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共にRCAで学んだアストリッド・クラインとマーク・ダイサムにより、91年に設立された建築、インテリア、パブリックスペース、インスタレーションなどをマルチにこなすデザインオフィス。主な受賞作品は03年Business Week/Architectural Record Award(ビーコンコミュニケーション)、JCDデザイン優秀賞(ブルームバーグICE)、奨励賞(ORIHICA表参道)、04年I.D. Annual Design Review環境部門最優秀賞(ぐんぐんウォール2004)、05年英国D&AD Awards環境・建築部門(リーフチャペル)、06年米国I.D. Annual Design Review2006環境部門奨励賞(かんばんビル)などがある。
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アストリッド・クラインとマーク・ダイサムにより、90年に設立されたクライン・ダイサム・アーキテクツ。以来、独自のユーモア感覚と、メディアを横断する柔軟な発想で、斬新な建築デザインを世に送り出し続けてきた。さらに、彼らが発案者である「ぺちゃくちゃないと」は、いまや国内外の100を超える都市で開催されるなど、世界中のクリエイティブシーンに影響を与えるイベントにまで成長している。近年も、ボーリング場をオフィスに替えてしまったTBWAのプロジェクトなど、ワクワクするような話題を提供し続けてくれているクライン・ダイサム・アーキテクツの2人に話を聞いた。
Text:原田優輝
まず始めに、クライン・ダイサム・アーキテクツが結成されるまでの経緯を教えてください。
アストリッド・クライン(以下A):もともと家族にアーティストが多かったこともあり、私も彫刻やインスタレーションに興味がありました。子供の頃から、母と一緒にクローゼットやベッドなどを自分たちで作ったりしていました。そのうちにインテリアだけではなく、トータルでデザインを考えたいと思うようになっていきました。ただ、建築の専門学校ではなく、アートがベースにある学校に行きたかったので、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの建築・インテリア科に入ったのです。マークもそこの学生でした。
マーク・ダイサム(以下M):私も若い時から模型などが好きで、自分でもそういうものを作りたかったのですね。何かを表現する方法は、本を書いたり、音楽を作ったり、色々あると思うのですが、私は何かを建てたり、空間を作ることに一番興味がありました。建築は、人間が作れる一番大きなもののひとつですからね。それに建築の場合、フィードバックがダイレクトに伝わってくるのがいいんですよね。ソサエティに対して、何か良いものやポジティブなものを作っていきたいという想いがありますね。

R3 ukishima/Aicafe54
Photo: 阿野太一
日本を活動の拠点に選ばれた理由は?
A:私たちが学生の頃、日本はちょうどバブルの時期でした。当時、色々な建築雑誌に、日本の建築が載っていたのですが、大げさな建物ばっかりで(笑)。「これCGじゃないの? スゴい!」なんて言いながらそれを見ていて、いつか日本に行ってみたいと思っていたのです。私の出身はイタリアなのですが、ヨーロッパの街は、色々制限がかけられていて、建築に対して保守的な部分があるので、少し退屈でした。それで、日本に行くためにお金を貯めて、スクーラーシップ制度で(日本に行く)機会も得ることができたのです。すでにその時から、もし日本を気に入ることができたら、仕事も日本でやってみたいという気持ちもどこかにありましたね(笑)。
実際に日本に来てみて、どのように感じましたか?
A:やっぱり好きでしたね。自分たちの環境とまったく違うことが新鮮でしたし、信じられないようなことがたくさん起こって、まるで子供に戻ったような感覚になりました。それで、なんとか日本で仕事をする方法を考えたのですが、ラッキーなことにふたりとも伊東豊雄建築設計事務所に入ることができたのです。
その後独立されてからは、生意気やDJ QUIETSTORMなどと一緒に合同事務所「DELUXE」を設立されるなど、常に建築という分野に捉われない活動をされてきていますよね。
A:そうですね。私たちが一番大切にしていることは、いかに自分らしくハッピーになれるか、ということです。それは建築という分野に関係なく、とてもベーシックなキーワードで、それを目指すために、オープンマインドにあれこれやっています(笑)。そうすると、子供みたいにビックリできるような奇跡やハピネスが起こるんです。そういうサプライズ・ファクターのために可能性を作っていく。私たちが「ぺちゃくちゃないと」をやっているのも、そのためなのだと思います。

