5月16日に開催されたカンファレンスイベント 「PUBLIC/IMAGE.METHOD」。「Public-image.org」では、カンファレンスで行われた5つのセッションのダイジェストを、5回に分けてお届けします。
最後となる今回は、カナダ在住のミュージシャンI Am Robot And Proudが奏でる、切なくも暖かいエレクトロ・ポップサウンドと、さまざまなアート/デザインプロジェクトに参加する真鍋大度が手がけたインタラクティブアートによる、初のライブセッション。口に入れた小さなLEDを音でコントロールするパフォーマンス、顔面を音楽のヴィジュアライザーとして扱うパフォーマンス、ともにYouTube上でも大きな話題を呼んだ真鍋の作品と、I Am Robot And ProudによるTENORI-ONとキーボードの演奏がコラボレートした画期的なセッションとなった。
Text:笠原桐子
Photo:竹林省悟

(左)真鍋大度氏、(右)I Am Robot And Proud氏。
真鍋:ここにいる人たちは、口の中に小さなLEDを入れています。I Am Robot And Proudさんはキーボードを弾いたり、TENORI-ONを使ったりして、こちらにデータを送ります。それで、LEDをコントロールして、パフォーマンスをやってみたいと思います。
真鍋:次は、顔に電極を繋ぎ、I Am Robot And Proudさんが演奏するキーボードの情報を電気信号に変換して、顔面の筋肉を無理矢理動かします。
前セッションのスピーカー、タナカカツキ氏が飛び入り参加
タナカ:以前からYouTubeで見て知っていたので、最初は「わー、俺もできるんや!」って喜んでたんですけど、メチャメチャ痛いんですよ(会場笑)。電気が走るから痛くて顔をしかめたいんだけど、違うところが動いちゃうんですよね。顔面を手ごめにされてる感じなのに、美しい音楽が流れているという…(会場笑)。ものスゴく贅沢な時間を過ごさせていただきました。
真鍋:どうもありがとうございました。ちゃんとセッティングすると、実は痛くなかったりするんですけど(会場笑)。今回は時間がない中でやっていただいたんで、普通よりも倍くらい痛かったと思います(笑)。
Public/image.:パフォーマンス、どうもありがとうございました。まずは、今回の制作環境について教えて頂けますか?
真鍋:MAX/MSPというアプリケーションを使ってシステムを作っています。まず、LEDの方ですが、これはI Am Robot And Proudさんが演奏する音楽のMIDI信号を変換し、無線でデータをデバイスに送信しています。顔を動かす装置の方は、オーディオ信号をハードウェアで電気信号に変換し、顔の筋肉をコントロールする感じですね。
Public/image.:I Am Robot And Proudさんは、今回の真鍋さんの演出についてどう感じましたか?
I Am Robot And Proud:自分が音楽を演奏して、誰かの顔が痛くなるというのはちょっと恐いですね(会場笑)。弾きながら「痛いんじゃないかな」と、ずっと思ってました(笑)。
Public/image.:真鍋さんは、I Am Robot And Proudさんの音楽がもともと好きだったそうですね。
真鍋:はい。もともと好きで、CDも持っていました。以前から、このパフォーマンスを他のミュージシャンの音楽でやったらどうなるかなとは思っていたんです。彼は、プログラミングもできるんですよね。共通言語も多かったので、こちらで用意したデバイスを彼なりの解釈で使ってくれるんじゃないかなと思いまして。

Public/image.:今回はTENORI-ONを取り入れていましたが、楽器としての可能性はありそうですか?
I Am Robot And Proud:エレクトロニック・ミュージックの楽器としては、スゴく新しいと思います。今までのキーボードというのは、スゴくマシンぽくて、操作も機械的な部分が多かったのですが、TENORI-ONは音を視覚的に見せてくれる楽器だと思います。
Public/image.:真鍋さんは楽器を自作したりもしていますが、新しい楽器をデザインしてみたいという欲望はありますか?
真鍋:ハードウェアセンサーなどを使って音にするようなことはやっていますね。今興味があることは、脳を直接操作して、演奏する時に使われている脳の部分を止めたら、どんな演奏になるのか、ということです。すでに、医療器具で電磁場を発生させて電気を流して脳の一部の機能を止める装置があるので、その技術を活かした楽器というか、エフェクターのようなものが作れないかなと。危ないからダメだろうって感じですが(会場笑)。でも要は、自分の限界をどうやったら超えられるかということをいつも考えているのですが、自力で自分の考えていることの上を行くのは難しいので、テクノロジーの力を借りてできるなら、ということです。
Public/image.:真鍋さんのプロジェクトというのは、身体に対しての操作性を追求していくものが多いのですか?
真鍋:いろいろやっている中のひとつとして、自分の体を使って何かをするのが面白いなという感じですかね。そういうネタを見つけたからやっているというだけで、特に深い哲学があるというようなことでもないんです。

