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00年、大阪Tank Galleryにて初個展を開催し、『美術手帖』に展評が掲載される。海岸通ギャラリーCASOに出展、LAD MUSICIAN OSAKA、京都Sferaでの個展など、関西を中心に活動後、拠点を関東に移す。ROMZrecordでのアルバムジャケットアートワークなどを手がけるほか、06年にはAnd Aで黒田潔、飯田竜太との3人展に参加。平面作品のほか、Webを使ったアートワークや、腐葉土を使ったイスタレーション、カラーコピー機を使ったワークショップなど、様々な手法を用いて、ユーモラスで壮大で繊細な、見ている人が思わず高揚するような独自のイメ−ジを表現し続けている。
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林絵美子 URL:www.hayasoft.com/recykm E-Mail:hh999999@hotmail.com |
様々な形状に切り取られ、色付けされ、時には燃やされた無数の断片。まだ見ぬ世界に想いを馳せながらかき集められたそれらのパーツが積み重なり、やがて自身ですら予期しなかった新たな世界を、新鮮な驚きとともに与えてくれるー。
そんなコラージュの魅力に取り憑かれ、様々なメディアを用いながら、その「世界」の共有を試みてきたアーティスト林絵美子が、自身の作品モチーフ「ケクジラ」を主役に据えたゲーム作品を完成させた。腐葉土を敷き詰めたインスタレーション、カラーコピー機を用いたワークショップなど、受け手とのコミュニケーションのカタチを模索してきた彼女は、なぜ今回ゲームというメディアに着目したのだろうか?「Revelations/」での個展『WAVIVES』を直前に控えた彼女を取材した。
Text:原田優輝
まずは、今回発表されたゲーム作品が生まれたきっかけを教えてください。
知り合いのプログラマーで、物理演算を使ったゲームを作っている人がいるのですが、「その人と一緒に何か面白いことができるんじゃないか?」と、別の知人が提案してくれたことがきっかけです。従来のゲームでは、風に吹かれて揺れる洋服の動きなど、あくまでも装飾的な要素として物理演算が使われることがほとんどだったのですが、その人は、演算による波の爆風で敵をやっつけるというゲームを作っていて、そのアイデアが面白かったんです。
その方と林さんの間には何か共通する感覚があったのですか?
私は、見てくれる人たちに視覚的に楽しめる時間を持ってもらえるように、コラージュアートという手法を通じて、ひとつの画面上にストーリーを練り込み、断片を重ねているところがあります。一方で、そのプログラマーの人が所属しているエイジゼロというゲーム制作会社は、ゲームというメディアのなかで、プログラマーとして表現したい事と、それをユーザーに楽しんでもらう時間の両方を考えながら、もの作りをしている人たちなんですね。そこに共通点があるということを知人に言われて、なるほどと思ったんです。自分たちが持っている感覚をただ表現するのではなく、それを見る人たちに共有してもらい、なるべく長い時間楽しんでもらいたいという想いがお互いにあるんじゃないかな、と。
分野は違えど、ユーザーとの関わり方に対する意識に共通するところがあったのですね。
そうですね。今回の試みは、単なるコラボレーションというよりは「融合」という感じで、お互いの表現したい感覚を更に研ぎすます良い手段だったと思います。私の作品はストーリーを持っていて、ある意味ゲーム的でもありますし、エイジゼロのプログラムは、絵画のようなロマンチックな計算の上に成り立っていると感じるんです。それらが上手く混ざり合う事ができたら、作品と触れ合える良い時間が作れるんじゃないか、と想いがありました。あと、彼らは将来的にはロボットなどを制作して、リアルの世界に飛び出そうというような考えを持っているのですが、私が作品を作る時も、ひとつひとつのキャラクタ—に感情を持たせたり、色々なものが相互に及ぼす影響などを考えながら、箱庭を作っていく感覚があります。様々な要素を積み重ねることで、もうひとつのリアルな世界を創り出すという感覚も似ているような気がします。
林さんがコラージュ作品を制作している理由もそのあたりにありそうですね。
色々な要素が重なっていくことで、意外性が生まれたり、発見があったりするんです。自分で絵を描いている時には絶対にやらないような組み合わせが、コラージュだと偶然できたりしますからね。ただ、長年コラージュをやっていると、どうしても「発見する楽しさ」は少なくなっていくんです。そのぶん今回のようにキャラクターに愛着を持ったり、制作する上での意識が少し変わってきているのかもしれません。
『WAVIVES』ゲーム画面
今回の展示内容について詳しく教えてください。
格子状のセルによって表現された仮想的な水中を舞台に、これまでの私の作品にも何度か登場しているキャラクター「ケクジラ」を操りながら、様々な敵をやっつけていくゲーム作品です。ユーザーは2種類の弾を使って、波動で敵にダメージを与えることができます。ゲームの難易度はかなり低く設定しているのですが、自分でやってみると意外に難しくて、全然クリアできなかったです(笑)。また、今シーズンのショップのテーマが「ミリタリー」ということだったので、お店の壁にコラージュ素材を貼付けて、ショップ全体をカモフラージュしています。
「ケクジラ」はどのようなきっかけで生まれたのですか?
