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74年神奈川県生まれ。99年よりゲーム、番組オープニングタイトル等のCGやグラフィックのデザイン・制作、演出を開始。04年より丹修一監督に師事し、ミュージックビデオ制作に関わる。05年にディレクターとして独立し、CHEMISTRY、木村カエラ、矢井田瞳、RADWIMPS、RIZE、SHAKA LABBITSなど数々のミュージックビデオを手がけている。
contact 須藤カンジ E-Mail:kanji@co.email.ne.jp |
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RADWINPS『有心論』『セツナレンサ』、木村カエラ『STARs』、CHEMISTRY『almost in love』、SHAKALABBITS『MurRon』などミュージックビデオの世界で次々と注目作を発表する映像ディレクター、須藤カンジ。CGクリエイターとしての出自を生かした先鋭的な表現と、丹修一氏に師事していた頃に培われた、確かなカメラワークによる繊細な描写。あるいは鮮やかな色使いやセットデザインが生み出す“箱庭”的ファンタジーと、寺山修司らに影響を受けたシュールな感性。それらの相反する要素が共存した唯一無二の須藤ワールドで、多くの人々を魅了している彼にインタビューを敢行した。
Text:原田優輝
映像表現を始めたきっかけを教えてください。
元々は映像よりも、造型的な作品を作ることに興味があったんです。子供の頃に『E.T.』や『グレムリン』を見てから、映画に出てくるようなクリーチャーを作りたいとずっと思っていたのですが、それらがCGでも作れることを知り、大学卒業後、CGの専門学校に入りました。そこで初めて映像制作にも触れ、CGを使って映像も作るようになりました。その後、フリーランス・デザイナーとして、グラフィック・デザインやCG映像などを手がけるようになりました。
その頃からミュージックビデオの制作もされていたのですか?
インディーズで活動しているミュージシャンのクリップを全編CGで制作することなどはありましたね。ミュージックビデオには大学の頃から興味を持っていて、いずれはやりたいという想いがあったんです。僕の師匠である丹修一さんが手がけていたSADSやHIDEの『ピンク スパイダー』、ほかにもマイケル・ジャクソン『Black or White』などがMTVで頻繁に流れていて、それらに衝撃を受けたんです。「何でもアリ」な自由度の高さが面白いと思っていましたね。

『MutRon』SHAKALABBITS(2007)
丹修一さんに師事されるようになったきっかけを教えてください。
偶然ある飲み会で知り合えたんです。完全にラッキーな出会いでしたね。もちろん丹さんのことは知っていたので、そこでアピールして入れてもらえることになりました。それからADとして働くようになったのですが、当時はCGやグラフィックのこと以外は何も知らなかったので大変でしたね。右も左もわからないまま、撮影のノウハウなどを側で見ながら覚えていきました。基本的には「見て覚えろ!」という人だったのですが、唯一教えてくれたのは冷製パスタの作り方(笑)。「料理とディレクションは同じだぞ」と。僕も料理をするのですが、同時に色々なことを考えながら進めていくところは確かに共通しているのかな、と(笑)。
ADをされていたのはどのくらいの期間だったのですか?
27歳の頃から実質2年程だったと思います。その傍らで、自分でグラフィック作品を作ったり、VJをやったりしていました。VJは24歳の頃からやっていて、全然お金にはならなかったですが、音に合わせてぶっつけ本番で映像を出すというライブ感は、今のミュージックビデオ制作にもかなり活きていると思いますね。
独立のきっかけを教えてください。
師匠から、知り合いの制作会社のプロデューサーに半年間つくように言われたんです。ディレクターとして教えることは教えたから、あとは制作の仕事を半年間しっかりできたら卒業、ということだったんです。そこで制作チーフの仕事を半年間務めて、独立しました。当時は「1日でも早くディレクターになってやる」という思いで必死だったのですが、今振り返ってもその半年間は絶対に必要だったと思います。最近は強い作風や世界観を武器に活躍している若手ディレクターも増えていますが、僕の場合は、丹さんの下で撮影の方法を学んだり、最後の半年間で携わった制作の現場での経験があったからこそ、今の自分があるんだと思っています。

