは責任を持ちたい。
では、やりたいことを整理したということですね。
C:そうですね。ファーストではやりたいことをすべて詰め込んだ感じだったんですけど、今聴いてみると、ゴチャゴチャしていて、乱雑に感じるんですよね。
ファーストを出した後、いろいろ活動の幅が広がったと思うのですが、今回のセカンドへのつながりを期待させるものはありましたか?
C:『ブラスト(HIPHOP専門誌)』の表紙とか、フジロック、 RAWLIFE とかがありましたね。そうそう、RAWLIFEの時は、ザゼンボーイズの後だったんですよ。ザゼンのファンなんて、絶対オレたちみたいなの嫌いだろうなって思ってて、「もう地獄だ、絶対浜田さん(RAWLIFE主催者)恨もう」って(笑)。でも逆にハイになってかましてやろうと思ったら、結構お客さん残ってくれてて、期待してくれてるんだなと。あと、地方とかでよくフリースタイルを仕掛けられるようになったんですよ。福岡にフェスで呼ばれて終わった後に、オリーブオイルくんのリリースパーティがあって、クラブに行ったんです。それで帰ろうとした時に道ばたでフリースタイルを仕掛けられたんですよ。全然違うイベントに呼ばれて行ったのに、フリースタイルを仕掛けられるなんて、オレ的にはすごくアツくて。

アルバム全体のビジョンとしては、どのように考えていたのですか?
C:やりたいことをヒップホップのフィルターを通して出す、ってことくらいしかなかったですね。“同業者を殺して、リスナーを楽しませる”アルバムにしたかったんですよね。つまり同業者がうらやむ作品ってこと。先輩ができないことややらなくなったこともすくっていると思うし、後輩ができない人たちともやっていると。いろんな人に「いーなー、いーなー」って言われたい(笑)。
それでプロデューサーもたくさん参加しているんですね。
C:知り合いも増えたし、いろいろ混ぜちゃおうみたいな。無理にオファーした人はいないんですよ。向こうもやりたいって言ってくれた人たちばかり。
でも、たくさんのプロデューサーに参加してもらうと、アルバムとしての統一感がなくなりそうですよね。先ほど言っていた、“整理した”という発言とは矛盾しそうですが…。
C:みんながオレたちの人間性を理解して、合わせてくれたところもありますね。いくつかもらったトラックからオレたちが選んだら「やっぱりそれ選んだ?」みたいな。だから全部自然とラップがしやすかったですね。
今作のタイトル『WONDER WHEEL』も、おふたりの地元ネタだそうですが、ヒップホップが持つ地元レペゼン感は最初からずっと大切にしていますよね。
C:「ワンダーホイール」は、ずっと遊んでいたドリームランドという遊園地の象徴だったんです。でももう無くなってしまったので、ドリームランド無き後、そろそろオレらが象徴だと言ってもいいかなと(笑)。「オレたちが新しい象徴になろう!」みたいなノリで。ファーストを聴いて、地元の先輩が泣いたっていう噂を聞いたんです。しばらく会っていなかった仲間も「アルバム聴いたよ」って戻ってきたりして。それがすごくうれしかったんで、引き続き、地元感プッシュで。ラッパーのオレじゃなくて、地元にいるふたり、みたいな感覚は前面に押し出していきたいですね。ちなみに吉野のアニキがね、生粋の…。
ロベルト吉野(以下R):生粋のロックなジャンキーですね(笑)。当時は、「あれ、吉野の弟だから気をつけろ」とか言われて。たぶんヒップホップやっていなかったら、もっと悪い人間になっていたと思います。ヒップホップに救われた。

その地元では、どんなライフスタイルだったんですか?
C:もともとヒップホップとスケート。それでスチャダラパー聴いたり、さんピンCAMP行ったり。今より渋谷にも行ってましたよ。でも一度ヒップホップが嫌いになったことがあるんです。周りに格好だけのB-BOYが増えてきて、そういうヤツがニトロ(・マイクロフォン・アンダーグラウンド)のTシャツを着てたりするんですよ。それがすごいイヤで。「最近ヒップホップ聴き始めたくせにニトロ好きとか言ってんじゃねえ」みたいな。完全にただのジェラシーなんですけど(笑)。それで、一度渋谷に行った時に、車でニトロを聴いてたら、メチャクチャ街にフィットして、「超カッケー」って思ったんだけど、でもそれは言えなかった(笑)。そこからオレが取る行動は、なぜかひたすらヒップホップを嫌いになるしかなかった。その頃は、広末のTシャツ着て、下駄とか履いてました(笑)。
サ上とロ吉って、ヒップホップ以外のジャンルの人たちからのウケがいいじゃないですか。いわゆるヒップホップ畑ではないところから火が付いた印象がありますが。確かに音にもいろいろな要素が込められていますが、一番の理由は何だと思っていますか?
R:「おまえら行ってこい」って言われたら、「ういっす」って行くようなタイプだからかな。
C:やっぱりノリですかね。“毎日磨くスニーカーとスキル”(LAMPEYE『証言』で TWIGY が放った名ライン)じゃないけど、オレ、服の汚れとか全然気にならないんですよ。スケボーしてたらスニーカーなんて壊れるものだし、バッグも破れたら安全ピンで留めとく。そういう意味でも、ラップシーンに馴染めない部分があったのかも。それでRAWLIFE行ったら、汚い人ばっかりで下品(笑)。「ここだよ、オレたちの場所は」って(笑)。

そのRAWLIFEでもそうですけど、ライヴにすごく定評がありますよね。曲を作るときは、ライヴを想定したりするのですか?
C:そうですね。5曲目の『TIME IZ ONLY IT THAT CAME』なんかは、みんなでダイブしてほしいし、荒れてほしい。宇多丸さんに参加してもらった11曲目『MASTERSオブお家芸』もダイブしてほしい。なんかヒップホップなのにダイブばっかりだな(笑)。わかった! そこなんだ。オレたちダイブしたい人たちなんだ! 昔は YOU(THE ROCK☆)さんとかめちゃくちゃダイブしてたからな(笑)。
R:ラップとトラックと、それにプラスして自分の感情もボディランゲージ的に表現してほしい。ライブなので。
C:パンクやハードコアの人たちが好きな音楽でありたいとも思っています。オレたちも好きだし、畑違いでも心は一緒ですよ。
特にライヴでは、パンクやハードコアの人たちと一緒にラインナップされている方が違和感ないですよね。
C:以前、ペイバック・ボーイズと一緒にやったとき、すごくうらやましかった。ホントに同世代で一番好きなんじゃないかと思うくらい最高すぎ。真っ暗にして、人がポンポン飛んで(笑)。でも終わって電気がつくと、みんな笑顔(笑)。「あー、痛かったねー」って(笑)。これだよって思いましたよ。「みんな手を挙げて、左右に振って」みたいな予定調和なことばかり考えるラッパーが多いから。
ライヴはどうやって構成するんですか?
C:最初の頃は、ライヴしかなかったから、それこそ命をかけて、週5日練習してました。いまも週に2回はライヴしているから、基盤さえできていれば、あとは自由に広げられますね。ドリフみたいに決めるところは決めて、あとはゆるく。
R:あとは偶然性。
C:前にミスったことが、次からのルーティンになったりしますからね。話の流れで、途中でどんどん変えていきますよ。最近やっと、吉野がオレの言うことを理解してくれるようになったんですよ。前は「今日はこういう感じだから、あの曲いこうか」って言っても、全然違う曲出したりして(笑)。
















