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78年大阪生まれ。映像作家。膨大な作画を軸にしたアニメーション作品を主体に、RESFESTなどの映像祭への出展、MVやTV番組のタイトル映像、3DCGなど幅広い映像を手がけている。近作には、DJ KENTARO URL:www.chokusen.com, www.myspace.com/teppeimaki E-Mail:info@chokusen.com |
書きアニメーションから3DCGまでを操るフットワークの軽さと、マッドでサイケデリックな世界観を武器に、様々なフィールドでその才能を発揮するクリエイター牧鉄兵。幼い頃から「マンガ道」を志し、「トキワ荘」時代の偉大な先人たちの「ジャンル越境感覚」を受け継ぎ、「マンガ家による映像作品」にこだわったアニメーション作品は、OMODAKA『Kokiriko bushi』やDJ KENTARO関連のミュージックビデオなどにより、国内外から大きな注目を集めている。現在、ロサンゼルスに活動拠点を移し、新たな制作環境を模索している彼にビデオチャットでインタビューを行った。
Text:原田優輝
まず現在の制作環境について教えてください。
昨年、東京からロサンゼルスに拠点を移しました。アニメーション制作の場合、ひとつの作品に数ヶ月かかることもあるのですが、それを東京のカビ臭いアパートの一室でコツコツやるのではなく、もっと私生活でも刺激が受けられる環境でやれないかと思ったんです。基本的に作業のために外出することはないし、打ち合わせもチャットで簡単にできてしまう。日本から送ったパソコン一式も3日で届いたし、こちらから送る請求書も90セントくらいですからね(笑)。
日本にいる時とあまり変わらない感覚で仕事ができているようですね。
まったく変わらないですね(笑)。自分のようにアニメーション作品を作っていると、海外の人からいろんなリアクションがあります。先日制作したOMODAKAの『Kokiriko bushi』なんかは、YouTubeで60万近いアクセスがあったり、DOTMOVという映像フェスティバルでデザイナーズリパブリックが評価してくれたり、さらに今年になってスペインの映像祭やスウェーデンの携帯電話用の映像配信の話があったり…。そういうコミュニケーションのあり方が新しいと思っていて、今回制作環境を移動したことも、ひとつの実験としてやっているところもあるのですが、実際は全然変わらなくて(笑)。
(上) 『Kokiriko bushi』OMODAKA 原画、(下)『Kokiriko bushi』OMODAKA
今のお話にもあったように牧さんの作品は、膨大な作画量によるアニメーション映像が多いと思いますが、現在の表現方法にいたるまでにはどのようないきさつがあったのでしょうか?
物心ついた時から絵を描くことがメチャクチャ好きで、今でもそうなのですが、僕は「マンガ家になりたい」としか思ったことがないんですよ。それで、高校生の頃から出版社に自分の描いた作品を投稿するようになったのですが、当時は出版社が新人を育てていくような風潮はなく、最初に絵がうまかったり、完成度の高いシナリオが求められていて、かなり商業ベースになっていた印象を受けました。あまりマンガを読んだこともないような編集者なんかと話さなければならなかったりもして…。自分が理想としていた赤塚不二夫らの時代からは大きく変わっていて、かなり葛藤しましたね。
その頃に投稿したマンガ作品は採用されたこともあったのですか?
『QUICK JAPAN』など、マンガ雑誌ではないところに拾ってもらったりはしたのですが、それだけでは生活できなかったので、パソコンを手に入れ、IllustratorやPhotoshopを使ってグラフィック・デザインもやっていました。当時は、まだ仕事としてデザインをやっていた感じでもなかったのですが、こっちの方が(マンガより)自由度があるなと思うようになりました。その頃に、僕の師匠とも言えるタナカカツキさんと出会い、彼のお手伝いをするようになったんです。
マンガの道を志していたのであれば、マンガ家のアシスタントになるという選択肢もあったと思うのですが、タナカカツキさんと一緒にやるようになった理由を教えてください。
当時のカツキさんは、『バカドリル』などのマンガを作っている傍ら、テレビ番組の宣伝映像や、個人で3DCGなどを作っていて、かなり特殊な活動をしているイメージがあって、それがカッコ良く見えたんです。僕自身、レコード会社でアルバイトをしていたくらい音楽なども大好きで、その時にはCDジャケットのデザインなどもやらせてもらっていました。だから、マンガだけをやっているところにはそんなに興味がなかったんです。昔のマンガとかを見てみても、タイトルとかがメチャクチャカッコ良く作られていて、実はそれもマンガ家自身がデザインしているという感じが好きだったんです。マンガ家なのにデザイン的な意識もあって、何でも器用にできる人というのがカッコ良く思えたんですよね。そういう意味でも、カツキさんのような稀な人に出会えたことは大きかったですね。
『Fool groove』BEAT CRUSADERS × Your song is good
その頃から映像の分野に足を踏み入れるようになったのですね。
そうですね。カツキさんに「これからは映像やぞ」と言われて、映像なんか作ったことのない僕がいきなり仕事をふられたんです(笑)。当たり前のことなんですが、自分の絵が動くってスゴく面白いじゃないですか。でも、それを作ることはスゴく大変だと思っていたし、ましてや自宅のパソコンで作れるなんて想像もしていなかった。以前にパラパラマンガみたいなものを作ったことはあったのですが、それも大変でスグにやめましたしね。でも、After Effectsなどのソフトを使えば、簡単にアニメーションが作れることを知って、「それならやらなあかんやろ」と思い、自然にハマっていきましたね。
カツキさんのところでは何名くらいのスタッフでやっていたのですか?