『almost in love』CHEMISTRY(2005)
独立当初に手がけた作品で、印象に残っているものがあれば教えてください。
特定の作品ということではないのですが、独立してしばらく経った頃、知人のプロデューサーに呼び出されたことがあったんです。それまでに自分が手がけてきた作品を一緒に見ながら「お前は何がやりたいんだ? もっと自分の性(さが)を出せるヤツなんじゃないか?」とスゴく怒られたんです。当時は自分が得意なグラフィックやCGを一切使わずに、いわゆる“王道”的なミュージックビデオばかリ作っていたのですが、そのなかでも自分らしさを出しているつもりになっていたんですね。年末にそんな出来事があったので、正月は実家でずっとそのことばかり考えていました(笑)。それからは予算があろうがなかろうが、自分にしかできない仕事を120%やりきろうと思うようになったんです。
その出来事がきっかけで、現在のスタイルが確立されていったのですね。
そうですね。あれがなかったら今はもうミュージックビデオをやっていないかもしれないと思うくらい、衝撃的な出来事でしたね。それからはCG合成などを寝ないでやったりもするようになりました。その年は仕事の数もかなり絞ったので、当然生活も苦しかったのですが、制作した作品すべてが色々なところでピックアップされたんです。
ミュージックビデオを制作される上で大切にしていることを教えてください。
アーティストとできるだけ話をするようにしています。曲を作ったときの気持ちやイメージしていたものなどを聞いた上で、それを膨らませていった方が面白いものができると思うんです。曲と歌詞だけを渡されてもなかなか難しいところがあるし、マスターベーション的な作品に陥りがちですからね。もちろん場合によってはそうした作り方をした方が良いこともあるとは思いますが。あとは、「1+1=3」になるようにいつも心がけています。例えば、グラフィックを作る場合にも、他の人に依頼することでオーダーに対してプラスアルファのものが上がってくることが多いですからね。それも、自分が手を動かして作るようになってからわかってきたことなんです。

『LADY LOVE』RIZE(2007)
須藤さんの映像は、鮮やかな色使いが印象的ですが、そのあたりのこだわりについて教えてください。
それは色々な人に言われることなのですが、実は自分のなかでは一番自信がない部分なんです…。撮影での面白い手法や、グラフィックやCGの使い方などは自分でも常に意識しているのですが、「色」にはまったく自信がない…。ライティングやカラコレも当然考えてはいるのですが、なぜそこが褒められるのかはよくわからないんです…(笑)。もちろんうれしいことではあるのですが。基本的に根が優しいからですかね(笑)? 自分としてはそうしたファンタジー的な世界観よりも、寺山修司の実験映像などに見られるようなシュールな感覚に影響を受けていると思うのですが。
CGなどを使った手法を実験する場合は、最初から明確なイメージが描かれているのですか?
頭のなかに、こういうことをしてみたいというアイデアはいくつかあります。その時に見ているものなどにインスパイアされることも多いですね。実験的なことをやるときはいつも「ホントにできるのか?」と思いながらやっているのですが、意外に失敗はない。ある程度やってきているなかで、さじ加減がわかってきているところもあるのかもしれません。

『STARs』木村カエラ(2008)
長回しのワンカット撮影などのシーンを見ていると、カメラワークにもスゴく気を使っている印象を受けます。
確かにワンカットものは多いですね。特にそれが好きというよりも、曲に合わせてバランスや緩急をつけるためだったり、単純にその方がおもしろいと思うからやっているところもあります。緻密にシュミレーションして、CGコンテを作ってスタッフに説明したりと、大変なことも多いのですが。
CGなどを駆使した様々なギミックと、実写による繊細な描写が両立しているところが須藤さんの作品の魅力になっていると思います。
CG出身だからこそ、キレイな実写を撮ってやろうという想いはありますね。それも師匠の下にいたことが大きいと思います。CGだけをやっている人は、実写の撮り方を知らないことも多いですからね。今はCG合成よりも美術や撮り方で遊ぶことが多いですね。最近手がけたBoA『Kissing you』でも、始めに自分でセットのデザイン画を書いて、美術を担当してくれたENZOさんに作り込んでもらいました。


『Kissing You』BoA(2008)
企画の段階でセットのイメージなども明確に見えているようですね。
そうですね。まず始めにラフスケッチを描くのですが、それが一番細かいかもしれません。そこでアーティストとクライアントに面白いと思ってもらうことが大切なので、特に力を入れてやっています。現場では、スタッフレベルで共有できる程度のコンテを作り、あとは現場で起こるミラクルや、他のスタッフが出してくれる面白いアイデアなどを汲みながら進めていきますね。
RADWIMPS『有心論』のように、時間軸に焦点を当てた演出も多いですね。
時間軸を操作していくことが好きなので、それが考えていく上でのクセになっているところもあるかもしれません。これだけ時間軸を自由にいじれるのも、ミュージックビデオの自由度の高さ故にできることなんですよね。

『有心論』RADWIMPS(2006)
最近はCMの仕事も手がけられていますよね。
ここ半年くらいでCMのオファーも増えてきました。ミュージックビデオとはまったく違う世界なのですが、両方の世界を見られるのはいいですね。広告ならではの面白さというものも感じますしね。
最後に、今後やりたいことなどがあれば教えてください。
基本的には、その時に面白いと思えるものをやっていければと思っているので、この先どんなものを作っていくのかは、自分でも全然わからないですね。ただ、昔からやりたいと思っていたミュージックビデオの世界で仕事をやらせてもらえるようになったからなのかもしれませんが、最近は「仕事とは関係のない創作活動をするとしたら、自分は何がやりたいのだろう?」ということをよく考えるようになりました。うちの親父が趣味で有機野菜を作っているのですが、天候に左右されたりしながら作っていく作業を見ていると、とてもクリエイティブな行為だなと感じるんですよね。自分にとって、それが映像なのか彫刻なのか野菜なのかはまだわからないし、別に焦っているわけではないのですが、わかったときにはそれをやりたいと思っています。



















