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レコードジャケットや本の装丁など、フリーのデザイナーとして活動中、友人であった小山田圭吾の依頼により、コーネリアスのツアー映像の編集を手がける。以降コーネリアス、カヒミカリィ、UA、スケッチショウ、リップスライムなど数多くのアーティストのMVを中心に映像ディレクターとして活動。近年では資生堂、明治製菓、NTT東日本、Sony EricsonなどのCM、Artist Film,Style Jam,といった映画会社ロゴやWEBデザインなど幅広いジャンルでの企画・演出を手がけている。
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辻川幸一郎
URL:www.tsujikawakoichiro.com E-Mail:kt@tsujikawakoichiro.com |
日常的な視点が捉えるモチーフを利用し、現実にはあり得ない時空間を構築する辻川幸一郎。ミュージックビデオやCMといった動画メディアにおいて、その圧倒的な個性を発揮する傍ら、CDジャケットデザインや雑誌のアートディレクションを手がけるなど、精力的な活動には枚挙に暇がない。特にコーネリアスを筆頭としたあまりに革新的なミュージックビデオは国内外を問わず支持され、今年6月には、スペインのバルセロナで開催される国際的な音楽イベント「Sonar」に参加。今後も未知の世界に私たちを導いてくれるであろう彼の動向に、注目せずにはいられない。
Text:林永子
まずは表現活動を始めたきっかけをお聞かせ下さい。
そもそもの話をすると、たまたまミュージシャンの友達がたくさんいたんです。彼らがレコードを出すことになった時、美大生だった僕がジャケットをデザインした。それを見たコーネリアスの小山田君が面白がって、当時の彼のレーベル「トラットリア」関連のジャケットやグッズのデザインを手がけることになったんです。
最初は映像ではなくデザインをやられていたんですね。
そうなんですが、デザインは専門的な知識や技術が必要で、神経質な作業なんだけど、僕はおおざっぱな性格だし、知識がないから、1つ1つ手探りで作っていましたね。その内、雑誌のエディトリアルデザインや本の装丁も手がけるようになりましたが、ノウハウは一生懸命覚えるんだけど、スキルが必要な作業が下手で…。アイデアとネタだけは良かったんですが。それでも、98年に『広告批評』の特集で、信藤三雄さんが「これからのデザイナー10人」の内の1人に選んでくれたんです。それは嬉しかったですね。

『Music』Cornelius(2006 / Warner Music Japan)
(c)Koichiro Tsujikawa / Cornelius
辻川さんの映像作品には、絵巻物のように映像が流れていく印象があります。これはやはりその頃のデザインの経験が基礎にあるからなのでしょうか?
平面デザインでも、ページをめくっていくことで展開するようなデザインが多かったので、映像を作ることになっても上手くはまったという感じはありましたね。デザインは1人で机に向かう仕事だけど、映像は自分1人だけじゃできないから、カメラマンや専門スタッフとの共同作業、相乗効果によって品質が上がっていくことを後々学んでいきました。
実際に映像に携わるようになるまでには、どのような流れがあったのですか?
シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハーのMVで初めて映像に関わったんですが、その時はアート・ディレクションのような立ち位置で参加していました。自分で作った実感のある最初の作品は、コーネリアスのライブ映像です。Fantasmaツアー後期の頃「新しい曲を演奏する時、背景に出す映像を編集してほしい」とのことで、素材の入ったVHSのテープをリニア編集でVJ的にサンプリングした。それがすごく面白かった。その後は海外ツアー中に小山田君が撮影して来た映像素材を編集加工したりしていますね。
ミュージックビデオ監督として処女作はどの作品になりますか?
小山田君プロデュースの嶺川貴子さんの「Plash」です。そこで初めてコンテを描いて、撮影して、編集するという一連の映像制作工程を経験しました。カッコいい映像とライブシーンを掛け合わせたミュージックビデオが全盛期の中、嶺川さんがブラシをマイク代わりにして歌っている、という1つのシチュエーションを一貫させました。ワンアイデアのみで作るという構成は、当時はまだ誰もやっていないものでした。一見素朴でシンプルながら、曲と動きを完全シンクロさせたり、リップシンクを2倍速で撮影して当てはめたり、ブレイクで画を止めて曲を編集するといった実験に挑戦した。After Effectsというソフトを使ったアイデアをかなり色々試しながら作ったんです。例えば、古いイラストのポーズ集にある連続写真の動作をスキャンして、そのシルエットをつないで切り絵アニメを作ったりとか。この頃からしばらくはAfter Effectsに執着していましたね。

