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堀畑裕之、関口真希子の2人により、05年3月に立ち上げられたブランド。堀畑は同志社大学大学院を終了後、関口は杏林大学を卒業後、ともに文化服装学院アパレルデザイン科メンズコースで学ぶ。98年に卒業後、それぞれ別々のデザイナーズブランドでレディスとメンズのパタンナーとして5年間勤める。退職後の03年共に渡英。ロンドンのデザイナー「Bora Aksu」の04-05A/Wコレクションの仕事に携わる。05年に帰国し、05-06 A/Wより「matohu」をスタート。
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(株)LEWS纏
Tel:03-5772-1484 Address:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-3-4-506 URL:www.matohu.com E-Mail:matohu@lewsten.com |
コンセプトは「日本人の美意識」。2005年のブランド立ち上げから、10シーズン目を迎える2010年までは、「慶長の美」をテーマにコレクションを展開する。奔放かつ大胆なデザインに満ちていた、慶長年間に咲き誇った日本文化にも相通じる、力強い表現力と繊細な美しさが同居した『matohu』のコレクションは、豊かな知識と確かな技術に裏打ちされた現代の洋服の集合体だ。ブランドを象徴する継続アイテム「長着(ながぎ)」は、KCI(京都服飾文化研究財団)に収蔵されている。決して妥協することなく、常に真摯な姿勢で新たな美のあり方を追求し続ける2人のデザイナー、堀畑裕之と関口真希子に話を聞いた。
Text:三浦達矢
始めに、ブランドをスタートしたきっかけを教えてください。
堀畑(以下H):文化服装学院を卒業後、5年間パタンナーとして企業に務めました。仕事はとても面白く、楽しかった。だからこそ、自分のブランドを手がければもっともっと面白いことができるのではないか、と感じたのがきっかけでしょうか。
関口(以下S):私も別の会社でパタンナーをしていましたが、同時期に会社を辞めたこともあり、「一緒に何かやりたいね」という話になって。どうせやるなら、まだ誰も試みたことのない、新しいことがやりたかった。そこで、日本人の美意識を表現する、という基本的な方向性だけを決めて、渡英したんです。ロンドンのデザイナーの元で仕事をしながら、1年という時間をかけてブランドのイメージやコンセプトを膨らませました。
H:着物を日常的に着るようになって、新鮮な驚きや発見がたくさんあった。洋服とは全く違う楽しさを覚えるようになったんです。そのエモーションというか感覚を、洋服に落とし込んだらどうなるんだろう、と感じたことが「matohu」の核となりました。元は英語を習得する必要性もあって渡英することを決めたのですが、ロンドンという全く日本とは異なる環境にいたからこそ、日本のことを客観的に見つめられて、冷静な判断が下せたのではないでしょうか。結果的にロンドン滞在が吉と出ましたね。
S:ロンドン滞在中は西洋の美術も堪能しましたが、帰国前に立寄ったパリで、東洋美術で知られるギメ美術館に行ったんです。そこに日本の美術のみを集積したコーナーがあり、それを見た瞬間に、「あ、やっぱりこれだな」っていう直観のようなものを感じて。面白い経験でしたね。
matohu 08-09 AW Collectionより。
H:日常生活の中で、目と身体が吸収しているものって強いと思うんです。例えば、ヨーロッパ人のデザイナーがゴシックをテーマにしたコレクションを作る場合、町中にある教会や建造物の建築様式だけでなく、ドアノブなんかのちょっとした身の回りのディテールにも本物のゴシックがあり、日常的にそれを体内に取り入れているから、自然にデザインとなって表れるわけです。オリジンがきっちり自分の中にあるものを表現した方が、伝えられることは深いんですね。
S:着物をファッションとして楽しむなかで、着物独特の色合わせの面白さに惹かれるようになりました。洋服を着る時と着物を着る時の感覚って使い分けていることが多い。この着物独自の感覚を、日常の衣服に落とし込みたい、そういう思いが「matohu」の根底にあります。
慶長という時代のどこに最も魅力を感じますか。
H:慶長年間とは、桃山時代後期から江戸時代初期までの20年を指します。江戸になると、抑制された美が良しとされ、制約の中でどう粋に見せるか、が競われました。一方桃山は、鎖国前なので、まだヨーロッパから面白いものがたくさん入って来ていたんですね。だから慶長年間は、どの時代よりも自由で奔放、でも洗練されていた。侘び寂びがあるかと思えば、一方には豪奢な金屏風がある。対極のものが融和している様子は、現代の日本に通ずるものがあります。
S:長い歴史の中では、20年はとても短い期間ではありますが、そのわずかな間に色濃い文化が花開いたというとてもユニークな時代で、その面白さに惹かれています。
matohu 08-09 AW Collectionより。
毎シーズンのコレクションはどのように作られていくのでしょうか?
