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1976年生まれ.東京藝術大学美術学部デザイン科大学院修了。在学中からMVやCM等のアニメーションを制作し,大学院修了後も,MV,CMをはじめとする様々な映像作品を制作。映像ディレクションのほか,作画から美術制作,編集までをトータルに行う.CDジャケットのグラフィックや『VOGUE』『流行通信』等のアートディレクション,niDoの浴衣,テキスタイルデザインなども手掛ける.2004年onedotzero,エジンバラ国際映画祭,RESFESTJapanTour作品 招待,2005年Vila do Conde(ポルトガル映画祭)、SICAF(韓国アニメーションフェ スティバル)作品出展,2006年Anifest(チ ェコアニメーションフェスティバル(,エジ ンバラ国際映画祭作品出展,RESFEST Japan Tour作品招待,文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門/映像審査員推薦作品,2007年ロンドン/ヴィクトリア&アルバート美術館企画展にて作品上映。 現在フリーのディレクターとして活動中。 contact P.I.C.S.management Tel:03-5785-1780 Fax:03-5785-1784 Address:東京都港区六本木5-2-1 ほうらいやビル401 URL:www.natsukikida.jp,www.picsco.net E-Mail:post@picsco.net |
豊かなイマジネーションにより創造された“もうひとつの世界”に息づく想像上のクリーチャーたち—。GLAY、中島美嘉、資生堂マジョリカマジョルカなど数多くの作品で知られる喜田夏記の映像には、見る者をどこの国ともいつの時代とも分からぬアナザーワールドへと誘う不思議な魔力がある。近作では、従来のアニメーションをベースにしつつ、実写の要素も取り入れた新たなアプローチにもチャレンジし、さらにCDジャケットやファッション誌のアートディレクション、そしてテキスタイルデザインにいたるまで、精力的に活動の場を広げている彼女に話を聞いた。
Text:原田優輝
まず始めに、映像制作を始めたきっかけを教えてください。
父が建築家で、祖父と母は日本画家だったため、子供の頃から芸術に多く触れられる環境で育ったんです。その影響で、美大のデザイン学科に進み、さらには兄の影響で私も映画狂だったので、大学3年の時にニューヨーク大学のフィルムスクールに短期留学することになり、そこで初めて短編の映像を作ったのがきっかけです。
それはどのような作品だったのですか?
ロケハン中のブルックリンで強烈に印象に残ったロケーションがあったんです。様々な赤い素材がびっしりと貼られて作られた、真っ赤な巨大な壁。そこからインスピレーションを得て、「壁を作る男」というテーマで、俳優さんにその壁の前で狂った様に板を打ち付け続ける男を演じてもらい、それを撮影しました。その後、大学に戻ってきてからは、手を動かしてモノを作ることを大切にしていきたかったので、自分で絵を描いたり、立体物を作ったりして、それらの素材を繋げてアニメーションを作っていましたね。当時は学校に映像学科のようなものはなかったので、自分で資料や機材を探して、実験しながら学んでいきました。

short film(original)「Untitled」
映像表現のどんな部分に魅力を感じたのですか?
それまではずっと絵画を描いていたので、(映像が)時間軸に沿って表現できるということは大きかったですね。自分の手で作ったものを、時間という要素を使いながら見せていくという方法を追求していった結果、アニメーションに向かっていったのだと思います。
自分が頭のなかに思い描く世界観を100%再現できることもアニメーションの面白さですよね。
確かに、現実にはありえないようなクリーチャーを作ることもできるし、想像上の空間を実現できるところは大きな魅力です。ただ最近はずっと、その想像の世界に、実写による人間を共存させる表現法を追求しています。もちろんアニメーションは、人間のリアルな動き以上にリアリティを感じさせる力がありますが、やはり人間の存在があった方がより感情移入しやすいというのも事実だと思う。さらに、平面空間としての絵画と多元空間としての実写が融合することで、奥行きがあるようでないような微妙な距離感も出てパラドキシカルな空間が出来るし、独特の空気や時間も生まれるんです。

勝手にしやがれ feat.オダギリジョー「cherry the dustman」(Epic Records Japan)
Dir.+Art+Animation+Dustman Design
勝手にしやがれとオダギリジョーさんのコラボレーションによる『CHERRY THE DUSTMAN』のミュージックビデオなどがそうですよね。実写の場合、演出面のスキルも必要になってきますよね。
そうですね。元々、勝手にしやがれの武藤さんが書いた歌詞があったので、ストーリーは結構固まっていたのですが、オダギリさんは役者として演技をされている方なので、かなり細かいキャラクター設定の下に演出をしていく必要がありました。また、ストーリーに基づいて、実際にセットを作ったり、背景の絵を描いたりしながらヴィジュアル化していったので、ショートフィルムを作っているような感覚でしたね。フルアニメーションの場合、ゼロから自分の世界を表現していくことに尽きていたような気がするのですが、そこに実写の要素が入ってくることで、化学反応が起きたような作品になりました。人が演じてくれることの面白さを痛感した仕事でしたね。
ミュージックビデオを制作する際のプロセスについて教えてください。
その楽曲を聴いた時のファーストインプレッションを、最後まで持ち続けるように意識しています。ファーストインプレッションから浮かんだ一枚の絵をもとにスタートすることが多いです。映画のルーツは絵画だと言われているように、まずキービジュアルを描き、そこから時間軸を作っていくんです。