Public/image.:テクノロジーの進化は、今後の音楽表現にどのような変化をもたらすと思いますか?
I Am Robot And Proud:エレクトロニック・ミュージックのライブは、ミュージシャンの体の動きがあまりないので、何をやっているのかわからない部分が多いですよね。でも、今日のように音楽をビジュアルで表現する体験型のライブなら、観客と心を繋げられるんじゃないかと思いました。将来ここからどんなクレイジーなプロジェクトができるか、スゴく期待しています。
真鍋:今回は、デバイスを16個作ってきたのですが、本当は200個とか300個とかあって、会場のお客さん全員に持ってもらったりすれば、パーティの中での新しい遊びとかにもなるんじゃないかと思いますね。(デバイスを)口に入れるというのはあくまでも一例で、それぞれに自分なりの遊び方、感じ方を見つけてもらいたいですね。今日はプロトタイプのお披露目のようになっていますが、今後もし彼とまた一緒にやることがあれば、そういうこともやってみたいなと考えています。

Public/image.:既存のソフトウェアで、まったく違う表現を生み出す可能性についてどう考えていますか?
I Am Robot And Proud:今は、自分で何かを作ろうと思えば、いくらでも作れる環境がありますよね。例えば、自分は全然グラフィックの勉強をしていないし、知識もあるわけではないけれど、自分でソフトウェアにアクセスできて、それを使って好きなテイストのCDジャケットが作れるというのは、素晴らしいことだと思っています。
真鍋:僕が今やろうとしていることは、どちらかというと言語自体を新たに作るという試みです。7月にB Galleryで石橋素氏と個展を行うのですが、そこでは、ミシンを制御するための言語を一から作り、その言語自体がグラフィックデザインにもなるにもなる、というような展示をする予定です。そもそもの「言語」から作ってみることに、もしかしたらひとつ新しい道があるのかもしれない、と。
Public/image.:では、最後の質問です。今後、音楽を用いたインスタレーション表現は、どのように進化していくと思いますか?
I Am Robot And Proud:僕は、テクノロジーを用いて、観客とコネクションすることに興味があります。自分はそれを音楽を通してやっていますが、今日のようなプロジェクトやライブパフォーマンスも面白いと思います。今、ゲームと音楽を融合させてユーザーとコネクションできるようなプロジェクトも進めているんです。リリースの詳細については、まだシークレットなんですが。
真鍋:僕は、音を使って、今日作ってきたような小さなデバイスとコミュニケーションできるようなものをもっとやってみたいなと思っています。例えば、このキューブの中には、マイクが仕込んであって、その音にただ反応するのではなく、音をコマンド、コミュニケーション言語として理解することで色が変わっていくんです。そういった使い方で何か面白いことができたらなと。
Artist Profile
真鍋大度
プログラミングを駆使して様々なアート・デザインプロジェクトに参加。顔面を音楽のヴィジュアライザーとして扱ったYoutubeの実験映像がギーク系ブログで話題になり一ヶ月足らずで100万ビューを達成。2008年3月、ハッカーズスペース、4nchor5La6を設立。石橋素氏と共同主催。株式会社ライゾマティクス取締役。

I Am Robot And Proud
カナダ、トロント出身。エレクトロサウンド作曲家、演奏者、ライブキーボード奏者。心地良く暖かいエレクトロ・ポップサウンドで知られている。2000年に音楽とコンピューターへの情熱を一つにすべく、”I Am Robot And Proud”として活動をスタート。










