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2002"フガハム"とは、デザイナー山本亜須香とアートディレクター三嶋章義が提唱する架空の国の名称。その歴史の断面を、現代的なジャポニズムと捉え、ファッションだけにとどまらず様々な方法で表現し、"フガハム"という国を確立してゆくアートプロジェクト。第二次世界大戦の敗北から半世紀以上を経た現在、戦後第三世代にあたる三嶋と山本は、この架空の国"フガハム"に、日本人としてのリアリティーを重ねている。
contact FUGAHUM Tel:03-5654-7730 URL: www.fugahum.com E-Mail:info@fugahum.com |
エンライトメントの三嶋章義と、ヨウジヤマモトでのパタンナー経験を持つ山本亜須香によって立ち上げられた FUGAHUM 。ネイティブが文明人に侵略され、思想や文化が変化した歴史を持つ架空の国”FUGAHUM”を、ファッションにとどまらない様々な表現で確立していくという第10章まで続くプロジェクトだ。異なるふたつの才能が高い次元で融合し、着る者に豊かな物語を伝えていく彼らの作品は、シーズントレンドに振り回されがちなマンネリ化したファッションシーンに、新鮮な刺激を与え得る大きな魅力にあふれている。ブランド立ち上げ以来、はや4シーズンが経過したFUGAHUMのふたりに、そのクリエーションの源泉を聞くべく、インタビューを敢行した。
Text:原田優輝
まずは、FUGAHUM立ち上げの経緯を教えてください。
山本(以下Y):私は元々 ヨウジヤマモトで働いていました。ヨウジに入った理由は、モノトーンを基調に、造形的な部分だけで洋服をどこまで表現できるかということを追求してみたかったからです。でも、しばらく働いているうち、次のステップに進むためには、生地や素材も含めて新しいデザインを考えていかなくてはいけないと思うようになってきたんです。ただ、それは自分だけではできないことだったので、誰かと組んで新しいことをやってみたいと思っていたんですね。その時に、友人の紹介でたまたま三嶋と知り合ったんです。
三嶋(以下M):僕は、普段エンライトメントで、ブランドのカタログを作ったり、展示会のインスタレーションを手掛けたりしていて、ファッションとの関わりは結構あったんです。元々消費者としてもファッションが好きだったし、現場もある程度見ていたので、実際に作ってみたいという想いはずっとありました。でも、自分がやれることとは微塵も思っていなかった(笑)。だから、僕にとっても山本との出会いは大きかったですね。実際に話をしてみて、元々持っている感覚に共通するものが多いと感じたし、お互いのできない部分を補いながらやっていくことができそうだったので、一緒に始めることにしました。
Y:もともと私はアナログ思考の人間で、手で作ったものしか理解できないところがあったんですけど、そこに三嶋の感性やアートワーク等が加わることで、もう一歩先にいけるような気もしました。ふたりで一緒にやる意義も、そういうところにあるのかなと感じたんです。

「FUGAHUM」は架空の国という設定ですが、このブランドコンセプトはどのようにして生まれたのですか?
M:僕自身、国という概念が前から気になっていたんです。地球上には、様々な人種が散らばっているにも関わらず、国境線が引かれることで、「国」として区切られてしまっているわけですよね。それによって国レベルの戦争が起きて、侵略したりされたりする。そこで敗れて植民地になった国は、宗教や文化、習慣をすべて変られてしまうことだってある。それって一体何なんだろう? ということを普段から考えていたんです。それで、自分たちが考える国とは何だろうということを話しているうちに、FUGAHUMのコンセプトが浮かんできたんです。過去には色々なことがあったけど、最終的にはハッピーな国、というものを作るのがいいんじゃないか、というところからスタートしています。戦争なんかを繰り返している人間たちへのアイロニーも込めて、平和的な国を作ろう、と。
「国」という概念は、「ファッションブランド」のあり方と重なる部分もあるような気がします。
M:そうですね。どこのブランドも、ある意味ひとつの王国と言えますよね。パッと見ただけで、自分たちのブランドとわかるようなイメージ作りをしているわけですから。ただ、自分たちの場合は、洋服だけにこだわらないで、そのイメージを作っていくというところに特徴があると思います。


09SS Collection vol.04″GRADATED KINGDOM”
現在のファッションシーンには、ブランドイメージ=ブランド名・ロゴ、という安易な発想があって、その背景にある思想やストーリーが軽視されがちな傾向がありますよね。FUGAHUMの服作りは、あえてその流れに逆行しているように感じます。
M:やっぱりアート的な要素が強いんでしょうね。ファインアートの作品では、コンセプトを説明されないとよくわからないものも結構あります。でも、背景にあるストーリーを理解することでより深みが出てきます。FUGAHUMの洋服にも、コンセプトありきのところがあって、それを感じながら着てもらえたらうれしいと思っています。
Y:もう少し気構えて着てもらいたいんです。こんな変なブランドを着ているんだ、と(笑)。自分たちの洋服は、着方によって全然印象が変わるものがとても多い。だから、こちらからコーディネートを提案するのではなく、自分なりの着方を想像出来る人に着てもらいたいですね。
ファションには「トレンド」が不可欠な要素ですが、FUGAHUMは世のトレンドとの距離感をどのように捉えているのでしょうか?
M:今僕たちがやろうとしていることは、トレンドと逆行していると思うんです。うちの洋服は、レディスにしてはテイストが強すぎるし、世間ではもっとガーリーな服が売れていることもわかっています。でも、だからといってそれを自分たちがやっても仕方ない。もちろん、まったく歩み寄らないというほどの頑固者ではないんですけど(笑)。
Y:トレンドをまったく考えていないと言えばウソになりますが、素材やカタチとしてトレンドを取り込むというよりは、ジワジワとしみ出ていく感覚があるという感じですかね。


