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67年岐阜県生まれ。鳥取大学工学部社会開発システム工学科中退。セツ・モードセミナー卒。エキシビジョン中心のアーティスト活動の他、Theatre PRODUCTS、DRILL DESIGN、DIET BUTCHER SLIM SKIN、STOF、KATHYなどとジャンルを超えたコラボレーションを精力的に行う。HISUIのテキスタイルデザイン、NHK教育『天才てれびくん』のオープニングアニメ、Lamb、tegwonのPVなど、仕事内容も多岐にわたる。
contact 水野健一郎 E-Mail:jg2mfc001@ninus.ocn.ne.jp |
一見ゲーム画面を思わせるようなフラットな質感、「背景」や「風景」に向けられる独自の視線、完成一歩手前の、何かが抜け落ちているかのような”空洞”感etc…。画面から感じられるそれらの要素が、総体的な「違和感」として見る者を惑わし、幻想の世界へと誘っていく水野健一郎の作品群。アーティストとしてだけでなく、ファッションブランドとのコラボレーションや、テレビ番組のオープニングアニメーションなども手掛け、多岐に渡る活動を展開している彼の創作を支えるモチベーションとは? そして、水野の脳内に広がるリアリティとは?
Text:原田優輝
まず始めに、絵を描き始めたきっかけを教えてください。
もともと美術にはまったく興味がなかったんです。昔から好きだったのはアニメーションで、高校時代からアニメ作品を作っていました。大学では工学部に進んだのですが、やはりアニメを作りたいという漠然とした思いがあったので、絵コンテを描いたりしていましたね。でも、それで食べていこうという気はなかったです。そんなある時、教育学部の美術専攻でモデルのバイトをする機会があったんです。そこで、絵を描く人たちばかりに囲まれて、アートへの興味が出てきたんです。それから、その人たちの展覧会などを見に行くようになり、そこで一枚の作品と出会い、衝撃を受け、その絵を買ったんです。
それはどんな作品だったのですか?
カラフルな色彩で描かれた人物画で、絵具をチューブから出した状態のままキャンバスに置いたような作品でした。「どうやったらこういう絵が描けるんだろう?」と色々分析していて、ある時「あ、分かった!」と(笑)。何か法則のようなものが見えた気がしたんですね。それをきっかけに「ピカソの作品はこういうことだったのか!」というところまで飛躍したりして(笑)、俄然興味が出てきたんです。だんだん「自分にもスゴい絵が描けるかもしれない」と思うようになり、その衝動だけで東京まで出てきてしまったんです。


AnimeFace(2007)
その絵との出会いが、水野さんの人生を変えたわけですね。
そうですね。でも、いざ描こうとしても、全然描けなくて…(笑)。頭の中にあるイメージを、どんな技術を使って落とし込めばいいのかがわからないんですね。描きたい絵はあるのに、それを表現できなくて、とてももどかしい思いをしました。その原因が、体に染み付いてしまったTVアニメの影響にあると考え、まずはそれを払拭することに全てを注ぎました。自分が最も心動かされる要素は「生真面目な稚拙さ」であることも判明し、その先10年くらいは「どうすれば下手になれるか?」ということばかり考えていました。
そこには、専門的な美術の勉強をしてこなかったことに対するコンプレックスもあったのですか?
あったのかもしれませんね。20代の頃は、デッサンの基本などをあえて無視した作品を描いていたのですが、それがたまに公募展なんかに入選したりして、さらに変な自信がついてしまって…。でもある時に、本当に下手になってしまっていることに気付いたんです。仮に、写実的な絵を上手い絵とするならば、中学・高校の時の方が、まだ上手く描けてたんじゃないか、と…。それからは、昔よく描いていたメカの絵なんかを1日何個も描いたりして、「リハビリ」をするようになったんです。そのうちにアニメを作りたいと思っていた頃の感覚が甦ってくるようになりました。

SpaceWar(2006)
水野さん独自のスタイルが確立されてきたのはいつ頃からなのですか?
しばらくはスタイルを定めずに描いていたので、作風はいつもバラバラだったのですが、ある時に、ハンディカムで自分の絵を撮影して、それをビデオプリンターでプリントし、さらにカラーコピー機で拡大したものを作品として発表したことがあったんです。映像には昔から興味があったので、ハンディカムで趣味的に色々撮影していたのですが、たまたま自分の落書きみたいなものを撮った時に、これは面白いと感じたんです。この手法を使うと、タッチがバラバラの作品でも映像のワンシーンのような質感で統一されるんです。
その手法が、ゲーム画面を思わせるような独特の質感を持った近年の作品にもつながっているようですね。
そうですね。PC初心者の僕が、いきなり3Dだなんてちょっと面白いかも、という軽い気持ちで使い始めたある3Dソフトにはまっちゃって。でもなかなか思うように使えなくて、まさに僕の大好きな「生真面目な稚拙さ」満載な作品が山ほど生まれました。最初は、PCで作ったものを出力しただけでは、自分の作品と思えないところがあり、それをあえて大きなキャンバスに手描きで模写していたんです。でも、それをしていると、最初の段階で「これは手描きする時に大変そう」とかを考えるようになってしまい、描きやすいものばかりにチョイスするようになってしまって、最初の主旨からズレていってしまったんです。でも、昔のゲームっぽい線はやはりデジタルの方が出せるし、雑誌などのメディアに載せるのにも、データの方が適しているので、最近はまたデジタルでやっています。

