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アーロン・ローズ(写真中央) ニューヨークの伝説的ギャラリー「アレッジド・ギャラリー」のオーナー兼ディレクターとして、数多くのアーティストを世に送り出したストリートアートの仕掛人。2004年3月にオハイオ州シンシナティのコンテンポラリー・アート・センターで開かれたグループ展『ビューティフル・ルーザーズ』をディレクションする。自身が監督を務めた同名のドキュメンタリー映画も話題を集めている。 スティーブン・パワーズ(写真右) ESPO(エスポ)という通称で知られるニューヨークのアーティスト。近年は、様々な形や大きさのグラフィティ、看板、都会の広告等、目を欺く仕掛けを用いた一連の魅力的な作品により、国際的なアートシーンでも注目が高まっている。 contact Beautiful Losers URL:www.beautiful-losers.jp |
NYのイーストヴィレッジに作られた、元マーケットの看板に「ALLEGED」と書かれただけのギャラリーがオープンしたのは1992年。そこには、ストリートカルチャーを体現するマーク・ゴンザレス、マイク・ミルズ、バリー・マッギー、ハーモニー・コリン、シェパード・フェアリー(Obey)、トーマス・キャンベル、スティーブン・パワーズなどの表現者たちが集まった。彼らは皆、社会的にはいわゆる落ちこぼれ=ルーザーズ。しかし、彼らの表現するものにこそ、魅力を感じていたのが、ギャラリーを始めたアーロン・ローズだ。いつしかアーティストたちは有名になり、世界中のストリートで愛されていく。そんな彼らの作品は、『BEAUTIFUL LOSERS』展として世界を巡回し(現在も継続中)、同名のドキュメンタリー映画も現在公開中だ。映画公開とラフォーレミュージアム原宿で行われる展覧会のために来日を果たしたアーロン・ローズとESPOことスティーブン・パワーズの2人に話を聞いた。
Text:大草朋宏
まず始めに、映画『BEAUTIFUL LOSERS』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
アーロン・ローズ(以下A):製作は5年前から始めていたんだ。共同監督のジョシュア・レナードと、小さなカメラでちょこちょこと撮っていた。そのうちにスタッフが集まってくるようになったりりして、「流れが来た!」と思ったんだ。始めから明確な計画があったわけじゃなくて、そういうエネルギーが徐々に満ちあふれてきたんだ。
どこからかオファーがあったわけでもないんですよね?
A:なかったよ。以前に、オファーがあったこともあるんだけど、その時はまだ早いと感じたんだ。アーティストたちがまだ成長しきっていないと思ったんだよ。

映画『ビューティフル・ルーザーズ』で監督を務めたアーロン・ローズ。
ESPOさんは、この映画の話をきいた時はどのように感じましたか?
スティーブン・パワーズ(以下S):スゴくうれしかったよ。これまでやってきたことは、何もしないとすぐ忘れられてしまうから、フィルムに色々な瞬間を収めることは大切なことだと思う。自分たちが自分たちの歴史を創っているこの瞬間を、自らの言葉で語っていくべきだと思うよ。しかも、撮ってくれるのが、誰も知らないような映画学校の生徒とかじゃなくて(笑)、アーロンだということが大切なことなんだ。
映画には、現場で語られるリアルな言葉だけがあるような気がしました。当初、評論家やキュレーターなどの取材したそうですね。最終的にそういう人たちのインタビューを省いた理由を教えてください。
A:確かに最初は批評家やギャラリーのオーナーなど、いわゆるアート業界の専門家たちのインタビューも取ったんだ。そういう人たちに語ってもらうことで、本物になるんじゃないかと思っていた。でも、それをフィルムとして見た時に、まったく逆効果なように感じたんだ。お偉いさんたちがスーツで語っているのが、スゴく嘘っぽく見えたんだよ。
それでアーティストたちのリアルな言葉だけを残すことにしたんですね。
A:そうなんだ。実際、アーティストたちに、彼らの考え方や人生を話してもらうことこそが、本物の『BEAUTIFUL LOSERS』を語ることになるんじゃないかと思ったんだ。その頃、トッド・ジェームスがちょうどパペットを作っていたので、お偉いさんたちのパペットを作って皮肉ろうかいうアイディアもあったんだけどね(笑)。でも、周辺の人が語ると、強制的に「これは良いものだ」と思わせるようなものになってしまうんだ。

