今最も注目を集める若手クリエイター、えぐちりかが、毎回「今会いたい女性クリエイター」のもとを訪れ、もの作りのスタンスから、女性同士だからこそ明かせるプライベートの話題までを語り合う対談連載企画「PRIVATE ROOM」。
連載3回目となる今回は、以前からG.V.G.V.の大のファンだというえぐち氏の希望により、世の女性から絶大な支持を集める同ブランドのデザイナー、MUG氏との対談が実現。分野も作風も異なるふたりですが、実際に話をしてみると、意外に共通点も多いようで―。

えぐち:大学生の頃からK3が好きで、代官山のお店に通っていたんです。私は背が低いんですけど、G.V.G.V.の服はシルエットがキレイなので、ピッタリ合って。昔からファンだったので、ずっとどんな人が作っているんだろうと思っていて、ぜひお話を聞いてみたかったんです。
MUG:ありがとうございます。スゴくうれしいです。よろしくお願いします。
えぐち:MUGさんはいつ頃からファッションに興味を持つようになったのですか?
MUG:もう小学生の時からですね。お母さんがもともと趣味で裁縫や刺繍をやっていて、私と姉におそろいの洋服を作ってくれたりしていたんです。おばあちゃんも着物を仕立てる仕事をしていたので、一緒に生地屋について行ったりしていました。刺繍糸が並んでいて、グラデーションになっているのがスゴくキレイで、そういうのを見るのが好きでしたね。
えぐち:刺繍箱とかもそうですけど、ああいうものは見ているだけでも楽しいですよね。まち針とかもキレイですしね。
MUG:そうなんですよ。そんな感じで、家にも常に生地が転がっているような環境だったんですけど、姉とおそろいの服はイヤで(笑)。いつも色違いで、姉がピンク系で、私は青系だったんです。青が好きだと自分で言った覚えはないのに、洋服だけじゃなくて、部屋の絨毯とかまで私は青(笑)。それが、今のちょっと男っぽいセンスにつながっているのかもしれません。中学生くらいからは、自分で洋服を選ぶようになっていきました。当時、DCブランドがとても流行っていた時期で、3つ上の姉の影響もあり、うちに置いてあった雑誌をなんとなく見ていて、だんだん興味が強くなっていきました。中学校の卒業文集には、もうファッションデザイナーになりたいと書いてあるんです。

G.V.G.V. 2010 S/S Collection
えぐち:自分で洋服を作ったりするようになったのはいつ頃からですか?
MUG:作るようになったのは、専門学校に通い始めてからです。でも、当時はデザイナーなんて、なりたくてなれるもんじゃないだろうと思っていたところがありました。絶対デザイナーにならないといけないという気持ちもそこまでなくて、服飾関係の仕事に携われればいいくらいに考えていましたね。だから、あまり真面目な学生ではなくて…(笑)。好きな授業はがんばるんですけど、そうじゃないものは……。
えぐち:私もそんな感じでしたね(笑)。今やっているような仕事は、限られた人しかできないと思っていたし、夢のまた夢だと思っていました。
MUG:えぐちさんは、もともとアートディレクターをやりたかったんですか?
えぐち:それが全然思っていなかったんです。もともとはガラスをやりたくて、食器のデザイナーとかになりたかったのですが、作家なんて周りにもいないし、なれないだろうなと。でも、学生時代に作った卵の器が少し評価されて、それで調子に乗って(笑)、卵を色々なモチーフに展開したインスタレーションをやったんです。それをコンペに出したりしたのですが、審査員にアートディレクターという職種の人が多くて、そこで初めてそういう仕事を知りました。その後電通に入社して、徐々に今のような仕事をするようになっていったという感じです。
MUG:私も本当に徐々にという感じでしたね。
えぐち:ファッションの仕事は、必ず半年に一度、その時の気分を定着しないといけないというところが面白いですよね。
MUG:そうですよね。タームが決まっていて、そこに間に合わなかったらゼロになっちゃうわけですからね。

