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静岡県出身。切り絵作家として幅広く活動。切り絵という作風ながら、描写のきめ細やかさが話題になり、話題沸騰。プロダクトとして初の試みとなったReebokとのコラボレーションスニーカーや、中島美嘉のCDジャケット、ステージ装飾、東京コレクシェン参加ブランドとのコラボレーション、オリジナル映像制作、広告、ポスターなど、型にとらわれない活動を展開し、新たな切り絵業界の継承者との呼び声も高い。主な受賞歴は、JACA日本ビジュアルアート展特別賞。
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描き下ろすのではなく、切り下ろす。残された断片と切り落とされた空隙が織りなす、日本独自の表現手法=“切り絵”。しかしそのイメージは、民話絵本の挿画のような、工芸的な停滞感に満ちていた…。—彼女の存在を知るまでは。鋭く鮮やかに交錯する線のひとつひとつが、同時代的な躍動感に満ちている。驚異的なまでの細密さと、大胆なまでにグラフィカルな構図。しかもそのフィールドは、CDジャケットに、スニーカー、バッグ、そして映像にまで広がってゆく。切り絵という手法に革新をもたらし、現代アートへと昇華した唯一無二のアーティスト、福井利佐。自らの来歴とヴィジョンについて語ったインタビューをお届けする。
Text:深沢慶太
作品集『KI RI GA』(情報センター出版局)を11月半ばに刊行されましたね。
これまでの作品をまんべんなく収録した、初めての画集です。表紙は日本の国旗をイメージした朱赤と、人の顔の一部が鳥と融合している感じを構図に組み込んで、いわゆる伝統的な“切り絵”とは違う表現を象徴的に表してみました。
ニューヨークで開催された『HOW TO COOK DOCOMODAKE?』展への参加も記憶に新しいです。
『HOW TO COOK DOCOMODAKE?』展では、ドコモダケ一家の携帯ストラップを女子高生がたくさん付けている様子をブドウに見立てて表現しました。こういう少しファンシーなキャラクターをモチーフにしたのは初めてかもしれません。あと、最近の活動では、『週刊文春』で、今年の夏にスタートした桐野夏生さんの連載小説の挿画を手掛けています。毎回、原稿を読んで2作品を制作しているのですが、読者の方がページを開いた時にストーリーが一目で伝わるような作品を心掛けています。毎週のことなので大変ですが、これまでにない経験で、楽しんで作っています。


ニューヨークで開催された『HOW TO COOK DOCOMODAKE?』展のための作品(上/部分写真)と、『週刊文春』での桐野夏生氏の連載小説のための挿絵作品(下)。
(C)risa fukui/phil
“切り絵”という手法だけでなく、“クリエイティブな女性の在り方”という側面でも注目を集めていますが、雑誌のリニューアル広告にも登場されていましたね。
『FRaU』のリニューアルの時のポスターですね。あれは作品ではなく、私自身を撮影して頂きました。最近でも、各界で活躍している女性100人を紹介した『天職ガールズ』(祥伝社)にも取り上げて頂いています。確かに女性の方からの反響は大きいかもしれない…、といっても、自分自身ではよくわからないんですけれども(笑)。
そもそも切り絵を表現手法に選んだきっかけはなんだったのでしょうか。
小学校に入る前は藤城清治さん、小学校に入ってからは滝平二郎さんが切り絵を手掛けた『モチモチの木』などの作品が好きだったのですが、具体的に切り絵を制作した体験としては、中学校に入ってから「切り絵クラブ」に入ったのが最初です。顧問の先生が切り絵の基本的な手法を教えてくれて、それがとても楽しかった。中学2年になって、静岡市の文集の表紙をやってみないかという話になり、それがとても満足のいく体験になったんです。

それをきっかけに切り絵にのめり込んでいったのですか?
いえ、その後はいったん切り絵からは遠ざかっていて、美術大学のグラフィックデザイン科で自分の表現を模索していくうちに、大学2、3年で再び切り絵に立ち戻りました。課題はすべて切り絵で提出して、卒業制作も切り絵で発表しました。人の顔を12作品のシリーズで表現したのですが、線をどこまで切り絵で表現できるか、どこまでリアリティを表現できるか、ということを考えて作りました。その卒業制作が公募展で受賞したんです。それまでは作家としてやっていけるとはまだ思っていなかったので、手応えを感じましたね。大学を卒業してからはアルバイトの傍ら制作を続けて、バイト先の日本料理屋に作品を置いてもらったりしていました。メディアへの露出が増えたのはそれから2年くらい経って、アメリカ在住のイラストレーター、田辺ヒロシさんとコラボレーションした時からですね。