08SS Collection vol.02 “Soft protector”
Y:自分たちの気持ちとしては、常に半歩先を行きたいという思いがあります。よく、私たちの洋服を部屋に置いておきたいと言ってくれる人がいるんですけど、洋服なのでやっぱり着てもらわないと意味がない。だから、それを着られる自分になってほしいし、それを後押しするような気持ちでやっているところはあります。
M:ただ、例えばいつか近未来のこともテーマにしたいんですけど、今バキバキのサイバーなことをやるべきではないとも思うんです。そういう大きな流れとしては、トレンドを考えているのかもしれません。色々とやりたいネタはあって、それを時代に合わせて、どのタイミングで出すかは考えていますね。
シーズンテーマはどのようにイメージしていくのですか?
M:FUGAHUMの歴史を考える時に、どうしてもハッピーな状況が想像しにくいんですよね(笑)。自分たちの歴史でもそうですけど、やっぱり色々移り変わっていく時というのは、戦いや制圧、宗教というものが背景にあることが多いじゃないですか。やっぱりそれは国を作るためには必要な要素で、違う価値観がぶつかるからこそ新しいものが産まれていくのだと思っていて、それがFUGAHUMの根本にもなっています。でも、決してネガティブな表現をするつもりはないし、もっとハッピーな部分だけをピックアップするコレクションも出てくるとは思うのですが…。そうしたところからテーマを考えていって、そのテーマに対して、服としてどう落とし込むかということを山本が提案してくれる感じですね。
Y:私としては、三嶋の世界観をストレートに表現するのではなく、例えば、堅い甲冑をやわらかい素材で表現するなど、相反するものを組み込んで、違和感のあるデザインにすることを心がけています。


09SS Collection vol.04″GRADATED KINGDOM”
ちなみに、今シーズンのテーマである「GRADATED KINGDOM(=変わりゆく王国)」はどのようにして生まれたのですか?
M:基本的には、FUGAHUMという国で起きた出来事を、年代記的に表現しているのですが、今シーズンは、過去に繁栄した王国が徐々に移り変わっていく様子をテーマにして、その王国を治めている女帝にスポットを当てることで、洋服に落とし込みました。これまでのうちの洋服にも、民族的だったり、魔術的な要素は強かったのですが、特に今回は、魔女のような禍々しさを持った女帝というイメージがあったので、それを強く押し出しています。
Y:洋服的な部分で言うと、以前に展開した「SOFT PROTECTOR」のように全面的に遮断するようなものではなく、春夏シーズンということもあり、もっとラフなイメージで、女帝の私生活というものを表現しています。
今シーズンは、これまで以上に生地のグラフィックが効果的に表現されているような印象を受けました。
M:今回は、アリもののグラフィックをそのままプリントするのではなく、どういう洋服を作るかを考えて、実際にパターンを引いた上で、その生地が洋服のどの部分に入ってくるかというところまで計算して作りました。すべてがそういうアプローチである必要はないと思うのですが、自分たちにしかできないことでもあると思うので、今回それをやれたことは良かったですね。あと、シーズンコンセプトを詰めていく段階で出てきた「オーパス」という魔術的なモチーフを表現するために、光や音を洋服のパターンとして表現するということにもチャレンジしました。

09SS Collection vol.04″GRADATED KINGDOM” Installation
先日行われたインスタレーションでは、メディアアーティストの小岩亮太さんとコラボレーションしていましたが、その経緯についても教えてください。
M:実は、もともと接点があったわけではないんです。さっきも話した「オーパス」を表現するにあたって、レーザーとかを使って何かできないかと考えて、色々試行錯誤していたのですが、なかなかうまくできなかったんです。その頃に、たまたま小岩さんのことをネットで知ったんです。NHK「デジタル・スタジアム 」に出ていた映像だったと思うのですが、それを見て、すぐに彼に連絡をとって、京都まで会いに行ってお願いしました。今シーズンから特に意識するようになったことなのですが、あくまでもファッッションをベースにしつつ、もう少し広い意味で、同じジェネレーションの人たちと新しいカルチャーを作っていきたいと思っているんです。FUGAHUMの国民を増やしていくと言いますか(笑)。
今後も何か具体的にやっていきたいこともあるのですか?
M:例えば、コンテンポラリーダンスの人に、僕らが作った衣装を着てもらい、FUGAHUMという国を踊りで表現してもらうとか、彫刻家にオブジェを作ってもらうとか、ひとつの方向からしか見えないものにはしたくないんです。そこにファッションがうまく絡んで、消費者にも自分たちの想いが届いてくれたらうれしいですね。やっぱり、自分たちひとりひとりができることはたかが知れているので、色んな人たちと一緒にやることで面白い塊のようなものになっていけたら良いですね。
それは、現在の日本のファッションシーンに対するアンチでもあるのでしょうか?
Y:よく、なぜ東コレでショーをやらないのかと聞かれるんです。でも、私たちはそこに入るようなブランドではないし、新しいプレゼンテーションのカタチを提案していくのが自分たちの役割だと思っています。今後、何か違うカタチでショーをするかもしれませんが、今のところ東コレが面白い場所だとは感じていません。正直、今のファッション業界を壊したいという気持ちもあるんです。やっぱり洋服だけをやっていてもしようがない。ただ、自分を表現するツールとして、ファッションはスゴく合っていると思うので、それを通して、古い体質の業界をぶっ壊したいというのはありますね(笑)。

08SS Collection vol.02 “Soft protector” Installation




























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