アーロンとともにインタビューに応じてくれたアーティストのESPOことスティーブン・パワーズ。
アーティストたちは、みんな孤独な存在だと思います。そのような人たちに、「場」を与えたということは、今振り返ってみてどのような意味があったと思いますか? 最初は遊び感覚だったと聞いていますが。
S:最初からお互いを必要としていたし、共存関係がとれていたんだ。それは最初からそうだし、今になってもお互いのギブ&テイクは変わらないよ。
A:オレもそう思うよ。
その「場」にみんなが集まったことで相乗効果が生まれたと思いますが、アレッジド・ギャラリーがなかったとしたら、このような状況は生まれてなかったと思いますか?
A:オレがギャラリーを作らなくても、ムーブメントは起きていたと思うけどね。
S:起きていたかもしれないけど、それぞれのグループはもっと小さかっただろうね。スケーターはスケーターで集まり、サーファーはサーファー、グラフィティ・ライターはグラフィティ・ライターで、なんとなくお互いを警戒しながら(笑)。でも、アーロンがみんなの学食みたいな場所を提供してくれたから、今の状況があると思うんだ。「みんなでガンバレよ」みたいな場所をね。

映画『ビューティフル・ルーザーズ』より。
『BEAUTIFUL LOSERS』に登場するアーティストたちは、今はもう“ルーザース”から脱却できているのですか?
A:その日によるね(笑)。
S:朝はルーザーズで始まるけど、夜の9時くらいには完璧にビューティフルになってるよ(笑)。
(笑)。でも、今こうしている間も、全然”ビューティフル”になれないルーザーズたちが、まだたくさんいると思うんですね。誰にも認めてもらえず、日の目を見ない人たちが。
S:オレも家に帰ったら、月々の家賃を払わないといけないし、今後どう生活していくかを考えないといけない。ある人と比べたら成功しているかもしれないし、またある人と比べたら失敗しているかもしれない。誰かと比較するば言えることはあるかもしれないけど、結局は自分のことしかわからないよ。今の自分がどこにいるのかということしか考えていないから、他と比べてどうかということはないよ。
アレッジド・ギャラリー周辺からこのようなムーブメントが興ったのは、当時の時代背景など様々な要素が関連していたと思います。でも、2000年代に入ってからはジャンルの細分化が進み、ひとつのムーブメントとしてまとまりにくい状況があると感じます。でも、そんな時代のなかでも何かムーブメントを起こしたい、加わりたいと思っているクリエイターはたくさんいます。彼らが今やるべきことは何だと思いますか?
A:強制的に「これをやれ!」と言ってできることではないし、自分たちの場合だって、あくまでも自然発生だった。言えることとしては、とにかく一緒に楽しめる仲間や、切磋琢磨できる友人を見つけるべきということだね。そういう仲間たちとサポートし合っていくことが一番大切だよ。

映画『ビューティフル・ルーザーズ』より。
このような状況が生まれた理由には運もあったと感じますか?
S:ホントにラッキーだったと思うよ。それは、そこからつながった仕事とか結果のことではなく、あの場所で巡り会えた仲間たちの存在がね。もし違う土地や時代に生まれていたら、絶対に会えなかったわけだから。そんなことを考えるだけでも悲しくなるくらいだよ。
A:成果が素晴らしいのではなくて、みんなが知り合って、お互いの成長過程を見ることができたことが大きい。大きな挫折もあったけど、後から思い出すとそれも楽しいくらいだね。
端から見ていても楽しそうですし、「僕たちはああなりたい」と思ってしまいます。でも、モデルケースとして真似をしてもしようがないんですよね?
S:すごく大変だよ。「俺たちが体験したことをみんなやった方がいい」とは、まったく言えない。特にオレは大変だったからね(笑)。
映画『ビューティフル・ルーザーズ』は、シネマライズ、ライズXほかにて公開中。

映画『ビューティフル・ルーザーズ』公開を記念して、8月2日から16日までラフォーレミュージアム原宿で開催された展覧会の設営風景。展覧会の模様はこちらから。

















