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1975年三重県生まれ。アーティスト。独自の概念の元に描かれた細密描写や透明水彩技法のアートワークで注目を集める。以後、アート、グラフィック、Webの制作に携わる。著作に『NO/TE』(kurokurokuro publishing)、『2027』(ブルース・インターアクションズ)がある。6月28日から7月27日まで、NANZUKA UNDERGROUNDにて個展『Youth』を開催。
contact NANZUKA UNDERGROUND Tel : 03-3400-0075 Address : 東京都渋谷区渋谷2-17-3 アイビスビルB1F URL:www.kurokurokuro.com, www.nug.jp E-Mail:info@nug.jp |
Googleイメージ検索が、グラフィック・デザインの世界に革命を起こす以前から、極私的興味の赴くまま、身の回りの印刷物を“人力”スクラップし、デジタル世代の「コピー&ペースト」感覚を、無自覚的に作品に取り込んできた黒川知希。イラストレーターとしてキャリアをスタートさせ、「普通に」仕事をこなす傍ら、「屈折」とも「狂気」とも取れる独自の感性を熟成させてきた彼が、渋谷NANZUKA UNDERGROUNDで個展『Youth』を開催する運びとなった。一見忠実に描かれたイラストレーションの裏側に見え隠れしていた彼の本性は、今回のペインティング作品において、どのように発揮されるのだろうか? 個展を直前に控えた彼を取材した。
Text:原田優輝
まずは、個展『Youth』を開催することになったいきさつから教えてください。
NANZUKA UNDERGROUNDで06年に開催された『FINAL HOME』展の時に、ナンちゃん(ギャラリーオーナー南塚氏)に作品を見せたのがきっかけです。その後、『2027』の制作などが入り、なかなか(個展の)準備が進まなかったこともあり、ようやく今回開催にいたりました。
アクリル・ペインティングによるキャンバス作品がメインということですが、このような形態で作品を発表するのは初めてになりますか?
これだけまとまったものを発表することは初めてですが、ペインティング自体は以前から仕事でもやっていたし、キャンバスやパネルにそのまま描いたりすることもありました。やはり自分のなかでは、絵具を使ってペインティングをするということが原点にあるんです。
個展のタイトル『Youth』について教えてください。
今回発表する一番大きな作品のタイトルをそのまま使っています。自分のなかではきっかけとなったことがあるにはあるのですが、展覧会のタイトルは、見る人によって色んな解釈ができるようなものにしたかったので、そういう意味でもこのタイトルが良いかなと思ったんです。今回の展覧会では、一見色々なものが描かれているように見えるかもしれませんが、それらを展覧会タイトルの漠然とした意味の上で並べてみた時に、違和感のないようなものにはしたつもりです。
個展『Youth』より。
ポップな色彩、マンガを思わせるモチーフ、フラットな塗りなど、今回の作品からは、村上隆が提唱した「スーパーフラット」の文脈を想起する人も多いかもしれませんね。
たまたま先にやっている人がいたというくらいで、自分としては特に意識しているわけではないですね。よく、マンガやアニメなどの影響についても聞かれるのですが、実は全然詳しくないんです…。今回、自分がフラットな塗りにこだわったのは、マテリアルとして単純に気持ち良いと思えるから、という部分が強いですね。あと、既存の印刷物を見ながら描いているので、自然とフラットなものが出来上がるというところもあると思います。今回の展覧会でも、個人的に目に止まったチラシや雑誌、お菓子のパッケージなどを切り抜いて作っているスクラップブックが元になっていて、それらをペインティングで描いたらどうなるのか、というところから始まっているんです。
そのスクラップブックはどういうきっかけで作るようになったのですか?
以前からイラストの仕事を続けているのですが、最初は、いつどんな依頼がきても、それに合ったものをすぐに引き出せる資料として作り始めたんです。今となっては、Googleのイメージ検索ですぐに素材を探すことができますが、当時はなかなか大変だったんです。
既存の素材集のようなものではダメだったのですか?
より自分の好きな素材を集めたかったというのと、元ネタが分かりにくい方が面白いというのがあって。ネットが普及してからはネタとして集める必要性もほとんどなくなったのですが、写真を切り貼りしていくうちに変な感じになったり、どんどん面白さが増してきて、今はどちらかというと趣味的に続けている感じですね。
スクラップブック(2000〜)
イラストレーターとしてキャリアをスタートさせた当初は、どのようなお仕事をされていたのですか?
最初はアルバイトをしながら、挿画や雑誌のイラストなどをやっていました。もっと「大人向け」と言いますか、割と堅めの仕事が多かったこともあり、ごく普通の絵を描いていましたね(笑)。
元々イラストレーターを目指していたのですか?
絵が描ける仕事であれば何でも良かったんです。イラストレーターの場合、「良い/悪い」よりも、「必要/不必要」でジャッジされることが多いので、相手が必要とするものを描いていけば間口も広げられるし、仕事としてもやっていけるかなという考えが漠然とあったんです。
当時憧れていたイラストレーターはいましたか?