「ぺちゃくちゃないと」は、すでに世界各国に広がっているようですが、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?
A:自分たちの仕事が忙しくなるにつれて、友達や自分に近い人たちになかなか会えなくなってきて、あまり情報交換ができなくなってしまいました。そこで、お互いの近況などを話し合える場として、「ぺちゃくちゃないと」を始めることにしたのですが、そこからネットワークがどんどん広がって、知らない人同士の間にもコミュニケーションが生まれるようになって。「ぺちゃくちゃないと」で大切なポイントは、「ライヴ」であることです。自分が伝えたことに直接反応が返ってくるというとても単純なことが、今の世の中ではどんどん難しくなってきているじゃないですか。
M:MySpaceやMixi、Second Lifeなどがブームになっているけど、「本当にそれが“ソーシャル”・ネットワークなのかな?」って感じます。
A:「それで本当にハッピーなのかな?」って。でも、ライヴにすると、その人がどういう表情やジェスチャーで話をしているのかとか、その場がどういう空気なのかということまで伝わりますよね。
M:プレスリリースなどはまったく出していないのに、Webを通じて、トロントやバンクーバー、ムンバイなどから、こっちでもやりたいという連絡をもらいます。それが本当のソーシャル・ネットワークだと思うのです。「ぺちゃくちゃないと」をデザインのソーシャル・ネットワ—クにしていきたいですね。
A:作品を作っても、ギャラリーを借りるお金がなかったり、雑誌に出ることができない人たちがいますよね。でも、彼らは伝えたいものをいっぱい持っている。それに、作品がなかったとしても、単純な情報交換をしたり、マイブームについて話をすることはみんなできると思います。そういうものを交換するフォーラムみたいものが今までなかったので、世界中のみんながやりたいと手を挙げていて、大変なことになっているんです(笑)。それが、自分たちの仕事にも面白いカタチで反映されることがあるし、とてもハッピーです。それはスゴく大切なことなんじゃないかな。

最近の代表的なお仕事のひとつである「TBWA」のプロジェクトについて教えてください。
A:ボーリング場という設定から、「アッ!」っていう感じですよね(笑)。私たちはどんなプロジェクトでも、それを見た人が笑顔になったり、感動したりして、家に帰っても話題にできるようなものが作れたら良いなと思っているんですね。長い間、建築家は難しい言葉を“先生らしく”(笑)、たくさん使ってきましたが、どうしてもそのすばらしさってわかりにくいですよね。だから、私たちは誰でもパッと見てすぐに理解できるものを提供していきたいと思っています。
M:このプロジェクトのおもしろいところは、下町の古いボーリング場に博報堂が入っているということです。今でも、このオフィスを訪れた人は、「ホントにココですか?」って聞くことがあるみたいです(笑)。建物自体が古くて安いものだったので、六本木ヒルズや東京ミッドタウンエリアでは実現できないフリースペースを得ることができたことも大きかったですね。若いデザイナーは、デザインのことだけを考えがちですが、もちろん大事なことではあるけれど、それは全体の25%くらいだと思います。もっと大切なことは、建物を探したり、ビジネスケースを考えたりしながら、全体のイメージを作っていくことです。
A:TBWA\HAKUHODO は、アディダスやアップルなどの世界的な企業の広告を作っているのですが、彼らのコンセプトは「DISRUPTION (=破壊)」なんですね。ワンパターンで物事を考えるのではなく、枠から飛び出して、いろいろな可能性を模索する姿勢を大切にしていることもあって、このボーリング場というロケーションになりました。窓がなかったり、騒音が大きかったり、ネガティブな要素はいろいろあったのですが、どんな不便なことでも、ひとつずつクリアしていくというプロセス自体が、彼らのコンセプトにもとても合うと思いました。