G.V.G.V. 2010 S/S Collection
えぐち:だいたいどのくらい前から作り始めるのですか?
MUG:ショーが終わったら、すぐ次のシーズンに取りかかるという感じですね。いつも最初に生地を決めるんです。その時にテーマカラーとかも決めていきます。そこを固めた後はもう戻れない(笑)。
えぐち:1回1回のジャッジがスゴく大切なんですね。評価にしても、ただ面白いかどうかではなく、それをどのくらいの人が買ってくれるか、というわかりやすい基準がありますよね。
MUG:そうですね。最終の結果は消費者によるので、スゴくあからさまに見えてきますね。
えぐち:その辺はプレッシャーにはなりませんか?
MUG:やっぱりなりますね。見せる部分と売れていく部分というのはやっぱり違うので、その辺が一番難しいですね。
えぐち:でも、そのさじ加減がG.V.G.V.は絶妙ですよね。
MUG:私自身が女性だからかもしれないですけど、絶対に着られるということを大前提に服作りをしています。最低限袖が通って、足が出てというものにするし、洋服の域を超えてしまっているものは作らないようにしています。

G.V.G.V. 2009-2010 A/W Collection
えぐち:ところで、ファッション以外ではどんなことに興味がありますか?
MUG:音楽も好きだし、映画も好きです。ただ、ある種の職業病で、そういうものに触れている時も、ファッションは切っても切れないんです。例えば、音楽を聴いていても、ショーの音楽で使えないかなと考えてみたり、映画を見ていても、衣装に目がいっちゃったりします。次回のショーも映画をベースにやる予定です。その時々で自分が一番強く感じたものが、ショーのベースになります。それはミュージシャンだったり、写真集だったり色々です。でも、何かを探しに行ったりするというよりは、普段生活をしていくなかで出てきたものという感じ。それが一番リアルだと思うんです。差し色とかにしても、そういう自分が今気になっているところから決まっていくことが多いです。
えぐち:G.V.G.V.の色のチョイスがとても好きなんです。シルエットはキレイなんだけど、色にスゴくパンチが効いていたり。私は、もともと色彩構成が得意ではなかったのですが、ファッションからヒントを得るようになって、結構色を使えるようになった部分があるんです。

G.V.G.V. 2009 S/S Collection
MUG:それは面白いですね。逆に私は、学生の頃も色彩の授業だけ点数が良かった(笑)。この色とこの色が隣に来ると良いとか、そういうこととを考えるのは昔から好きです。でも、色は本当に難しいですよね。毎回同じでもつまらないし、そうは言っても好きな色幅というのはだいたい決まっていますからね。いつも同じ絵型を10枚くらいコピーして、色鉛筆で塗り絵みたいにして考えていきます。スゴくアナログなんです(笑)。
えぐち:私も基本的にアナログです(笑)。私の場合は、メモ帳にアイデアやコンセプトを書き込んで、そこから形にしていくことが多いですね。
MUG:メモは良いですよね。書くことで何が必要か見えてくるし、後で見返したりすると、とても役に立ったりしますよね。昔は、メモを取らなくてもだいたい覚えられていたんですけど、今はネットとかがあって、日々情報が入ってくる分、本当に忘れやすくなっちゃって…。その一瞬がホントに大事だと思うから、メモすることは大切ですよね。
えぐち:そうですよね。私もすぐ忘れちゃうんです(笑)。実は今日、MUGさんにおみやげを持ってきたんです。これも忘れないうちに(笑)。「脳」と「ブック」をかけたメモ帳です。
MUG:カワイイ!ありがとうございます。とても良いアイデアですね。