(C)risa fukui/phil
切り絵は誌面や画面で見るよりも、やはり実物の質感が圧倒的だと思うのですが、驚いたのは作品の裏側、色紙を切り分けて貼っている部分の色彩感覚です。グラフィックデザイン的な感覚を感じました。
グラフィックデザイン科で色彩構成についても学んだので、その感覚が影響しているのは確かかもしれませんね。先に台紙の部分を切ってから、そこに色を一つ置いてみると、周りの色がぱっと頭の中に浮かんでくるんです。あとは、構図の中で全部を細かく切ってしまうのではなく、どこかに平面を残した抜けの部分があった方が気持ちいいと思うので、常にそのバランスは考えていますね。大学生の頃は、切り絵と言われて思い浮かぶような、民芸的な固定観念を取り払いたいという気持ちもあり、グラフィックとして切り絵を捉えていましたが、前例がないだけに、自分としても迷いがありました。ただ、今となっては固定観念を変えるという意識はあまりなくて、これが自然な自分の表現なんだと感じています。
作品集に収録された作品を見ていても、これまで作風にブレがないことに驚かされます。
実は、…中学生の時からずっとブレていないんです(笑)。作品集にも中学生の時の文集の表紙を掲載していますが、その時からすでに、トウモロコシのヒゲなど細かい部分を切っていく作業に楽しみを見出していました(笑)。ただ、高校時代も運動部だったので、美術教育の中で揉まれたり、自己表現に息詰まることなく、切り絵に対する楽しい印象を持ったままこうして今に至っていることは幸せだな、と思います。

単純に“絵”としてだけではなく、リーボックのスニーカーをキャンバスにしたり、ファッションブランドとのコラボレーションなどにも柔軟に対応されていますね。
そういうチャンスに恵まれている、ということだと思います。リーボックのスニーカーは、一足一足を鯉に見立てて原画を制作しました。確かに、立体的に絵柄が回り込むところが面白かったりしますね。他には、ファッションブランド『ALMOND』でメンズの下着用に切り絵を提供したり、三菱自動車の『i』のために切りおろしたり、最近で『spring』の企画で、マルタン・マルジェラのバッグをキャンバスに作品を制作しましたが、これは切り絵を貼るわけにはいかなかったので、直接、手で描いてみました。
依頼を受けてから、主題に対応して表現されているのも、グラフィックデザイン的な柔軟性ではないでしょうか。
そうですね。依頼を受けてから、そのお題に沿って想像を膨らませていきます。これも今年の作品ですが、以前にCDジャケットでご一緒した中島美嘉さんの『中島美嘉写真童話集』です。中島さんご自身のご希望で声をかけていただいたんですが、ボックスに4冊の異なる写真童話が収められていて、中島さんが自ら主人公を演じている撮り下ろしの写真にクモなどのモチーフを切り下ろしたり、それぞれの表紙も、どれを上にしてもボックスの窓から違う見え方になるように、異なるモチーフで制作しました。大変でしたが、中島さんもこだわり抜いた結果、非常に豪華なものに仕上がって満足しています。

『中島美嘉写真童話集』(ワニブックス)
(C)risa fukui/phil
クライアント側から与えられたオーダーを楽しみながら制作している感じがしますね。
クライアントからの依頼やイメージが、逆に自分では思いつかない発想に結びついたりすることが、自分としては面白いんです。例えば、『Numero TOKYO』のために制作した作品では、キューバとダイヤモンドという2本立ての特集で“Paradise”がテーマだったので、そこから発想して、ハチドリの姿に鮮やかな羽根を組み合わせた構図で作成しました。異なるモチーフを組み合わせて構成していく手法も好きですね。


(C)risa fukui/phil
まさに八面六臂の活躍ですね。今後のご予定について教えて下さい。
自分でも改めて最近の活動を振り返ってみて驚きました(笑)。来年の3月には浅草のギャラリー・エフで展覧会を予定しているのですが、アニメーションの作品を発表します。STUDIO 4℃との共作で、原画だけでも150枚くらい切り下ろしました。もちろん初めての挑戦だったので、大変でしたね。でも、数年ぶりの個展で満を持して発表できるわけですから、自分でもとても楽しみです。

『KI RI GA 福井利佐切り絵作品集』(情報センター出版局)は、現在発売中。また、『RISA FUKUI EXHIBITION VOL.2 KI RI GA』展が、2008年3月14日から4月13日まで、浅草ギャラリー・エフにて開催予定。


















