個性豊かなアーティストたちが集い、国内音楽シーンにおいて独自の存在感を放つレーベルFelicityと、Public-image.orgによるコラボレーション連載「POWER OF PEOPLE」。
毎回、同レーベルの旬のアーティストが登場し、これまでに影響を受けてきた「10人のクリエイター」たちを紹介してくれます。音楽というジャンルを超え、様々な分野との交流も盛んなFelicityのアーティストたちのバックグラウンドや意外な趣向をお伝えしていきます。
今回は、Felicityが満を持して送り出す期待の新人、NAOITOが登場。世界中を旅するシンガーソングライターが影響を受けた10名のクリエイターとは?
Interview:大草朋宏

NAOITOが影響を受けた”すべてをさらけ出す人間臭い”の10名のクリエイター

チェット・ベイカー
「トランペッターだったチェットが、ある時『オレは歌を歌いたいんだ!』って歌い始めて衝撃を与えたアルバムです。スゴく思い切ったことですよね。人生のどんな場面においても新しいスタートが切れると証明してくれた。もしかしたら僕も10年後、楽譜も読めないのにピアノを弾いているかもしれないですしね。とにかくこのアルバムを聴いた時は『あぁ、恋しているな』と。ワクワクする気持ちと成就するかという不安と会えない時間のブルースな感じ。それがメロディや歌詞ではない、トロトロの空気感で伝わってくるんです」

セロニアス・モンク
「本当かどうかわかりませんが、彼は楽譜が読めないらしいですね。僕も音楽において、まったくアカデミックさがないことを、常にコンプレックスに感じているんです。だから楽譜が読めなくてもこんなにすごい人がいるんだって勇気づけられました。『Round about midnight』は、スタジオで曲ができていくプロセスをそのまま出してしまう大胆さが痛快ですね。常に手の届くところに置いてあるアルバムのひとつです」

アジャ・アデ
「師匠だと思っています。初めてCDを聴いた時、ものスゴい衝撃を受けたんです。音から人間性が伝わってきて、聴いていると元気になる。音楽が人にとってメディスンであることをホントに実践している人です。そのCDの発売元を見るとなんと葉山なんですよ。当時、目黒から葉山まで自転車で会いに行って、2回くらい個人レッスンを受けました。その翌年、自分でアジャのライヴを企画したら、その当日の朝、突然亡くなってしまったんですよ。そして、僕はお葬式に来ていたたくさんのミュージシャンたちに拾われる形で、いろいろなバンドで太鼓を叩かせてもらうようになりました。亡くなってから、アジャとのつながりで教えてもらったことがたくさんあるんです。ホントにガイダンスを残して逝ってしまったんですね」

ジェリー・ゴンザレス
「ルンバでコンガを叩く人を『ルンベーロ』って言うんです。その人たちの生き方がスタイリッシュでカッコ良い。ニューヨークのプエルトリカン=ニューヨリカンですけど、大都会のなかでプリミティブなことをしていて、現代の生き方としてはお手本にしたい人たちですね。ジェリー・ゴンザレスもそんなひとり。そもそもラテン気質が好きなんですよ。臭いものにフタをする生き方ではなく、苦しみも悲しみも全部消化した上で、笑って暮らそうぜ、みたいな」

ジム・ジャームッシュ
「『Night On Earth』は、世界の色々なところのタクシードライバーの話が集まったオムニバス映画ですけど、その国によって抱えている問題とか、気質が全部違いますよね。そのユーモアが面白い。今でこそ、ブラジルで友達が何しているかリアルタイムでわかるけど、そういうつながりを考えている時に見たので、影響を受けました。ちょうど、球体って究極に平等だなと思っていて。だから地球も平等。そんなファンタジーを感じられる映画です」

手塚治虫
「漫画がバイブルだった子供の頃、手塚治虫が持っていた世界観は、飛び抜けて果てしなかった! 子供の頃、宇宙は広がり続けていて無限だ、って教わりましたよね。でも無限って概念を理解できなくて、一度、今いる家から、宇宙の端っこを追いかけてみようと空想したことがあるんです。でもやっぱり無限を理解できなくて。しかも気持ち悪くなってしまって(笑)。手塚治虫を読むとそういう体験ができます」