えぐち:去年展覧会をやった時に、記念品として作ったんです。メモをするということは、頭の中にある情報を記録することなので、それなら脳みその形に線が引かれたノートがあったら面白いなと思って(笑)。
MUG:えぐちさんは作品を作る時に、どういうところからインスパイアされることが多いのですか?
えぐち:私は、普通の人が楽しめるものが好きなんですよ。そこに自分のオリジナリティを加えていくという感じですね。例えば、小さい頃からサンリオがスゴい好きで(笑)。サンリオってグッズの展開がスゴいじゃないですか。よくひとつのテーマをここまで展開できるなって。そういうところが、自分がものを作る上でもベースになっているかもしれないですね。テーマパークじゃないけど、ひとつの世界観をどんどん広げていく感じ。
MUG:私もサンリオ大好きでした。子供の頃、私の地元の九州に「イチゴ」というサンリオグッズのお店があって、しょっちゅう通っていました(笑)。
えぐち:わたしもスゴくチェックしていましたね。当時、スヌーピーがサンリオショップに入っていて、小学生の頃はバックやお弁当箱、靴、文房具、部屋のカーペットやテーブル、パンツや水着まで徹底してスヌーピーみたいな(笑)。
MUG:そういえば、こないだの日本ファッション・ウィークの時に、スヌーピーの生誕60周年ということで、スヌーピーの衣装を作って展示したんです。これまでにも錚々たるブランドがスヌーピーの衣裳を作っているんですよね。サイズもまったく違うから、スゴく大変でしたね(笑)。

PEANUTS (C)United Feature Syndicate, Inc.
えぐち:スゴい!耳を縛っているのがかなりカワイイです(笑)。私本当にキャラクターものに弱いんです。
MUG:その感じは、作品にもなんとなく出ていますよね。
えぐち:どんなものでも最後はポップにまとめるということは大切にしています。
MUG:わかります。ポップって大前提ですよね。歌でもアートでもそうですけど、ポップと括れることはスゴいことだと思います。
えぐち:あと、カワイイだけじゃなくて、ちょっと「毒」のあるものやブラックユーモアがあるものも好きなんですよ。やって良いことと悪いことの境界で、ギリギリ「アリ」にしたい(笑)。最初から絶対安全パイというのが見えちゃっているものだと、逆にがんばる気がわいてこなかったりする。G.V.G.V.を好きなのも、可愛いけどトガっているというか、そういうちょっとしたパンチがあるからなんです。
MUG:本当にキレイなものや美しいものって、必ず毒もあると思うんです。私もそのエッセンスは忘れたくなくて。誰が見てもわかりやすいけど、印象にも残るというか。それをわかってくれる人が、共感してくれてるのかなと思います。
えぐち:そうだと思います。「ギリギリでアリ」みたいなところを突かれるから、毎回買っちゃうんですよね(笑)。MUGさんは、今後何かやってみたいことはありますか?
MUG:普段の仕事がなかなか忙しいんですけど、色んな人と関わってものを作っていくのは面白いので、これからもっとやっていきたいと思っています。あと、舞台衣装を作ることが夢なんです。大きな舞台の衣装とか、その世界観のなかだけで表現できるようなものはいつかやってみたいですね。

UT x G.V.G.V.(2010年4月発売予定)

Creator Profile
MUG1971年生まれ。桑沢デザイン研究所 卒。1999年、G.V.G.V.を立ち上げる。フェミニンとマスキュリンの同居するオリジナルな世界観を、その時の感性で自由に発想し、毎シーズンコレクションとして発表し、現在最も注目される東京ブランドのひとつとなった。2007年春夏シーズンには、UNIQLOの「デザイナーズインビテーション」(世界的に活躍するデザイナーとUNIQLOのコラボレーション企画)に参加。同じく2008年春夏シーズンには、UT にて作品を発表する等、活動の場所を広げている。
Posted by:えぐちりか
1979年北海道帯広生まれ。電通にてアートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして国内外の美術館で作品を発表。自身のジュエリーブランド「RIKKA」のデザインや、ラフォーレ原宿、Coppertoneなどのグラフィック、さらにドコモダケアート展「How To Cook Docomodake? 」ではキュレーションも手がけるなど、平面から立体、広告から展覧会の企画まで幅広い活動を展開。JAGDA新人賞、ひとつぼ展グランプリ、岡本太郎現代芸術大賞優秀賞受賞他。












