独自の線画イラストレーションを武器に、様々なメディアで活躍するアーティスト/イラストレーター黒田潔。Public/imageとも親交の深い彼が、2010年初頭に、作品集の出版ならびに東京都現代美術館で開催されるグループ展「MOTマニュアル2010」へ参加することが決定!! そこで、Public/imageでは、年明けに向けた短期連載企画として、黒田氏に密着し、作品集/展覧会ができるまでを追いかけていきます。
前回の作品集メイキング:平面編に続く今回の立体編では、多数の撮り下ろし写真も収録される作品集『森へ』のために製作された立体作品のメイキングから、撮影現場の模様までを一気に紹介します。
今回の撮影について
「今回は、作品集の出版が決定した段階で、写真を入れることも決まっていたので、全体のストーリーの方向性が固まると同時に、イラストの作業と並行して、花の紙立体や、木や動物のパネルなど、撮影のために必要な立体作品も作り始めました。
紙立体は、以前からやっていた手法なのですが、今回はイラストレーションでも鉛筆を使ったり、着色をしたりと、今までとは違うアプローチにチャレンジしていることもあり、写真でも何か違うことをやりたいという思いがありました。
これまでは、要素を積み重ねるほど強いものができるという考え方で、例えば紙立体の花が10個よりも100個、100個よりも300個あった方が、幅が広がると思っていたところがありました。でも、昨年舞台美術の仕事をやったりするなかで、削ることの重要性、目を向かせるポイントを意図的に絞ることの大切さに気付いたんです。そこで今回は、要素を詰め込んで、自分の世界観を一枚絵で完結させるのではなく、全体の流れや、モデルをお願いしていたもたいまさこさんと小林聡美さんの個性なども重視して、写真も衣裳も極力シンプルに見せていこうと考えました。僕の立体作品がすべての写真に入っていなくても成立するようなものにしたかったんです」
紙立体


「紙立体は、原画のスキャンデータを色紙に出力して、それを切って一つひとつ手作業で作っていきます。今回は、紫、赤、青、モノトーンの4色を軸に紙を用意しました。いつもよく使うラシャ紙を今回もメインで使っています。ラシャは発色が良いのと、普通のケント紙と違ってテカりが出ないところが気に入っています。また、写真に収めた時の質感を考えながら、ラシャ以外にも10種類くらいの紙を使いました」




「色紙を花や葉っぱの形に切り取った後は、針金などをつけて形を整えていきます。僕は立体作家ではないので、このような立体モノを作る時は、いかに早くたくさん作れるかということを重視しているのですが、すべて手作業になるので、どうしても時間がかかります。今回もアシスタントに協力してもらい、計300個くらいは作ったと思います」
パネル


「木や動物などは、原画のシルエットを出力し、パネルに貼り付けています。今回は、鹿を始め3匹くらいの動物をパネルで作りました」
3Dキノコ


「今回は、造型の仕事をしているHiJIKIの田中久美子さんと一緒に、3Dのキノコも制作しました。まず自分のイラストと指示書を田中さんに渡し、発泡スチロールの素材で基本となる造形を作ってもらい、そこに自分でペイントをしていきました。イラストを本当に忠実に形にしてくれたので、本当にスゴいなと感じました。これまでは、立体と言っても、あくまでも平面的な要素をレイヤー的に重ねていく感じだったのですが、今回は新たな挑戦として、これを作ってみたんです。自分のイメージが360°に広がっていくというのがとても面白かったです。田中さんには、もたいさんと小林さんが乗る台座や切り株などを作ってもらいました」
撮影

「今回は、スタジオを押さえていた時間が短かったことや、撮影当日のモデルの拘束時間が限られていたことなどもあり、撮影前日に事務所でセットのシミュレーションをしました。これほど前準備に時間をかけたのは、今回初めてかもしれないですね(笑)」


「現場では、『2クール』の仕事で知り合って、今回の作品集のアートディレクションもお願いしている大島依提亜さん、柔らかく優しい写真が特徴的なカメラマンの羽田 誠さんらのスタッフに相談しながら、フォトディレクションをしていきました。
朝の9時くらいから立体のセッティングをスタートし、もたいさん、小林さんに入ってもらうモデルカットなどを中心に撮影し、大きなトラブルもなく、予定通り18時にすべて終了することができました。
全部で10カット以上あったのですが、今振り返ると、よくこの短時間でそんなに撮れたなと思います(笑)。現場では、撮影はもちろん、衣裳やメイクのチェック、セットの切り替えなど、色々なことを同時進行でやっていかなくてはならず、とても集中力がいりましたが、当初からやりたいと思っていた削ぎ落としてシンプルに見せるということはできたと思うし、ベストを尽くすことができました」


「テストのポラロイドを撮影した順に貼り、全体のバランス等を確認しながら進めていきました。今回は、モデルやスタッフ一人ひとりが持っている要素が掛け合わさることで、良いものが生まれることがベストだと思っていたので、みんなの意見を取り入れながら、現場の楽しさや雰囲気作りみたいなところまでスゴく意識しましたね。そういう空気感は、写真にも絶対出ると思うんです」


「今回は、森の精霊のようなものが人間に入り込んでいくというストーリーのイメージがあったので、もたいさん、小林さんに狼や鷲などの動物に扮してもらったのですが、その時にたまたまアラスカで見つけたこのオモチャのお面を使いました。始めはサンプルのつもりで買ったのですが、東京に戻ってきてから、見れば見るほど好きになってしまい、結局使うことにしました(笑)」
「平面編」「立体編」と2回に分けてお届けした作品集メイキングはこれで以上です。次回は、今回の作品集のアートディレクションを担当している大島依提亜さんとの対談をお届けする予定です。
Posted by:黒田潔
1975年東京生まれ。イラストレーター/アートディレクター。多摩美術大学大学院美術研究科グラフィックデザイン専攻修了。2003年より独立。新宿サザンビートプロジェクトで2005年グッドデザイン賞受賞。2010年2月より東京都現代美術館「MOTマニュアル2010」参加。2010年3月4日より「@btf」にて個展開催。現在、大阪成蹊大学で客員教授を務めている。
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