|
1969年東京生まれ。展覧会やアーティスト・ブック制作などの長年のキャリアを経て、2000年、リトルモアより作品集『ランジェリー・レスリング』を出版。国際的な評価を得て国内外の雑誌媒体で活躍し、近年のニューヨークとロサンゼルスでの展覧会も好評を博する。キャンバスにガッシュで描くという「オーソドックス」とはかけ離れた五木田の画法は、絵画における新しい焦点として、現代美術の文脈からも見直されている。
contact TAKA ISHII GALLERY URL:www.takaishiigallery.com E-Mail:tig@takaishiigallery.com |
膨大なモノクロ・ドローイング約300点が収録された作品集『ランジェリー・レスリング』(00年 / リトルモア)と、その出版を記念してパルコギャラリーで開催された展覧会により、一躍各界の注目を集める存在となった五木田智央。音楽、マンガ、そしてプロレス(!)など、自身の志向がダイレクトに反映されたモチーフ、紙と鉛筆というミニマルなツールで、思うがままに量産されるラフなスタイル、レコードジャケット、雑誌、Tシャツなど様々なメディアをキャンバスにしたアートワーク展開など、その活動からサブカルチャーを体現するクリエイターという印象が強かった彼が、新作ペインティングとドローイング作品を織り交ぜた個展をタカ・イシイギャラリーで開催するという。本格的なファインアートのギャラリーでは、国内初となるこの展示で、彼はどのような作品を見せてくれるのだろうか? 個展を直前に控え、制作に励んでいる彼を取材すべく、調布にあるアトリエを訪ねた。
Text:原田優輝
まず始めに、最近の主な活動について教えてください。
最近は海外の展覧会やアートフェアに参加することが多いです。数年前に全然知らないニューヨークのアーティストから突然『俺がキュレーションするグループ展に参加しないか?』というメールが来てからガラッと状況が変わりました。図らずもそのグループ展の作品がやたら評判良くて、ニューヨークのいくつかのギャラリーから「うちでやらないか?」というお誘いを受けちゃったりしたわけです。それまでは「ファインアート」や「イラストレーション」という枠組みをあまり意識していなかったのですが、その頃を境に突然状況が変わっていきましたね。
ファインアートの世界に進出するようになってから、ご自身の中でも心境の変化はありましたか?
ガキの頃から、心のどこかに「アートの世界で勝負してみたい」という気持ちは何となくはあったので、そこまで大きくは変わりません。でも、若い頃はギャラリーの数も少なかったし、何をどうしたらいいかも全然分かんねえわけですよ。その頃はイラストの仕事だけではなく、グラフィックデザインもやってたんですが、やはりガチンコでイラストレーターとしてやっていくとなると、当然クライアントの要望に応えなくてはいけないし、難しい部分もありましたね。その辺はホント苦悩しました。

Frieze Art Fair 2007 Installation View
Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery
やはりこれまでの五木田さんの活動は、いわゆるファインアートの文脈とは違うところで評価されることが多かったですよね。
だから、これからは色々言われるかもしれないですね(笑)。「五木田さんってTシャツとかやってるサブカルの人でしょ?」みたいに思われているところがまだありますから(笑)。実際、Tシャツのデザインはスゲエたくさんやってますからね。いまだに好きですよ、Tシャツをデザインするのは。ま、どう思われてもいいんですよ、ハッキリ言って。
その点、海外では五木田さんのバックグラウンドがあまり知られていない分、純粋に絵に対する評価を得ることができたのかもしれないですね。
それはあるかもしれないですね。最近はなぜか海外の方がウケが良いし、反応の早さも感じます。ご存知のように日本はアートとイラストレーションの境界が曖昧なところがあるので、逆に評価が定まりにくい人も多いと思いますが、自分の場合は海外での発表が続いたこともあって、幸運にも割とスムーズにシフトチェンジできたと感じてます。


