電通のアートディレクターとして働く傍ら、アーティストとしても国内外で作品を発表する女性クリエイター、えぐちりか。今最も注目を集める若手クリエイターである彼女が、毎回「今会いたい女性クリエイター」のもとを訪れ、もの作りのスタンスから、女性同士だからこそ明かせるプライベートの話題までを語り合う対談連載企画「PRIVATE ROOM」が、今月からスタートします。
記念すべき連載第1回目となる今回は、刺繍を用いた独自の技法と世界観で、アート作品からクライアントワークまでを幅広く手がける清川あさみ氏との対談。アーティスト/アートディレクター双方の肩書きを持ち、さらに同年齢ということもあり、共通点も多いように思えるふたりですが、果たして—。

えぐち:清川さんの作品は、以前から好きなものがたくさんありました。作家活動をされながら、広告の仕事なども手がけ、しかも、絵本や「美女採集」とか、シリーズものもたくさんありますよね。あと、こないだのパルコの仕事もスゴく良かったです。こんなに素直に女の子をカワイく表現しているのは誰だろうと思っていたんですが、最近清川さんの仕事だと知ったんです。
清川:スゴい!全部知ってますね(笑)。こないだのパルコの広告の仕事は、スタイリングも自分でやりました。「美女採集」シリーズなんかもそうなんですが、結構自分で衣裳まで作ったりするんですよ。
えぐち:衣裳もですか? ADをやりながら衣装まで手がけるなんて大変じゃないですか? 仕事の幅が広いし、同時期に色んな仕事をやられているので、一体どうやっているのかなって(笑)。
清川:かなり少人数でやっています。私、アシスタントも本当に少ないないんですよ。いつも同じ子と一緒にやっているんです。
えぐち:そうだったんですか。私は、社内のデザイナーや制作プロダクションなども入れると、だいたい4~5人で動いています。
(左)PARCO SWIM DRESS(2009)、(右上)「幸せな王子」(2006/リトルモア)、(右下)「人魚姫」(2007/リトルモア)
清川:たくさんスタッフがいると、その中のひとりでもボーッとしている人がいたりすると気になっちゃいませんか? それに、「この子は将来どうなりたいんだろう?」とか一人ひとりのことがとても、気になっちゃうんですよ。もちろん、広告の仕事などで、外部の色々な方と関わることも楽しいんですけど、作品作りの面では、自分が見えている範囲でやりたいんですよね。
えぐち:なるほど。でも、少人数でこれだけやられていると、どうしてもキャパシティの問題が出てきてしまいますよね。仕事を断ったりされることもあるんですか?
清川:時にはありますけど、結構受けている方だと思います。音楽とかは好き嫌いが激しいので、感情移入できないものは断っちゃうかもしれないですが、面白そうだったら、がんばって感情移入して作ることもありますよ。
えぐち:私も基本はいただいたお仕事はすべて受けたいのですが、不器用なのでひとつの仕事に集中すると、他の仕事が受けられなくなることがしばしばあります(笑)。
清川:あと、そんなにやりたくない仕事ってこないんです。逆に全部やりたくて困るくらい(笑)。そういう意味で本当に恵まれていると思います。こないだ発売になった絵本も、年1冊ペースで作っていて、今回が3冊目になるんですけど、本当にやっていて良かった仕事だなといつも思います。今回は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に挑戦しました。この作品は、生きていてふと感じるような色々なことがすべて入っているので、クリエイターの人はもちろん、子供にもどこかのタイミングで絶対に読んでほしい本ですね。
えぐち:ぜひ読ませて頂きますね。こういうファンタジックな世界観もそうですが、写真に刺繍をしていくという技法にもスゴくオリジナリティがありますよね。しかも、それをほとんどひとりでやっているなんて、そのエネルギーはどこからくるのでしょうか。
「銀河鉄道の夜」(2009/リトルモア)より。
制作のスタンス
清川:私、仕事が速いんですよ。何か頭の中で想像した時に、短時間でスグにカタチにしないと鮮度が落ちてしまう気がしてイヤなんですよね。あまりコツコツやるのが好きじゃないんです。
えぐち:そうなんですか? 刺繍の作品なんかを見ていると、コツコツやられているイメージがありました。
清川:全然そんなことないんですよ。要領がいいのかも(笑)。今回の絵本も50点の作品を2ヶ月くらいで作りました。最初は無理だと思ったんですけど、1週間くらいして、「もしかしたらできるかも!」って(笑)。
えぐち:このボリュームをそんな早く作っているなんてビックリです。一日のスケジュールはどんな感じなんですか?
清川:平日は5,6時くらいには起きて、スグに制作に入ります。夕方以降は打ち合わせとかをして、夜は食事に行ったりすることが多いです。早く仕事を終わらせれば、その後に色んな人と話したりとかができますからね。
えぐち:朝5,6時から制作ですか。本当見習いたいです。私は完全夜型な上に、寝ないとアイデアが出なくなるので、10時間くらい睡眠を取ることもあるくらい。怠けている時間が結構多い(笑)。
松屋銀座 ウィンドウディスプレイ Collaboration with Swarovski Crystal
清川:私も怠けている時はあると思うんですけど、休みも作品のうちということにして、割り切っている自分がいるのかも。あとは、早く納品したいっていう気持ちが強いんですよ。こないだ松屋銀座のディスプレイと広告をやったのですが、この時もスゴく早かったです。スノードームを作ったんですけど、朝起きてすぐに思いついて、スノードーム自体は1時間くらいで作っちゃいました。
えぐち: 逆に私は、残念なことに仕事メチャクチャ遅いんです…(笑)。企画に1ヶ月かけたりすることもあるし、これって決めてからもかなり検証して時間をかけて作っていくんです。制作期間があればあるだけ、時間をかけて作る感じ。でも、やっぱり早い方がいいと思います。仕事の早い人には憧れがあります。
清川:え、そうなんですか? それがえぐちさんの良さだと思いますよ(笑)。
えぐち:集中してやれば1時間くらいでできるはずのことでも、気分が乗ってこないと寝かしちゃったり。一度ガッと考えてもいいアイデアが出ないと、あえて2,3日全然違うことをやりながら、またパッと浮かんだ時にやるという感じで。とにかく企画がビシッと決まらないといっこうに作れないタイプで、最初に全体のコンセプトをしっかり固めて、そこからヴィジュアルを考えていくようなやり方なんです。だから、手を動かすことよりも頭を動かすことの方が大好きだったりします。
清川:私はあまり考えないタイプかもしれない。私の場合は、絵のイメージが最初にあって、例えば刺繍なんかもそれを表現するための作業の一部なんです。だから、作品を作っている時は「工場」になりますよ(笑)。この絵本でも50枚作品を作ったんですけど、作っていく順番はバラバラで、まず伝えたい場面から取り組んでいって、最後に編集作業のようにつないでいきました。先に要点をまとめたいタイプなんですよ。うちでビデオとか見ていても、結論が知りたいから早送りしちゃったりして。まず最初に、何が言いたいのか知りたいんです(笑)。

