5月16日に開催されたカンファレンスイベント 「Public/image.METHOD」。「Public-image.org」では、カンファレンスで行われた5つのセッションのダイジェストを、5回に分けてお届けします。
第3回目となる今回登場するのは、アートディレクター三嶋章義とデザイナー山本亜須香によるファッションブランド「フガハム」と、広告やファッション誌の撮影を数多く手がけるフォトグラファー田島一成。三者のセッションは、「フガハム」の最新シーズンのカタログを共に作成したことがきっかけで実現した。架空の国「フガハム」を、ファッションにとどまらず様々な方法で表現し、確立していくという「フガハム」のコンセプトは、現在そして未来のビジュアル表現にどんな影響を与えていくのだろうか。カタログ製作現場の映像を挟みながらのトークセッションは、イベントなどの場に登場する機会をほとんど持たないという田島を交えての貴重な時間となった。
Text:笠原桐子
Photo:竹林省悟

(左)FUGAHUM 山本亜須香氏、(中)FUGAHUM 三嶋章義氏、(右)田島一成氏
Public/image.:フガハムには、ファッションを通して架空の国を表現するという世界観があるんですよね。
三嶋:ブランドコンセプトとして、日本の歴史や、東京独自のミックスカルチャーを、ファッションだけではなく、アート的にも、カルチャー的にも打ち出したいと考えています。日本が敗戦を経て裕福になっていくまでの過程であったであろう様々な葛藤とか、宗教観もなくすべてフラットに物事を見ているような東京のミックス感覚といったようなものを、架空の国FUGAHUMに置き換えて、毎回のコレクションで国の歴史を明らかにしていくプロジェクトです。
山本:洋服の世界は、デザインもそうですが、もうすべてが出尽くしてしまっている感があります。だから、今あるものにプラスアルファで何かしないと、新しいことはできないと思ったんです。私だけで洋服を作ることもできたのですが、そうするとやっぱり同じデザインの枠内でしか表現できない。でも三嶋となら、アートの世界や精神的な部分も含め、洋服に思想を盛り込んで何かできるんじゃないか、というのが始まりですね。
Public/image.:田島さんはフガハムについてどう感じていますか?
田島:立体的で、構築的で、コンセプチュアル。それでいて東京的という感じですね。例えば、ヨーロッパの服というのは、伝統の中からいろんなものをサンプリングして作っていると思うんだけど、フガハムの服には、そういう伝統から来ていないものがある。僕は普段、ファッション誌の撮影でも、東京の服を撮る機会が少ないので新鮮でした。

Public/image.:ファストファッションの流れの中で、フガハムのようなハイブランドの立ち位置とは?
山本:まず選ぶ時の気持ちが違うと思うんですね。付加価値や、特別なものという気持ちを持たせなければいけない。
三嶋:僕たちの服は、ひとつの洋服でいろんな着方ができるんです。着てくれる人たちが、それをどう理解してくれるかですね。
山本:「こういう着方をしてください」という提案をしたくはなくて、それは個々で考えてもらいたいんですね。どういう組み合わせ方ができるかなどを考えて、新しい着方をしてもらいたいと思っています。
Public/image.:田島さんとフガハムには、“ノリの違い”のようなものがある、と打ち合わせの時におっしゃっていましたね。
田島:僕は20年くらいファッションの写真を撮り続けてきています。最初は、セックス・ピストルズみたいに、変わっていて、元気で、雑でも新しくて、目立てばいいというような写真を撮っていたんです。ただ、そういうことをやるのは意外と簡単。逆に、ビートルズみたいに、誰が聞いてもきれいなメロディがありつつも新しい、というものを作るのが、実はスゴく難しいんだということを感じながら、今に至ります。
三嶋:今、田島さんがビートルズ側にいるとしたら、僕たちは思想的にはピストルズ側、それも「2周目」あたりですね。ベースが弾けないシドが、アンプに繋がれてもないベースで人をぶん殴ってOKみたいな、適当な感じ。それってただの武器ですよね、音出ないんだから。それくらいのテンションを持っていたいという感覚はあるんです。そういう時に、田島さんと一緒にやらせてもらって、もちろん写真だけではなく、ファッションについての考え方、写真のディレクション、ヘアメイクのことなど、話す機会がいっぱいありました。

