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東京と仙台に拠点を置く映像デザインスタジオ。主にプロモーション映像、映像インスタレーションを制作している。CM、PV、VIなどの映像デザイン、ディレクションに加え、クライアントワークでは表現しきれないオリジナリティやクリエイティビティーを、ショートフィルムやインタラクティブ映像のインスタレーションといったオリジナルワークとして発信。既存のメディアにとらわれない映像の可能性を追求している。07年には10周年を迎え、それぞれ異なる分野のクリエイターと共にアートブック『WOW10』をリリース。同年9月にはTENT LONDONにて『WOW10』のエキシビションを開催した。
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WOW
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そこには、揺るぎないポリシーとクオリティがあるにも関わらず、目にする作品の数々には、作家性と匿名性の狭間を浮遊するかのような、どこかつかみ所のない不思議な質感が漂う。今、最も注目を集めている映像プロダクションWOWが我々に投げかけるそれらの映像体験は、社内に複数の映像ユニットを抱える組織体系や、多数のクライアントワークの傍らで積極的に自主制作に取り組む独自のスタンスによって生み出されているのだろう。昨年、創設10周年を期に出版されたアートブック『WOW10』やそこから派生した様々な実験的プロジェクトにより、さらなる注目を集める彼らの屋台骨を探るべく、クリエイティブ・ディレクター於保浩介、アート・ディレクター中路琢磨、デザイナー柴田大平の3名に話を聞いた。
Text:原田優輝
まずはじめに、WOWにおける皆さんの役割について教えてください。
於保(以下O):元々自分は、広告代理店でCMなどのプランニングやディレクションをやっていたこともあり、WOWでもクリエイティブ・ディレクターとしてクライアントワークに携わっています。また、それと並行して、昨年出版した『WOW10』のような発信型プロジェクトも企画・監修するなど、WOW全体のブランディング的な部分も担っています。

クリエイティブ・ディレクター於保浩介氏
中路(以下N):僕はCGクリエイターとして、CMなどのクライアントワークを手がけつつ、JURYOKUというモーション・グラフィックスを主体にしたユニットを社内で結成し、自主制作にも取り組んでいます。

アート・ディレクター中路琢磨氏
柴田(以下S):僕はまだ入社してから1年しか経っていないので、何をやっているのかよくわかっていないなかで、いろいろやらせてもらっている感じです(笑)。大学時代に主に学んでいたのがWebやグラフィックだったこともあり、今は主にインタラクティブ・コンテンツを手がけたり、自主制作企画にも参加させてもらっています。
O:柴田は、うちのこれまでのスタッフとは違い、「映像ド真ん中」の人間ではないんです。今までは、それこそ中路のようにCGクリエイターとして映像のスキルやセンスで勝負するスタッフがほとんどだったのですが、彼は物心ついた頃からインターネットがあって、様々なメディアにニュートラルに触れてきている世代。だから、映像、Web、Flashなどの枠組みに対する抵抗がないんですよね。

デザイナー柴田大平氏
S:オリジナル作品も含め、映像だけにこだわらずに様々なプロジェクトを手がけているWOWは、インタラクティブなコンテンツに興味があった自分にとって、とても魅力的なプロダクションだったんです。
N:これまでのWOWは、僕のようにグラフィックデザインの延長でモーション・グラフィックスを作っているタイプと、ゴリゴリの3DCGを得意とするタイプに分かれていて、プログラミング系を専門としている人間はいなかったのですが、最近は柴田のような“ニュータイプ”が出てきて、「Flashできますよ」とか平気で言ってしまう(笑)。Webコンテンツやインスタレーションなどで、インタラクションを入れたいときなんかは、彼に教えてもらうこともあるし、社内の色々な要素がいい感じに混ざり合うようになってきていると思いますね。
O:映像制作に関しては、今後も従来通り内部スタッフで完結させていくつもりですが、これからの自分たちのテーマは、いかに映像以外の分野の人たちとつながっていけるかというところにあります。例えば、建築家やWebクリエイターと一緒に何かを作っていくことは、お互いにとってのメリットにもなると思うんです。

「Pattern On Wallpaper」
映像に「壁紙」という役割を与え、その壁紙がアクション(入力)によって変化していくというインタラクティブな映像作品。
確かに近年は、先日発表された「Pattern On Wallpaper」のように、複数のメディアにまたがったアプローチが増えているようですね。
O:そうですね。映像には、単純にモニターで見るだけではなく、様々な活用の仕方があると思うし、モニターひとつとっても携帯電話からカーナビまでいろいろなものがありますよね。それらのユーザーインターフェイスを僕らがやろうとしていることに用いることで、より良くできるんじゃないかなと思っているんです。(映像の)使い方も含めたデザインができれば、可能性はもっと広がるんじゃないかなと。
N:もちろん映像自体に興味がなくなったわけではないし、映像だけで成立する表現もしていきたいのですが、要はそのバランスが重要だと思うんです。
O:ビジネス的に考えれば、従来の映像表現はまだまだ重要だし、需要も圧倒的に多い。でも、何もないところに可能性を見出して、それをさらにビジネスにもつなげていこうとするなら、自分たちで種をまいて、それを育てていかないといけないんです。そういう意味でも最近のプライベートワークでは、インタラクションを備えた表現が増えてきているのだと思います。
その「種まき」は、現時点でどれほど回収されているのでしょうか?
O:一昨年に発表した「Motion Texture」では、インタラクティブ映像をインスタレーション形式で展示しました。それまでに手がけてきた自主制作のショートムービーとは違い、開かれた場で不特定多数の人たちに作品を披露するという試みだったのですが、いざ蓋を開けてみたら子供からおじいちゃんまでが喜んでくれたんです。昨年は、「テントロンドン」というエキジビションにも出品したのですが、そこでは日本以上に良い反応があって。予想以上の反応をライブで見られたことで、作品をオープンにしていくことに大きな価値を見出せるようになりましたね。

