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89年、坂本慎太郎(Vo&G)と亀川千代(B)を中心に結成。97年、柴田一郎(Dr)が加入して現メンバーになり、ミディと契約し、『3×3×3』をリリース。これまでに9枚のオリジナルアルバムをリリースしている。アメリカ盤の発売やライヴなど、海外での活動もさかん。10枚目のアルバム『空洞です』と同時期に、初となるビデオクリップ集『CLIPS 1998-2003』も発売した。 Contact ゆらゆら帝国 URL : www.yurayurateikoku.com |
唯一無二を目指すべきなのが表現者であるのならば、彼らをおいても他に“唯一無二”のバンドは他にはいないだろう。ゆらゆら帝国。真の意味でオリジナリティにあふれ、独自の世界観を築くことの重要性を、心の底から理解している。そんな彼らがまた新たに奇怪なアルバムをリリースする。タイトルは『空洞です』。聴くと、ズブズブとその深みにはまっていく、おそろしく中毒性の高いアルバムだ。永遠と頭の中をループしてしまい、1日中、頭の中はゆらゆら帝国に犯されてしまう。シニカルなタイトルの恐ろしくも素晴らしい最高傑作を生み出した張本人、坂本慎太郎に話を聞いた。
Text:大草朋宏
2年半ぶりのアルバム『空洞です』のリリースとなりますが、いろいろなゆらゆら帝国の音楽性があるなかで、今作は、コンセプトアルバムっぽく感じました。アルバムの方向性ははっきりと定められていたのですか?
ここ最近のアルバムは、だいたい方向性を決めてからアルバム制作に入るんですけど、今回ほど、その方向性を最後までやり通したというのは、ありませんでしたね。
全体のトーンが一貫していると思いましたが、どのようなコンセプトなんですか?
簡単にいうと、『空洞です』というタイトルの通りです。中身がからっぽで何もない。鋭い音も一切無く、ひたすら人肌でフカフカしている感じが続く、生ぬるい感じですね。
「中身がない」という表現は興味深いですね。もちろん、本当に中身がないわけじゃなくて、いろいろ考えた結果、「中身がないというカタチ」に落ち着いたということだと思うんですけど。
まあ、そうですね。そこは話始めるとキリがないんですけど……。いま、自分が制作するに当たって、やる気が出るテーマといえば、もはやコレくらいしかなかったんです。


(左) 坂本慎太郎(Vo&G)/(右) 亀川千代(B)
逆に言うと、今までのアルバムは、中身があったということですか?
そういう点では、意味がないものとか、からっぽのものに対する憧れというのは、昔からありますよね。だけど、そういうものをどうやって作るのかわからない。考えて作るものじゃないですからね。憧れと同時に、自分で何か作るときの矛盾みたいなものが常にありました。
確かに、意識して中身がないものを作る作業は、難しそうですね。
自分でもよくわからなくなりますよね。
タイトルの『空洞です』の『です』にスゴく引っかかっていて、曲名も『おはようまだやろう』『学校へ行ってきます』など、いつにも増して変わっていますよね。単語じゃなくて文章になっていると、前後に何か続くような感じがします。
それは……、こうなっちゃいましたね(笑)。最初から最後まで、続けて聴ける。同じムードが持続する感じ。最初と最後が繋がっている感じとか、いろいろ意識してやりました。曲の長さも、長くしても短くしてもいいような構造の曲が多かったりするし、曲名も文章みたいになっていて面白いかなと。
サウンド的には、前作『Sweet Spot』からの流れはありますか?
あるとは思いますけど、『Sweet Spot』はもっといろんなタイプの曲が入っていましたよね。今作は、より最初から最後まで同じ雰囲気をキープしたいというのはありましたね。生ぬるい感じが永遠に続く、みたいな。