TBWA HAKUHODO (2006)
Photo: 高山幸三
内装のアイデアはどのように生まれたのですか?
A:「事務所に行くよりも公園に行きたい!」という考え方からスタートして、ボーリング場の中にデッキウォークを作り、セルフサービスのカフェを入れて、植物も置いたりして、小さな村を作っていきました。また、300人以上のスタッフがいるので、それぞれが“マイコーナー”を作れるような空間作りを意識しました。ミーティングルームもシェルターのようにしたのですが、その上には山を作り、リラックスしてランチや昼寝をしたり、ブレインストーミングなどができるようにしています。ここで働いているスタッフは、クリエイティヴな仕事をしている人たちですよね。いつ良いアイデアが生まれるかはわからないし、机に座ってばかりいても良くないだろうと(笑)。
M:機会やシチュエーションを作ってあげると、そこから面白いものが生まれてくると思います。自分たちはその場所を提供するけど、一番大切なのはその中身。TBWA\HAKUHODO もそうだし、SUPER DELUXEや「ぺちゃくちゃないと」も同じです。最初のアイデアを渡して、「あとはご自由に」って(笑)。
A:自分のためにも機会はどんどん作っていきたい。こういう仕事がしたいとか、この人と一緒に何かしたいとかイメージしながら、環境やライフスタイルを作っていくことが大切だと思います。事務所にこもっていると、アウトプットばかりになって、自分の中のデータバンクが空っぽになってしまう。だから、いろいろな体験がしたいのです。そういう体験をたくさんしていると、ある時、自分のデータバンクからその思い出が取り出されて、何かとコネクトしていくんですよね。特にクリエイティブなものを作っていくためには必要なことだと思います。週末はただ寝るだけなんて、つまらないですからね(笑)。

Uniqlo Ginza (2005)
Photo: Nakasa & Partners
プロジェクトを進めていくにあたって、おふたりの役割分担はありますか?
A:あまりないですね。ふたりだけではなく、事務所全員でやっているので、それぞれが得意なところを上手く組み合わせながら進めています。アイデアを出すところから全員のフィーリングを確かめ合って、そのプロジェクトには何が一番良いのかということを一緒に考えていくなかで、面白いものが生まれていきます。ちょっとゲームみたい感覚ですね。
スタッフとの関係性はどのようなものなのですか?
A:今は私にも子供が生まれたりして、優先順位も変わってきている部分はありますが、やっぱりいつまでも事務所のスタッフとは「家族」の関係でいられることが大切だと思っています。私たちの仕事は、マニュアル通りにできるものではないし、関係が良くないと絶対にうまくいかない。そのなかでお互いをぶつけ合ったり、戦うことももちろんあります。これからもそういう関係が保てるような事務所のサイズでやっていきたいですね。

Kayac (2007)
Photo: 阿野太一
スタッフだけではなく、クライアントと「戦う」こともありますよね?
A:そうですね。「戦う」と言うとハードな表現になってしまいますが、お客様も誰でも良いわけではなく、正直なディスカッションができないと難しいですよね。私たちは、レシピ通りにワンパターンで何かを作っていくことはしません。何が出てくるかはわからないけど、常に新しいモノにチャレンジしていきたい。でも、それはリスクを伴うことなので、それをお客様と分かち合えたら良いなと思っています。完成するまでのプロセスを一緒に乗り越えていきたいですね。そのためには、お互いに正直でいることが大切。特に、個人住宅を依頼されるお客様は、最初で最後のチャンスなので、とても神経質になっている方が多いのですが(笑)、その人らしさをどうやって出していけるかを話し合いながら、一緒に旅をしている感覚でやっています。
最後に、今後の予定を教えてください。
ニセコに「キラキラ」と「コナコナ」という2つのアパートメントホテルを作ります。「キラキラ」は今年4月に着工し、12月に完成予定。「コナコナ」は再来年です。それ以外には個人住宅を3つ作っています。ひとつは下田の方なので、今から夏が楽しみですね(笑)。





