H:いつも、もの作りをするにあたり、リサーチを徹底しています。テーマに則した文献を読み、実物に触れる旅をしています。
S:08-09AWシーズンは、「慶長小袖」がテーマだったのですが、完全に残っているものが少ないんですね。だから、現存する本物の慶長小袖の着物を見るために、京都の国立博物館にまで足を伸ばしました。
H:慶長小袖を作った職人の技術には脱帽です。そこに共鳴する感動が、コレクションを生み出す力になった気がします。実物、本物が発するエネルギーは人を圧倒しますから。毎回、実物を見て何かキーワードのようなものを感じ取るのですが、今回浮かんだ言葉は「小宇宙」。近づけば、一着の着物の中に一つの世界、小さな宇宙が存在しているのがわかる。その小宇宙を現代の服の中に表現することを目指しました。コレクションの度に勉強を重ね、知識が増えて自然と目も肥えてきています。こうして蓄積されたものは、決して消耗しない。きちんと自分の中に残るものなんです。
S:全く別のシチュエーションで、裂布で作った表装した掛け軸を見た時に、その中に慶長小袖が使われているのがわかったこともあった。同じ時代の空気は、それぞれにリンクしてるんだと思います。
H:目が成長する、だんだん“わかる”ようになるという感覚は、非常に面白い。時間を経て、始めて気付くとでも言いましょうか。ブランド名の「matohu」には、衣服を身に「纏う」という意味の他に、自分の美意識が成長するのを「待とう」という意味も込められています。今は、コレクションと共に、自分たちも成長している、という感覚があります。慶長の力を借りて、自分たちの新しい時代を築きたいですね。
matohu 08SS Collectionより。
和のエッセンスを取り入れながらも、今という時代を反映したコレクションに見事に仕上がっていますが、その秘訣は?
H:和柄をそのまま使うことを避けること、着物地を使わないこと。テーマを具体的に服に落とし込む時は、必ず「matohu」流に再解釈して作り直します。今シーズンで言えば、慶長小袖特有の刺繍の模様はブローチに形を変えて。鹿の子絞りは織りで表現。他にもプリントやジャカードなど、現代の技術を用いて自分たち独自の慶長小袖を作ることを心がけました。着物って、実は職人の素晴らしい技術や知識が詰まった宝の山なんですよ。だからその技術を使って、現代の職人さんと一緒に新しい物作りをしよう、と。この姿勢がブランドのもうひとつの柱であり、クリエーションに対するモチベーションになっています。
S:特にトレンドとリンクしているという感覚はありません。ただ、人との交流の中で、トレンドには触れているので、何かの形で自分の中に存在しているとは思います。全くかけ離れることはないけれど、基本的にトレンドとは違ったところにこのブランドは存在していると思います。
H:あとは、コンテンポラリーであることを意識していますね。今という時代に生きて、同じ空気を吸っていると、それは自然にできること。その中で自分たちが本当に美しいと思えるものを作れば、それは同時代的に美しいものとして認識されるのではないか、と。願わくば、それが次の時代にも美しいと評され、100年後にも着続けてもらえるとうれしいですね。
matohu 07-08 AW Collectionより。
最後に、今後の展望や夢をお聞かせ下さい。
H:2010年には「慶長の美」の一連のコレクションが完成を迎えます。そうしたら、展覧会という形で、今までやってきたことの集大成を多くの人たちに見て頂きたいな、と。長着を中心に、自分たちに感動とインスピレーションを与えてくれたもの、今回で言えば本物の慶長小袖を添えて、きちんと見せて行きたいですね。
S:服作りの過程で自分たちが受けた感動を、他の人たちにも伝えたい。展示会のインビテーションは、立ち上げから2010年までの「慶長の美」コレクション10シーズン分を繋げると、一つの絵巻物になるように作っています。ですから、最後のシーズンには、箱と芯をお渡しして、見続けていただいた方ご自身の手で、絵巻物を完成させていただければ、とも考えています。
H:世界各都市で展覧会を開催できれば、こんなに嬉しいことはありませんね。次シーズンは、ニューヨークでも展示会をします。ブランド・ロゴのアイコン的モチーフは、千鳥。鳥のように、国境を越えて世界中で「matohu」の洋服が着られるようになるといいですね。