GLAY「夏音」(EMI Music Japan)
Dir.+Art+Animation
非常に作家性が強い喜田さんの映像世界と、ミュージシャンが作る楽曲の世界観をどのように一致させていくのですか?
ミュージックビデオの場合は、自主制作とは違うので、自分が創る世界だけを100%出して完結させるようなことはありません。基本は楽曲の世界に当てはまるものを作りつつ、そのなかで自分の新しい引き出しを毎回出すように意識しています。ただ、しつこい程の自分のテイストというものがあると思うので、最終的には鬱陶しいくらいそれが出てしまっていると思いますけどね(笑)。
ミュージシャンとやり取りしながら制作していくことは、ミュージックビデオ制作のひとつの醍醐味ですよね。
確かにそうですね。まず、音楽を作る作家さんがいて、そこにすでにひとつの表現があるわけですよね。その世界にさらに私の表現も重ねて、最終的に相手の表現と一致させていくという行程は、クリエイター同士の本当の意味でのコラボレーションになっているような気がします。相手が作ったものに感動して、それをさらにビジュアル化することで、それを見た人たちがまた何かを感じるという循環が生まれると良いですよね。
アニメーションがメインとなる喜田さんの作品は、作業量も毎回相当なものになりそうですね。
そうですね(笑)。最近やったミュージックビデオのなかでは、GLAYの『夏音』が作業量としては一番多かったですね。現在は、大学時代の先輩や後輩、祖父や母と同じく画家で、今まで様々な作品で一緒に仕事をしてきた兄など、長年、喜田作品に携わってくれている人たちをメインスタッフとして制作しています。CGを使う場合もありますが、この時はすべてアナログな手法で制作したので、作画量がハンパじゃなかった。元々TAKUROさんの歌詞にストーリー性があったのですが、オリジナルでデザインしたキャラクターも結構ありましたからね。

GLAY「夏音」MV キャラクターdesign / 原画
オリジナルキャラクターも多数制作されていると思いますが、どのように想像を膨らませていくのでしょうか?
普段から自分の頭の中に(キャラクター)が住んでいるんでしょうね(笑)。その中から、毎回いくつかのキャラを選んで、大まかなシルエットを元に細部を描いていく感じです。ただ、動きは説得力のあるものにしたいと思っているので、その辺のリサーチはしっかりしています。スタッフはしょっちゅう動物園に取材に行きますし、動物の資料は山のようにあります。例えば、姿形のディテールは想像で描いても、羽根の動きだけは超リアルにしたりとか。動物などは、その姿が幻想的なものに変わっていたとしても、観る人は自然な動きをを求めると思うんですよね。架空のキャラクターが形になっていくときが一番楽しい瞬間かもしれません。
動植物や昆虫などが登場することも多いですよね。
有機的なモチーフの方が、アニメーションで動くと面白いし、幻想的なものへと創造していきやすいというのはあるかもしれません。でも、最初に自分が興味を持ったものは、古い壁や錆びた金属、寂れた工場など、もっと無機的なものだったんです。その頃は、人間そのもののカタチよりも、人間との交わりを感じさせるものに夢中になっていたんだと思います。その場所に流れていた時間や、通り過ぎていった人々を感じさせるテクスチャから、生命を想起させられるような間接的なアプローチというか。最初に話したブルックリンの壁もまさにそういうものだったんです。

そうした「テクスチャ」というのは、喜田さんの映像のなかでも表現されているような気がします。
そうですね。絵肌にはかなりこだわりがあって、映像に被せるフィルターも、作品ごとにテクスチャを変えながら、ダークなものから艶やかなものまで、すべて自分で作っています。
実際に撮影で使う小道具などもご自身で作られることが多いそうですね。
最近だと、資生堂マジョリカマジョルカのWebサイト用の映像のために、飛び出す絵本をゼロから作りました。まず絵本を作り、実物をコマ取りして動画にしたので、大変な作業だったのですが、小道具をしっかり作って撮影するのと、PC上だけで作るアニメーションとでは、重厚感が全然変わってくるんですよね。


資生堂マジョリカマジョルカchapter16/飛び出す絵本 popup_book
やはり喜田さんにとって、自身の手を動かすということが制作において重要な意味を持っているのですね。
そうですね。どんどんツールは便利になっていて、それも制作上なくてはならないものなので、もちろん取り入れていますが、やはり自分の原点は手を動かしながら考えていくところなので、その作業はこれからも大切にしていきたいですね。
最後に今後の予定を教えてください。
先ほど話したミュージックビデオでのオダギリジョーさんとの出会いがきっかけで、彼が制作する映画のアニメーションシーンを担当することになり、作画やデザイン作業を進めています。3月中旬完成予定のCMの制作も進行しています。自身の短編作も作っているので、今年こそは、ショートフィルムを一本完成させたいと思っています。

勝手にしやがれfeat.中島美嘉「YOU’D BE SO NICE TO COME HOME TO」(Epic Records Japan) Dir.+Art






