『ランジェリー・レスリング』(2000年 / リトルモア)より。
タカ・イシイギャラリーでの個展開催に至った経緯を教えてください。
石井さんから突然電話がかかってきたんですよ。後日僕のアトリエで初めてお会いして、その場で「うちでやりませんか?」と(笑)。エリック・パーカーというのアーティストの推薦もあったようですが、とにかくそんな感じで唐突だったんです。僕はなぜかいつも唐突に状況が変わるんですよ(笑)。
今回はキャンバス作品が中心になるようですが、最終的には何点くらい展示される予定なのですか?
それがまだわかんないんですよ(笑)。とりあえず描けるだけ描いてみて、会場で展示しながら(何点出すかを)決めていこうと思ってます。キャンバス作品のほかに、今ここ(アトリエ)にある小さな手作りの額縁に入った膨大な数のドローイングを、ひとつのまとまった作品として展示する予定です。これは2年程前から描き始めていて、サイズもバラバラなのですが、今も増え続けています。

確かにスゴい数ですね! マッチ箱くらいの極小サイズもありますね(笑)。ひとつひとつのクオリティの高さはもちろんなのですが、五木田さんの場合は、とにかく数を量産していくというスタイルも特徴的ですよね。
基本的には何も考えてないんですけど、なぜだか「なんか足りない」って思っちゃうんですよ。だからどんどん増えてくという(笑)。デカいキャンバスに向かうと、どうしても身構えて絵が堅くなっちゃうことが多々あるんですね。「失敗しないように」とか思っちゃうわけです。キャンバスも高いしね(笑)。でも、このドローイングシリーズは、紙に鉛筆というのが基本なので、実に気楽にジャンジャン描ける。はじめは増やしていく予定はなかったんですが、やっていくうちにだんだん面白くなってきて、今はもう600点以上あるんじゃないかなぁ。額縁もすべて手作りなんですが、むしろ額縁作りの方が大変です(笑)。
膨大な数の作品を集積させることで、総体としての何かが立ち上がってくるというか、とにかく圧倒されるというか…。
この作品に関しては、そういうものだと思ってます。少し離れて見てみると、描いてあるものなんてどうでもよくなるというか、全体でひとつの抽象画のようにも見えてくるのが面白くて、増殖しまくってしまいました(笑)。ただ、こういう作品は「がんばってたくさん描きましたね」で終わってしまう場合もあるので、微妙ですけどね。とにかく会場で展示してみるまでは、自分でもどうなるのか分からない作品です。


一方でペインティング作品の方は、これまで描かれてきたドローイング作品とは異なりますね。
そうですね。ドローイングでよく描いてた写実的なポートレートなどを、デカいキャンバスに描いてもあまり面白くなかったんですよ。こういうタッチが生まれたのもまったくの偶然なんです。最近のペインティング作品では、乾きが速い画材を使っているんですけど、(乾きが)速すぎてなかなか上手く描けなくてヤケクソになって適当に絵の具で遊んでいたら、偶然絶妙なグラデーションができて、その感じに「ビビッ!」ッと来たんです。ただ、基本的に飽きっぽい性格なので、正直このスタイルにも少し飽きてきてます(笑)。
五木田さんにとって「絵を描く」ということはどういう行為なのですか?
とにかく、ただ絵を描くことが好きなんですよ。それは小さい頃からずっと変わらないです。物心ついた頃から手を動かして何かを描いたり作ったりしてました。今でも何も考えずに即興から始まることがほとんどです。完成図が見えないままに、「消しては描いて」の繰り返しです。未だに自分でも何を描いているかが上手く説明できない…(笑)。
最後に、まもなくスタートする個展に向けて、意気込みを聞かせてください。
言い訳がましいんですけど、最近はいつも時間が少ないなかでギリギリで作っていて、後で作品を見返した時に「ダメだ。全然ダメだ!最低だ!」って後悔することばっかりで(笑)。で、まあ今回は久々の国内での展示なので、「そうならんように納得するまでやってやるぞ馬鹿野郎!」という気持ちです。あと、日本でこういった作品を発表するのは、ほとんど初めてと言ってもいいくらいなので、どういう反応があるかはとても楽しみです!
INFORMATION
『五木田智央展』は、4月1日〜26日までタカ・イシイギャラリーで開催予定。



















五木田智央による初のリミテッド・エディション・プリンツをリリースしました。