それは例えば、生ぬるい音楽業界や時代への逆説的なアンチテーゼだったりするんですか?
アンチテーゼすらしない、あきらめている感じでしょうか? 過激さを追求して何周かしたあとの、トゲも何もないもの。ここで何かを主張したり、表現しようとはしてないんです。音のぬるま湯っていうイメージでした。単純にいま自分にとって、こういう音が面白いんじゃないかと、リアリティが感じられたものですね。
今までにない音で、ジャンル分けが難しいという印象はあります。これまでのゆらゆら帝国にもなかった音ですよね。
すごく細いところを狙ってやっている感じですね。いろんなものに似ているとは思うんです。観たことも聴いたこともない音楽ではないんだけど、でもなんか収まりが悪い、居心地が悪い、どこにも着地できないという感じは目指しました。
歌詞の内容については、なんとなく切ない感じというか、むなしい感じがしてしまいます。曲名にもなっている「できない」などを始め、否定語も多く使っていると思ったのですが。
決してポジティブとは言いませんけれども、よくよく考えると、そんなにネガティブなことも言ってないんですよね。ただ、けだるさとか諦め感みたいなのは、強烈にありますけどね。
日本語の歌詞を重要にしていると思いますが、その言語感覚は、どのように築かれているんですか?
完全に、歌で歌うことを前提に作っていますね。だからまず、音として面白いこと。そしてリズムやビートのアクセントと言葉のアクセントが一緒になったときに、どういう効果があるか? なおかつ、言葉の持っている意味とサウンドの兼ね合い。そのなかから一瞬聞こえてくるフレーズがどう聞こえるか? など、すごく考えています。だから、文章という感じではないのかもしれません。
これまでのジャケットのアートワークは、すべて坂本さんが手がけていますが、レコーディングと同時進行で制作するんですか?
レコーディング中にイメージがふくらむこともありますけど、終わるまで何も考えていない場合も多いですね。ただ、全部自分でやりたいんですよ。ジャケットと音が一緒になってひとつの存在なので。CD/レコードという、モノとしての質感にはこだわりたい。やはり美術館の絵とかよりも、好きなレコジャケとかポスター、フライヤーからの影響が強いですからね。好きなレコードでも、手元に持っておきたいという感覚はあります。

『SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006』より。
いつもはもう少し抽象的で、アブストラクトなデザインが多いですが、今回は、わりとコンセプトをストレートに伝えたデザインになっていますね。
『空洞です』というテーマで考えたときに、いろいろ考えたんですけど、こんな筒がいいかなと。ループ感や持続する感じも表現できたと思います。
初期の頃と比べて、音楽性や考え方など、自分の中で変わってきたことはありますか?
基本的には変わってないと思いますけど、以前にやったことをもう一度やっても刺激はないので、常にその時点で面白いと思うことをやっていくしかないかなと思っています。それがないと続けられないんで。自分が作品の一番厳しいリスナーだと思っているんですよ。まず自分の基準をクリアすれば、面白いと思ってくれる人はきっといるだろうと。

今回もアルバム発売後にツアーがありますが、このアルバムは“ライブに向いている”とは言えないですよね?
そうですね。ライヴだとどうしても肉体性とかが出てくるんで、印象が変わるかもしれません。アレンジを変えたりとかは考えています。今作に限っては、まったくライヴを想定しないで作っているんで。
THE HELLO WORKS、InK、BOREDOMSなど、いわゆるロックバンドではない畑の人たちとも、数多く対バンをこなしていると思いますが、その面白さはどういった部分ですか?
意識的にそうしているという感じでもないんですけど、ジャンルが違ってもそんなに違いは感じませんね。独自の活動をしていたり、世界観を持っている人たちは、ボクたちと全然違うジャンルでやっていても、シンパシーを感じる。ジャンルはあまり関係ないですよね。
最後に、ライヴに来てくれるお客さんにメッセージをお願いします。
まだ、アルバムの曲がどうなるか、完全には固まってないですけど、まぁ、なんとかします(笑)。