3DRPG(2006)
最近はアニメーションを作ることも増えているようですね。
そうですね。まだ断片的なものばかりなので、作品と言えるかは微妙なのですが…。そもそも絵を描いている時でも、頭の中に浮かんでいるイメージは映像になっていることが多いので、取り組む上での意識にはあまり差はありません。アニメが作りたいと思っていた学生時代と同じ場所に一周して戻ってきました。でも、学生の頃は、ただ単純に動くものを作りたいという欲求だけだったのですが、今は自分の持っている世界観をアニメーション表現できるようになってきたので、やっと始まったという感じです。
アニメーションは独学で学ばれたのですか?
はい。MACを使うようになって、最初にFlashを覚えたんです。その後、After Effectsというソフトがあるということを教えてもらってからもしばらくは、Flashで制作していたのですが、Flashでできることは、基本的にAfter Effectsでもできるということが次第に分かってきました(笑)。今後はアニメーション作品をDVDなどにパッケージできればと思ってます。

Tegwon Rhapsody 設定画(2008)
雑誌や広告などのお仕事もされていますが、それらとプライベート作品は違うものとして考えられていますか?
昔はまったく分けていなかったんですよ。でも、色々なことがわかってくるにつれて、やはり全然違う世界なので、もう少ししっかりした意識を持たないといけないんじゃないかと思う反面、それでもやはり「描く」ということを大事にしたいという気持ちもあるんです。もし仮に、自分の職業を「イラストレーター」とハッキリ言ってしまえば、もっと行動しやすくなるのかもしれませんが、それはまたちょっと違うんです。自分の作りたい世界というものがあって、それを表現しないことにはモノを作っている気がしない。最近は、自分の「幅」がだいぶわかってきたので、元々持っている世界観を、より濃くしていきたいと思っています。
そうした世界観を表現する場としては、やはり展覧会での作品発表というカタチが一番合っているのですか?
展覧会は、誰にも気を使わない自分を純粋に表現することができますからね。でも、自主的に展覧会を開いたのは最初くらいで、その後は声をかけてもらってやることがほとんどですね。もしその段階で、自分の中で準備不足だったとしても、不完全な状態をそのまま途中経過として見せていくこともあります(笑)。

Exhitibion View at Little More(2004)
確かに水野さんの作品には、未完成に感じるものが多い気がします。
普段生活していても、世の中はわからないことだらけだと感じるし、その不完全さをそのまま絵にしたいという想いはありますね。もちろん、完成させたいという気持ちでやっているのですが、どうしても意識が散漫になってしまうんです(笑)。色んなものを同時進行させているので、それぞれのプロジェクトがお互いに関係し合ったりもするし、長いことやっているうちに飽きてしまうものもありますね(笑)。
制作のモチベーションになっているものを教えてください。
大学の時に閃いたあの感じをいまだに追い求めているのだと思います。その頃に比べて、表現の幅は広がりましたが、結局やりたいことは、あの時に受けた感じを描くことで、それが僕にとってのリアリティになっているんです。もうひとつは、自分が子供の頃から見てきたアニメーションの中にあった世界を表現したいということですね。それは、アニメに登場するキャラクターとかそういうものではなく、一見何でもないようなシーンや風景だったりします。
水野さんの作品に、背景画のようなものが多いのもそのせいですか?
そうですね。僕にとって初めての絵画体験は、テレビで見たアニメーションだったんです。だから、知らず知らずのうちにそういうところに向かっていくし、それが一番自分らしいんじゃないかと思うんです。

お話を聞いていると、水野さんは、ご自身の中にある「リアリティ」を追求しようとしている気がします。
そうですね。あくまでも自分にとってのリアリティなので、必ずしも現実ではないし、かといって完全に幻想というわけでもない。ちょうどその中間なのかもしれません。誰でもそうだと思うのですが、自分の頭の中にあるものが、常に自分のリアルだと思うんです。僕は普段からよく写真を撮るのですが、撮影した写真を見ていると、自分の頭の中の風景に近いものがあったりするんです。その時に「これだ!」と感じるんです。そういう写真を見た時に「地面は絵具で描かれていた方が良い」とか「落ちている石はもう少しアニメ的なものにしたい」とか考えるんです。
風景的な作品が多いからかもしれないのですが、水野さんの絵画からは独特の世界観は感じるのですが、そこにご自身の感情があまり入り込んでいないような感じを受けることがあります。
感情を入れると失敗することが多いんですよね(笑)。東京に出てきた頃に描いていた絵は、逆に「感情的な」絵だったと思います。でも、未熟な技術だけで感情に任せて描いてみても、失敗ばかりになってしまって…。その時にちゃんとした技術を身に付けていれば、もっと感情をコントロールできるようになっていたのかもしれないのですが…。自分の欲求として、完成した作品に満足したいというのがあるのですが、僕の場合は「自分は画家なんだ」とか「特別な人間なんだ」という想いが入ってしまうと失敗するばかりで、あまり満足感を得られないんですよね。
それはある意味職人的な感覚なのかもしれないですね。極端な話、その絵が自分の作品だと気付かれなくてもいいのですか?
あまりそういうことを考えたことはないですね。冷静に考えながら、余計なものを排除していくと、本当の自分らしさが分かってくると思うし、それが自然と作品にも出てくると思うんです。でも、その一方でライブペインティングなどでは、感情に任せて一気に描く楽しさを味わいたいと思っています。そういうことももちろん大切ですし、これからは感情をぶつけていくような作品にも挑戦していきたいと思ってます。完成度は低くなるかもしれないけど、やっぱり描く楽しさというのは、ストレートに感情をぶつけている時にこそ得られるものですからね。
最後に今後の予定を教えてください。
年内に展覧会をやりたいと思っています。あと、アニメーションを発表する機会もちょくちょくありそうなので楽しみですね。


Art Work for Hisui(2007)、Art Work for Diet Butcher Slim Skin(2004)





