作品を作る時は、最初にメインとなるキャラクターを決めるんです。そこから色々なものに派生していくことで世界観が作られていくのですが、「ケクジラ」も「海にいるインパクトの強いキャラクターが作りたい」というところから色々考えていくうちに偶然生まれました。見た目的なインパクトや新しさを少しでも作品に入れたいという想いがあり、そこでいつも苦戦しているのですが、今回は「ケクジラ」が勝手に動き回って、私の知らないところでヨロシクやってくれるという作品なので、そういう面では楽でしたね(笑)。

『WAVIVES』 at Revelations/ 30 May 2008 – 13 Aug 2008
『WAVIVES』展フライヤー。中央にいるのがメインキャラクター「ケクジラ」。
このようなインタラクティブ作品を発表するのは今回が初めてなのですか?
インタラクティブと言えるのかはわかりませんが、カラーコピー機を使ったワークショップや腐葉土を展示会場に敷き詰めたインスタレーションなど、見に来てくれる人たちと、何かしらのカタチでコミュニケーションできるようなアプローチは毎回考えているんです。というのも、私自身が美術館やギャラリーに絵を見に行くという行為が好きではないんですね。自分の家で絵を見たり、音楽を聴いたりするのとは違って、「見なきゃいけない」という観念などが邪魔をして、なかなか作品に入り込んでいきにくいところがあるんです。だから今回は、手っ取り早くコミュニケーションができるゲームでみんなに楽しんでもらおうと。
ゲームというメディアは、林さんにとってどのようなものなのですか?
最近はよくボードゲームをやっているのですが、ゲームを介したコミュニケーションはスゴくリアルだと感じます。ゲームに集中している分、「上手く伝えなくてはいけない」という気持ちとかが取り払われて、みんな「素」に近い状態になるんですよね。そういう時にこそ、その人の本音が見えるというか(笑)。
確かにゲームをしていると、その人の性格がわかりますよね(笑)。
プレイスタイルとかにもね(笑)。ゲームの場合、もちろん相手に勝つという目的もありますが、基本的には遊びだし、自分を飾ったりすることなく、それぞれが好きなやり方でできるんですよね。私自身が結構ウソツキというか、変にカッコつけたり、アホぶったりしてフィルターを作ってしまうところがあるのですが、ゲームをしているとそういうことを考えずに楽になれるところがあるんです。
(左)「astronomy :(>:/) mapping」at Sfera(2006)、(右)Joseph Nothing & Milky Chu Release Party Flyer (2003)
コンピュータゲームなども昔からやられていたのですか?
ファミコン世代ですからね。「ドラクエ」とか「FF」とかは、ゲームというよりも総合的なアートだと思ってやっていたところがありました(笑)。ゲームをプレイしながら、その音楽を聴くことがとても好きだったんです。何かをしながら聴く音楽って、スゴく心に残りますし、昔から何かに集中している時の、その“脇”にあるものに感動することが多いですね。
色々な意味でゲームからの影響は大きいようですね。
学ぶことがスゴく多いですね。少し前にハマっていた「人狼」というゲームがあるのですが、それをやりながら人生を学んでいましたね(笑)。簡単に言うと、ウソツキを見つけるゲームなのですが、そこには小さな社会のようなものが見えてくるんですよね。(ゲームは)本当にありがたい存在ですね(笑)。
林さんはWeb制作などの技術も持っていますが、今回のゲーム制作ではプログラミングなどの技術面にも関わったのですか?