田島:ファッション写真って、バランスなんですよね。フガハムの作っている服は、構築的でアバンギャルドでカッコ良いんだけど、カメラマンもヘアメイクも全部アバンギャルドな手法でやってしまうと、安っぽく子どもっぽいものになってしまう。服をクオリティのあるものに見せる上では、全体のバランスをとることが重要です。それには経験やセンスが必要な場合もある。
三嶋:それが一番勉強になったところです。今まで僕たちは勢いでやってた方なので。今回初めて、自分たちのブランドが「ああ、ファッションだな」と思いました(笑)。トガっていたいけど、やはりファッションの枠に入りたいんですよ。「異端」とか「アート的」と言われがちなので。今回、ファッションとして、このセッションで田島さんにいろいろ教えていただけたのは、本当に感動的なことでした。写真のセレクトに関しても、田島さんは最初から全部見ていくんです。「撮っていて、これだというカットはあったけど、そういうのはとりあえず全部忘れる」って。その熱意とパワーは、僕が今まで見てきた中でもスゴいものでした。
田島:撮影の時も集中しなければいけないけど、最後に写真を選ぶという行為自体は、本当にもう一回撮影するのと同じくらい重要。見た人の心が動くというか、ハッとする、引っかかるものを選びます。そこまで体力が続かないときついですよ。

FUGAHUM 09-10 A/W Collection “WIRELESS MIND”
Photography:Kazunali Tajima
Public/image.:写真、ファッション、アートというそれぞれの持ち場から、ビジュアル表現の未来について思うところを教えてください。
田島:底辺のレベルは上がってきていると思うんです。特殊な技術を持っていないとできなかったものが、どんどんできるようになってきたという広さがあります。だけど、もちろんソフトを使うだけで何でもできるというわけではない。何を作りたいのかハッキリしてから使わないと、ただ使っただけになってしまいます。車に乗っても、行き先を決めなければどこにもたどり着けないのと同じだから、ゴールを決めつつ進んでいきたいとは思うんです。
山本:変なことをしようと思えばいくらでもできます。それを、いかに着られる洋服として枠の中に入れるか、ギリギリのところでやるわけです。三嶋のアートや、奇抜なことを盛り込んでも、どこまで着られる線なのかという瀬戸際を行っているので、デザイン画だけ描いて誰かに投げるというやり方だと面白くない。当然ですが洋服は立体ですから、平面で考えるのではなく立体的に考える。自分の手でトルソーに向かって構築的に組み上げて、パターンも自分の手でおこす。その過程を怠らないことで発見があるんです。こういう人がいっぱい出てくれないと、面白い服は見られないと思いますね。
三嶋:ソフトウェアがスピードアップして、みんなが何でもできるという状況になり、これからは集団よりも個人、つまり自分との戦いになっていくと思うんです。技術がないとできなかったことでも、テクノロジーが発達したために、思想が明確にあれば作れるようになった。そういう意味では、ひとりに対しての技術度がどんどん高くなって、個人の発想と幅が広がり、分野の壁は崩壊してくるのではないでしょうか。

Artist Profile

FUGAHUM
“フガハム”とは、デザイナー山本亜須香とアートディレクター三嶋章義が提唱する架空の国の名称。その歴史の断面を、現代的なジャポニズムと捉え、ファッションだけにとどまらず様々な方法で表現し、”フガハム”という国を確立してゆくアートプロジェクト。第二次世界大戦の敗北から半世紀以上を経た現在、戦後第三世代にあたる三嶋と山本は、この架空の国”フガハム”に、日本人としてのリアリティーを重ねている。

田島一成
1968年東京生まれ。写真家五味彬氏に師事。パリ、ニューヨークで活動を経て2002年から東京を拠点に。ファッション誌、広告、CMなどで活躍中。