「Motion Texture」
「存在する映像」をコンセプトに、インスタレーションやDVDなどで展開されたプロジェクト。せんだいメディアテークと日本科学未来館で展示されたインスタレーションでは、人の動きなどに反応するインタラクティブ映像を会場全体に投影した。
映像を使ったインスタレーションと言うと、これまではいわゆるメディアアーティストたちが取り組んできた分野ですが、そこに映像プロダクションという立ち位置で取り組まれているところが、WOWの大きな特徴ですよね。
O:そうですね。僕自身メディアアートは嫌いじゃないし見ることも多いのですが、個人的には、少し敷居が高くて一般の人たちには取っ付きにくい作品が多いように感じていたんです。「モーションテクスチャー」も、その「敷居」を低くしたいというところからスタートしています。たとえそこに子供が入ってきたとしても、何かを体感できて、それが印象に残っていくようなシームレスな作品を作りたかったんです。
「敷居を低くする」ことが実践できるのは、普段のクライアントワークから学んでいるところが大きいからかもしれないですね。
O:それはあるかもしれませんね。言い方は悪いですが、僕らはピュアなファインアートの作家ほどストイックではないんです。自己表現として作品を発表することですべてが完結するのではなく、それに対する周りのリアクションを期待しているというか。そこから何かとつながって、また違うことができるんじゃないかという想いが常にその先にあるんです。
なるほど。また、WOWのもうひとつの特徴として、各スタッフが社内でユニットを組み、自主制作に取り組んでいることが挙げられますよね。
N:僕が携わっているJURYOKUに関しては、グラフィックが好きなスタッフが集まって、モーション・グラフィックスで自主作品を作ろうというところからスタートしています。会社からも協力を得て、仕事の時間を少し割いて、制作に取り組ませてもらったりしていたのですが、最近ではJURYOKUにクライアントワークの依頼がくるようにもなってきました。

WOWには、JURYOKUを始め、於保らが参加するディレクターユニットdollop、仙台スタッフが中心となり、インターフェイスとしての映像を研究するwowlab、鹿野護による未来派図画工作など多数のチームがあり、社内スタッフたちが常時流動的に行き来している。
O:何よりも自分たちがやりたいという意思が大切なんです。そういうスタッフには、制作の時間を少し作ってあげようとしているつもりです。
社内でそれだけ活発な行き来があると、下手をするとバラバラになりかねないような気もするのですが、集団としてまとまっていくための秘訣はありますか?
O:一応僕が全体を見渡してはいるのですが、事細かに指示することはほとんどないですね。みんなが同じ感覚をなんとなく共有しながらやっているんです。例えば、「Tenspace」という作品は、5,6人のスタッフで作ったのですが、お互いが繋がりを感じ合いながら進めていきました。何かを手本にするのではなく、みんながオープンになることで共有できるものがあるのかなと思います。

「Tenspace」
いけばなを表現した11個の立体作品を広大な空間にレイアウトし、カメラがそれらの作品をひとつずつ順番に捉えていく。それぞれの作品の狭間にある「間」を意識し、映像によって時間を表現した作品。
N:作業中の作品を見られることは、かなりイヤなものだと思うのですが、うちの場合はそういう「見せ合い」が多いんですよね(笑)。それぞれがデスクに向かって延々と作業をするだけではなく、常にフラフラしながら、忙しそうなヤツのところを覗きに行ったりすることが多い(笑)。
O:だから、各スタッフがお互いの志向をなんとなく理解しているし、あるプロジェクトのために新チームが組まれた時なんかでも、割とすぐに感覚を共有できるんです。最近は逆に、あえて普段あまり組まないようなスタッフ同士を組み合わせて、違うテイストが生まれることを期待したりしています。同じメンツで続けていけばスタイルは確立できますが、それを貫くためにやっているわけではないので、自然に変わっていける状態を常に作れるように心がけています。
現在のスタッフ数は30名程度ということですが、今後会社の規模はさらに拡大していくのでしょうか?
O:今のところは、これくらいの人数で続けていければと思っています。そのなかでできる範囲の仕事をしていきながら、それぞれの価値を高めていきたい。規模がどんどん大きくなっていくと、いつしか映画とかを作らなくてはいけなくなってしまいそうですしね(笑)。よく聞かれることなのですが、僕らは映画制作にはあまり興味がないんです。映画は、既存の映像メディアの頂点のようなものですし、もちろん憧れはありますが、自分たちがやることではないと思っています。すでにスゴい方たちがたくさんいるし、そこに労力をかけるよりは、新しいメディアや表現方法を突き詰めていきたいですね。
最後に、今後の予定を教えてください。
O:4月に開催されるミラノサローネに出品する予定です。フランス人建築家のグエナエル・ニコラと、インテリアなどを手がけるデザインチームであるトネリコが「TOKYO WONDER」という展示をするのですが、彼らが作るプロダクトをイメージ化した9Mほどの巨大映像を作ります。映像クリエイターにとって、ミラノサローネはあまり接点がないイベントだと思いますが、僕らはプロダクトやインテリアなどの環境演出に興味があるんです。また、ロンドンで開催されるGRAND DESINGSというインテリア系のイベントにも、ICONEYEの推薦で出品するかもしれません。そのほかにも、今年は海外で自分たちのエキジビションをやりたいと思っています。

「Tent London」出品作品より。



