今回はアイデアと世界観だけです。Webをやっているとは言っても、プログラムもそんなに書けないですし、自分のサイトなどにしても、あくまでも手段として(Webを)使っている感じです。元々Webに興味を持つようになったのは、Coldcutのアルバムがきっかけなんです。2枚組でリリースされたその作品は、そのうちの1枚がジュークボックスのようなインターフェースになっていて、それを自分でガチャガチャ動かしながらPVを見たり、色々遊ぶことができるCD-ROMだったのですが、それに影響を受けて、自分のサイトを作りたいと思うようになったんです。完全な手探り状態のなかで作ったサイトだったので、Webをやっている人たちからすると、ホントにアホな作り方をしているんですよね(笑)。でも今振り返ってみると、逆にそのアナログ感が良かったのかなと思うところもありますが…。

個人サイト「recYkm」トップページ
確かに巷でよく見かけるようなポートフォリオサイトとは全く違う作りになっていますよね(笑)。
ユーザーがやる気にならないと何も見つからないんです(笑)。Webの場合は、わかりやすい説明があるのが当たり前だったりするのですが、このサイトを作った当時は、その“当たり前”を逆手にとって、あえて説明をなくすことでホームページの概念を取っ払いたいという気持ちが強かったんです。Webを介して、ユーザーに驚きや発見を楽しんでもらいたいと思ったんです。でも、当時こういうものを作っていたことも、ちょうどその時期に自分の中にあった気持ちを表現していたというだけで、Webをずっとやり続けていきたいということではないんです。新しい技術を追っていける自信もないですしね(笑)。
プログラミングにもあまり興味はないのですか?
いや、自分にはできないからこそ、憧れがとても強いですね。ただの数字の羅列が何かを動かしたりすることを想像するとワクワクしちゃうんです。でも、自分の頭ではついていけない(笑)。プログラミングは、最初から完成図を思い描きながら、フォーマットに沿って作っていく必要があるのですが、逆に私の場合は、色々なものを後付けしながら作品を作っています。だから向いていない(笑)。プログラミングをやっている友人は、「波形を見て音楽が聴こえてくる」とか「数式からイメージが見える」というようなことを言うのですが、そういう感覚は本当に羨ましいと思います。カタチのあるものだったら、そこに込められている想いを汲み取ることができると思うのですが、数字には感情なんか一切ないじゃないですか。だから、私には数字は意味でしか捉えることができない。そこにイメージを見出せる人たちは本当にロマンチックだなと思いますね。
Webを使った試聴機「summer tracks」。
作品を通してどのようなことを表現したいと思っていますか?
自分が触れた音楽や映像、ゲームをやっている時の感覚や空気感のようなものをトレースしたいんです。最初に絵を描きたいと思ったのも音楽がきっかけなんです。高校生くらいの時に竹村延和さんの『こどもと魔法』を聴いたのですが、竹村さんの音楽からは、そこに含まれている日常や物語を感じることができたんです。ゲームをやっている時以外にそういう感覚を覚えたのは初めてだったのですが、その時にそれを絵で表現してみたいと思ったんです。だから、私にとって絵を描くことは日常の延長でしかない。絵に専念したいと思って、しばらくお金を貯めて、絵しか描かない生活をしたこともあったのですが、やってみるとあまり描けなかったんです。やっぱり日常生活のなかのちょっとした気付きや感動の連続が作品につながっているのだと思います。
今後やりたいことなどがあれば教えてください。
最近は、写実的な表現で世界観を表現したいという気持ちが強くなってきています。コラージュには思いがけない驚きはあるのですが、完全に自分の想い通りにはいかないところもあって。そこが面白いところでもあるのですが、ゼロから始める表現にも興味があります。あと、単純に手が遅いこともあるのですが、今のやり方だとなかなか作品を量産できないので、将来的には汎用性のあるグッズ的なものを作って、使う人次第でそれが何かに変わっていくような作品を作ってみたいという想いが漠然とありますね。そう言いつつも、なかなか飽きないタイプなので、コラージュを何十年もやり続けいている可能性もあるんですけどね(笑)。
「astronomy :(>:/) mapping」 at Sfera Exhibition View(2006)