『Plash』嶺川貴子(1999 / Polystar)
撮影はご自分でやられていたのですか?
自分で集めたクルーにお願いしていました。制作会社に頼むということを知らないから、報酬の振込も僕がやった(笑)。そもそも機材の事や編集の仕方が分からなかったから、とりあえず秋葉原の駅から一番近い電気屋で「映像を作りたい」って言って、「じゃあこの店に行け」と店員さんに教えられるまま九十九電機の何号店に行って…、ほとんどロールプレイングゲーム(笑)。でも納品に間に合わせなきゃいけないから余裕はありませんでしたね。
最近手がけたミュージックビデオについて教えてください。
UAの「Lovescene」。ソウルフルでスウィートないい曲なんです。UAはとてもチャーミングな女性だからその魅力も出したかったし、スタンダードなポップスの良さも出したかった。ちょうど2年前、雑誌のフォトストーリーのアートディレクションをしたんですが、床に寝転がったモデルの周囲を公園にある物で飾って、クレーンで撮影した。いつかそのアイデアをミュージックビデオにしたいと思っていて、ついに今回実現しました。

『Love Scene』UA(2007 / Victor Entertainment)
この作品では視覚的なギミックよりも、UAさん自身の魅力が際立っているようですね。
誰が聞いても素直に良いと思う曲に対して、曲に合わないヘンテコな味付けをしてもしようがない。だけど良く聞くとUAならではの独特の世界観のある歌詞もあるから、“ただ普通”には撮らない。「え?」っていう大変なこともやるその塩梅というか、混ぜ具合が大事。あとはやはり好きな人の音楽を映像にすることがミュージックビデオでは基本ですね。今までも、組織の枠組みの中で仕事をするのではなく、個人同士のつながりで仕事をしてきていますから。仲の良い人たちと仕事をすると、制作過程も楽しいし、出来上がった作品を共有することも出来る。
楽しそうな雰囲気というのは、映像を見ている側も感じ取れる部分でもありますよね。
音楽ってパーソナルな領域の表現だから、ミュージックビデオもちゃんと分かり合っている人たちで作る方が価値があると僕は思う。同世代のミュージシャンの仕事は、見聞きして来たものが同じだからベーシックな文化を共有しているし、仲良くなれるチャンスもあるかなと、比較的受けるようにしています。
辻川さんのルーツを教えてください。
今思えば、仕事云々と言う意識がなかった子供の頃から、かなりの量の映画を見たり本を読んだりしていました。アウトドアやスポーツをしたりとか、合コンに行ったりするタイプでは全くないし(笑)。引きこもり系でしたね。きっと孤独で、好奇心があったんでしょう。両親が共働きで鍵っ子だったから自由な時間がある方で、そんな子供時代の1人遊びが基礎になっていると思います。
具体的に、影響を受けた作品やクリエイターはいますか?
破綻しているくらいに極端に振り切っているものが好きなんです。映画だと、「裸の銃を持つ男」は、ギャグの量がメチャクチャ多くて、ちょっとギャグをやっている間に背景でもまた別のギャグが展開されている。密度の濃い狂ってるものも好きだし、逆にジム・ジャームッシュのようにシンプルでミニマルな構成の映画も好き。漫画だと水木しげるとか。資質が暴走してしまった結果、過剰にならざるを得なかったと思われる作品には誠実さを感じずにはいられないので、やっぱり好きです。

『Love Scene』UA(2007 / Victor Entertainment)
密度のこだわりとシンプルなアイデア、そこは辻川さんの作風との共通点ですよね。
完全に狂っている現場はあるね(笑)。UA「Love scene」の撮影現場も、かなり磁場がおかしかった(笑)。砂場にクレーンを持ち込むのも大変だし、予算使い果たしてノーギャラなんだから狂ってるよ(笑)。
ところで、最近はCMなども幅広く手掛けられているようですね。
はい。最近ではカフェオーレのアニメCM作りました。僕が作ったって誰も気付かないけど(笑)。嶺川さんに歌ってもらいました。
ジャンルや肩書きを問題にしないクリエイターがどんどん増えているなか、辻川さんはどのような部分に力を注ごうとしているのですか?
「こういうことをやりたい」ということはいくつかありますが、ひとつのジャンルや肩書きに向かおうとはしていないです。やりたいことに挑戦する度に、肩書きが増えるという感じです。例えば、今年は映画を撮るかもしれない。美術館でオリジナル作品を上映する予定もありますが、それはアートを意識して作りたい。将来的にはずっと興味があった写真も撮りたいんです。でも、今のところ、どれかが一番というワケではないです。もちろん新しいジャンルに挑戦する時は大変な分、力も入りますが。



