藤原新也
「『人間は犬に食われるほど自由だ』というあのパンチラインもスゴいけど、世の中に対して『それホントかよ?』って探ったり、『本当の真実はなんだろう?』って考えている。いま自分がそう思っていることを、30年も前から、この人はスゴく冷静な眼で見ていたってことにビックリする。この人も旅人ですけど、旅先で読むことが多いです。旅をしている時は、無意識で抑えていた部分が解放されるから、音にしろ、言葉にしろ、入ってくるもののインパクトは大きくなりますね」

岡本太郎
「子供の頃に青山のこどもの城で見たのが岡本太郎との出会いだと思います。どうもこうもない。理屈じゃない。血が熱くなる感じがしますね。彼は究極の矛盾を持った人だと思います。強さと弱さ、マッチョな部分と女々しい部分。僕はそんなに美術に詳しいわけじゃないですけど、そんなこと関係なしに、心に伝わってくるものがあります」

エディット・ピアフ
「最初に聴いたのは、美輪明宏さんの『愛の賛歌』。大人になってからその原曲がエディット・ピアフだと知りました。あそこまでまっすぐに愛からチカラはをもらいながらも、愛に翻弄される人生というのもスゴいと思います。男女のことって苦しいことや痛いことも多いと思う。だけど、それをわかった上で、人生はバラ色だと歌う『La vie en rose』って、曲が持つポジティブなチカラは素晴らしいですね」

仲間
「バンドをやる上では、まず人ありき。人に惚れてなんぼ。はっきり言って血のつながりはないじゃないですか。それなのに、「なぜこいつの子供がこんなにもかわいく思えるのか?」って思うんです。音と音が混ざることって、性別を超えてひとつのものになっているし、それは血のつながりに近いものがあります。だから、スゴく影響を受けますよ。そいつのちょっとしたひと言とか、ちょっとつらそうな表情とか。色々な良いことも悪いことも全部ひっくるめて、ずっとやっていきたいと思える人たち。偉そうだけど、自分で曲を作って歌うことでみんなの面倒を見られるのなら、それは一生を費やす価値があるなって。『雑食familia』は、そうやってできたアルバムです」
Release Information
パーカッショニストからシンガーソングライターへと進化し、温かく独特の匂いを湛えながら、多くの音楽性を取り入れたファーストアルバム。

『雑食familia』
アーティスト名:NAOITO
レーベル : felicity
リリース日 : Jul. 15th 2009

Artist Profile
NAOITO東京生まれ純日本人。19歳で渡米、その後ジャマイカ、ネパール、ブラジル、キューバを旅する生涯旅人。西アフリカ・ガーナのマスタードラマーAja Addyに手ほどきを受け、パーカッショニストとして音楽活動をするなか、ある時独学のギターで作曲を始めるとはNAOITOと名乗り、弾き語リストになる。自身の郷愁を唄った「工場のワルツ」や新たな夜明けを目指す「HazeBlue」を筆頭に、懐かしき昭和歌謡から世界の民族音楽に至るまで、極めて雑食性の強い音楽性はジャンル分け不可能である。「雑食familia」とは、すべてのジャンルや国境や人種や格差を越脱し、昇華していくという今この時代を生きるのに最も必要なタフネス +同じ釜の飯を喰いながら築いていく最も原始的で強い家族観や結束力による創造=NAOITOが理想とするバンドの姿勢を意味する。以上6名、家内制手工業型旅するアジアのジプシーキャラバンとなり全国各地で活動、話題沸騰中。
Posted by:Felicity
2002年の設立以来、ジャンル、洋の東西を問わず知的好奇心を刺激するような良質な作品をコンスタントにリリースしてきたレーベル。 音楽ソフトだけにこだわらず、アートブックや写真集など、その アーティスト、また作品に適したフォーマットでのリリースなど、やりたいことにはチャレンジし続けるスタイルで、今後も多くの作品を世に送り出す予定。