僕が入った時は、ちょうどカツキさんが若いスタッフを探していた時期で、僕のほかに、現在フリーで活動している大月壮と菅原そうたも入り、4名でやっていました。カツキさんがかつての「トキワ荘」を好きだったこともあり、それをイメージして、マンガ少年だった僕らを「カツキ塾」の住人としてピックアップしてくれた感じでしたね(笑)。
牧さんも『トキワブルーに憧れて』というマンガ作品をWeb上で公開されていますよね。
はい。カツキさんと一緒で、僕も「トキワ荘」の人たちが大好きだったんです。藤子不二雄のマンガに登場するラーメン好きの小池さん
『トキワブルーに憧れて』より。現在も牧氏のWebサイトで公開されている。
現在の牧さんの作風は、カツキさんのようなハッピーでカラフルな世界観とは違いますよね?
そうですね。最初の5年くらいは何も考えずに遊びながら制作していたのですが、そうしているうちに徐々に自分のスタイルのようなものが分かっていきましたね。カツキさんのようなキレイな映像を作ることには限界を感じ、もっとマッドな感じとかサイケデリックな世界観が自分の“アジ”なんだと気付くようになりました。
そのような感覚はどのように培われていったのでしょうか?
ボアダムスの影響が大きいと思いますね。宇川(直宏)さんが作ったサイケデリックなアニメーションがフラッシュバックしまくるボアダムスのPVを見た時に、「こんなPVアリなんだ!」と衝撃を受けたんです。その辺からそういう感覚に興味を持ち始めて、キャロライナー・レインボーとかノイズ系のアーティストの気持ち悪い映像なんかも見るようになって(笑)。そういうところからの影響はありますね。
アニメーションとマンガでは描かれている時の感覚は違いますか?
僕の場合は変わらないですね。とにかく描くことがメチャクチャ好きなんです。それを周りの人に見せたいという気持ちも少しはあると思うのですが、それよりも集中して描いている時が快感なんです。ペン入れをしている時も、水彩で色を付けている時も、やっているうちにどんどん気持ち良くなっていく。調子の良い時は自分の体内にある「気持ち良いボタン」だけをひたすら押しているような感じですね(笑)。
『Tasogare HIghway High』DJ KENTARO原画
ミュージックビデオなどを制作する際はどのような流れで進めていくのですか?
例えば、DJ KENTAROの『Tasogare HIghway High』を例に出すと、「主人公は彼が飼っているチャコという犬」とか「夕日のハイウェイを飛ばしている感じ」などのイメージを教えてもらい、それを自分なりに解釈をし、夕日をメインにしたバージョンや犬を主人公にしたものなど、数種類のサンプルアニメーションを作っていきました。最初の段階でサンプル映像を作り、そこが固まってからはひたすら突っ走るという流れが多いですね。
シナリオや設定の部分にはどのくらい時間をかけるのですか?
この時はスゴくかかりましたね。直接ミュージシャンとやり取りをしながら作るというのはこの時が初めてだったのですが、事前に何度も話し合いができたので、共通のイメージを導き出せたと思っています。通常は、レコード会社やプロダクションが間に入るのですが、最近はアーティストと直接やり取りできる機会が増えてきているかもしれません。やっぱりそういう仕事の方が力を発揮しやすいですよね。それに、100%の力で作れたものに対しては、その分だけリアクションも返ってくるんです。今はYouTubeなどのおかげでそういう世の中になっている気がします。「こんなに反応があるならもっと作れる!」という気持ちにもなりますね。
『Tasogare HIghway High』DJ KENTARO
作品を見てくれる人たちの反応にはどのようなものが多いですか?
YouTubeで公開している作品なんかは、世界中の人が見ているので反応も様々です。日本人だけだったらリアクションもなんとなく想像がつくのですが、海外の場合は、「このジャップは頭おかしい」という人もいれば、スゴくマジメな意見を書く人、スラングでけなすヤツまで本当に様々な反応があり、読んでいて面白いですね。
今後チャレンジしていきたい表現があれば教えてください。
手描きばかりやっていると、仕事としてはどうしても回転が遅くなるので、手で描いている時の感覚で、実写とかも作れないかなと考えるようになりました。でも、普通に(実写で)勝負したら児玉裕一さんのような人には絶対勝てないので、やはり「マンガ家が撮った映像」というものにこだわりたいと思っています。つい最近まで、カツキさんのお手伝いとして影に隠れていたのが、ここ数年は自分を100%出し切った作品で認められるようになってきて、ようやく“チケット”を頂いたという感じなんです。自分の周りの同世代のクリエイターにも、そういう人たちが多いので、それも刺激になっています。最近、なぜカツキさんが僕らのような若い人間を呼んだのかが少し分かってきた気がするんです。アニメーターってやっぱり孤独なんですよね(笑)。そのなかで何か面白いことをやろうとすると、「若手を育てる」とか「友達とコラボする」とかになってくる。これからも「いかに遊びながら、笑かし合っていけるか」という意識でやっていきたいですね。