男性的? 女性的?
えぐち:早送りですか(笑)。私は逆に結論に至るまでのディテールが好きです。
清川:そういう女性的な感覚があまりないんですよ(笑)。えぐちさんは作品を見させてもらった時も感じたのですが、スゴく女性らしいですよね。
えぐち:そうですか? あまり普段言ってもらえないんだけど(笑)。
清川:全然女の子ですよ~! 今日話していても、スゴく女性だなって感じますよ。「私も私も!」みたいなところあるじゃないですか(笑)。
えぐち:実は女の子なんですかね。
清川:少しうらやましいです。
えぐち:たしかに清川さんはある意味男前で、ついていきたくなる感じ(笑)。清川さんは仕事に行き詰まったり、もう作りたくないと思ったりすることはないんですか?
清川:昔は結構あったと思います。「本当は作りたくて作ってるわけじゃない」みたいな。もう10年くらいこういうことをやっているんですが、気が付いたら、私の作品を待ってくれている人がいて、だから次を見せていかないといけないと思っているんです。もともとクリエイターを目指していたわけではなかったんですけど、今は見てくれる人がいるし、自分もメッセージを伝えられるくらいの技術が身に付いてきているから、これはもうやるしかないなと最近は思っています。
えぐち:そう思えるって素敵なことですね。私はインスピレーションが気持ちに左右されることが大きいので、乗らない時や良いアイデアが出ない時は、充電期間が必要になります。だから、土日とかは完全にプライベートの時間を作らないとダメなんです。
「銀河鉄道の夜」(2009/リトルモア)より。
プライベート
清川:私も土日はちゃんと休んでいますよ(笑)。
えぐち:清川さんのところは、旦那さん(nendo 佐藤オオキ氏)もクリエイターじゃないですか。お互いクリエイティブだとケンカしてしまうことってないですか? 私の実体験なんですが(笑)。
清川: 私は、人にライバル意識を持つことがないんです。だから、旦那にライバル心を持ったこともないし、たぶんお互いに全然違う人だと思っていて、それがいいのかも。もともと私は、恋愛が作品作りに悪影響を与えることはない方です。ケンカしても制作に没頭しているうちにスグに忘れちゃうし、その辺の切り替えがスゴく早い。潔すぎですよね。
えぐち:カッコ良いです。今日は清川さんの意外な一面をたくさん知ることができてとても楽しい時間でした。どうもありがとうございました。
清川:どうもありがとうございました。
Information
清川氏が手がけた絵本シリーズ第3弾「銀河鉄道の夜」は、リトルモアより発売中。また、発売記念イベントとして、12月20日に山崎ナオコーラ氏とのトークショーが青山ブックセンターで開催される。詳細はこちらから。

「銀河鉄道の夜」(2009/リトルモア)

Creator Profile
清川あさみ1979年生まれ。文化服装学院在学中より、モデルとして人気を得て連載やスタイリングを手がける。現在、糸や布を使ったアート作品、衣装、空間、映像、イラストレーションを創作するアーティストとして多方面で活躍中。そのオリジナルな手法と世界観をもつ作品を発表し続け、世代をこえて注目されている。また、数々のCDジャケットや広告のアートディレクションを手がけている。作品集や展覧会も多数。おもな著書に作品集『futo』(マドラ出版)、『美女採集』(INFAS)、『caico』(求龍堂)、『幸せな王子』、『人魚姫』(リトルモア)などがある。
Posted by:えぐちりか
1979年北海道帯広生まれ。電通にてアートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして国内外の美術館で作品を発表。自身のジュエリーブランド「RIKKA」のデザインや、ラフォーレ原宿、Coppertoneなどのグラフィック、さらにドコモダケアート展「How To Cook Docomodake? 」ではキュレーションも手がけるなど、平面から立体、広告から展覧会の企画まで幅広い活動を展開。JAGDA新人賞、ひとつぼ展グランプリ、岡本太郎現代芸術大賞優秀賞受賞他。