中学、高校の頃は『宝島』などをよく読んでいて、湯村輝彦さんやスージー甘金さん、安西水丸さんなど、雑誌に絵を描いている人たちがいて、何か面白そうだなという感じで見てはいました。でも、そこから影響を受けたということはあまりなかったと思います。
専門的な絵の勉強をされたことはあるのですか?
まったくないんです。子供の頃から絵を描くことは好きだったのですが、そのまま大きくなってしまったと言いますか…。僕はスゴく偏差値の低い高校に行っていたのですが、それもあって「美大進学なんて自分には縁がないもの」と勝手に思っていたんですね。でも、絵を描くことはやめられなくて、22歳の頃から絵具を使ってマジメにやろうと思うようになったんです。だから、イラストの仕事などをするようになってから、覚えていったことも多いですね。
『girl』(2006)
これまでの作品のなかに、鉛筆画によるシリーズがありますが、この作風はどのように確立されたのですか?
ある時、イラストの仕事でどうしても時間がないことがあって、まだ途中段階だったラフを見た編集者から「結構上手に描かれているからこれで良いよ」と言われたことがあったんです。その時に、「さすがにこれでは…」と鉛筆で少しだけ影などを付け加えて納品したのですが、それが割と面白がってもらえたんです。だから、最初から鉛筆画を描こうとしていたというわけではなく、偶然に生まれた作品だったんです。
そうだったのですね。でも、このシリーズなどからも感じられるのですが、黒川さんの作品は、忠実に模写された一見匿名性が強いように見える作品のなかに、「実は個人的な何かが混じりこんでいるのではないか?」と思わせるようなところが面白いと思うんです。
特別に何かを意識しているということはないんですよね。そういうことを色々な人に言われるのですが、聞かされて初めて気付くことも多くて、それは自分でも不思議な部分ですね。みんな同じだと思うのですが、あくまでも「自分が基準」なので、これが普通と言うか、等身大の自分と言うか…(笑)。
子供の頃はどのようなものに影響を受けていたのですか?
昭和50年生まれなのですが、子供の頃から普通にファミコンやビックリマンシール、ガチャガチャなどがあって、友達とゲームセンターや駄菓子屋に行ったりもしていたのですが、やはりその頃の生活が根底にあると思いますね。何かゴチャっとした感じと言いますか…。画家の絵に影響を受けたということはほとんどないですし、マンガなども人並みに読んではいましたが、そこから特別影響を受けたということもない。それよりも自転車で行ける自分の近所からの影響が強かった(笑)。あとは「ニセモノ」が好きでしたね。ガンダムやキン肉マンのニセモノとかもあったし、あの頃は大人が今よりも適当なことをやって子供をだまそうとしていたところがあったと思うんです(笑)。そういうものを見つけて喜んでいる自分がいましたね。
(左) 『party』(2007)、(右) 『luckycat』(2006)
お話を聞いていると、「複製」することで生じたり、失われたりする「何か」への興味が強いのかなと感じます。
そうかもしれないですね。どうしてもそっちにばかり目がいってしまうんですよね(笑)。
イラストレータ−として活動を始めた頃から、絵に対する考え方やスタンスが変わってきている部分はありますか?
僕はMacを使うようになったのが割と遅くて、03年前後だったのですが、それ以降で考え方が変わってきたところはありますね。それまでは原画をトレーシングペーパーでくるんで納品していたのですが、Macを使うようになってからは、データ修正などもできるようになって、だいぶ便利になりました。その反面、侘しさを感じたり、何となく思うところもあるんです。
『勇気ドーン!!一緒にドキッ』(個展『Youth』より)
そうした感覚も今回の作品に反映されているかもしれないですね。黒川さんのなかでは、今回のようなペインティング作品と、仕事としてのイラストレーションの違いをどのように捉えていますか?
イラストの場合は、最終的にはデータになって、印刷物として落とし込まれるものだし、何度でもデータを修正することができますよね。悪い言い方をすると、ごまかしがいくらでもきいてしまうところがある。でも、ペインティングの場合は、すべてが自分に跳ね返ってくる感じはします。もちろんそんな気はまったくないのですが、仮にみんなをだますことができたとしても、自分をだますことは絶対にできない。ペインティングとはそんなものなのかなと思っています。
今後は作家活動にシフトしていく予定なのですか?
「一枚絵」でやっていきたいという気持ちは昔からありました。でも、やり方が分からなかったから、イラストレーションを選んだというところがあったので、これからは徐々に作家活動に寄せていければいいなと思っています。より深いところに入っていくためには、ペインティングに専念した方が良いと思っているし、そこでしか見えない風景もあると思うんですよね。
個展『Youth』は、6月28日〜7月27日まで、渋谷NANZUKA UNDERGROUNDで開催。











