5月16日に開催されたカンファレンスイベント 「PUBLIC/IMAGE.METHOD」。「Public-image.org」では、カンファレンスで行われた5つのセッションのダイジェストを、5回に分けてお届けします。
第2回目となる今回は、日本が誇るウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」を率いる猪子寿之と、『バカドリル』『オッス!トン子ちゃん』などの著者として知られる鬼才クリエイター、タナカカツキのセッション。チームラボによるコンテンツインターフェイス「SKETCH PISTON」の第2弾となるタナカカツキ・バージョンが今回のために作製され、初披露された。操作する側の意図を超えて、次々と繰り広げられる「SKETCH PISTON 2」のシュールな展開が、会場に笑いの渦を巻き起こした。
Text:笠原桐子
Photo:竹林省悟

(左)猪子寿之氏、(右)タナカカツキ氏
猪子:「SKETCH PISTON 1」は、株式会社アイディーユープラス様から、会社のコーポレートサイトの依頼があり、今までのコーポレートサイトとは違って、訪れたユーザーが参加できるものがいいなと思って作りました。もう少しシリーズで続けたくなったので、今後もいろんなクライアント様のWebでリリースしていこうと思っています。
Public/image.:その「 2」ということで、今回のイベントのために、タナカカツキさんバージョンを開発して頂きました。
タナカ:「1」には、ひとつひとつのツールに各種機能がありましたよね。加速したり、跳ねたりする情報を持った線など。そういうものは「2」でも、下敷きになっています。
猪子:原理的には、「1」とまったく変わってないですね。基本的に、物に質量があって、線を描けたり、スタンプがあったり。
タナカ:今回のバージョンには、物語を投入しました。物理演算の世界というのは、僕らが思ってるようになかなかならない、不本意な部分が面白いですよね。逆に言うと、僕らの想像を超えてくれるという面白さがある。そんな想像を超える部分で、人との関係なんかが出ると面白いなと思って。例えば、跳ねるという情報は、鉄板が熱くて「熱っ!」って跳ねたりとかね。
猪子:「1」は目的を自分で作る、ゴールを自分で見つけるゲームのようにしたんですけど、「2」の方はエンディングがないマンガみたいな感じになりました。
タナカ:物理演算で、ここまでサクサク動いてくれるというのは驚きましたね。これからは、キャラクターひとつがどれだけの情報を持てるか、ということになる。ひとりひとりの性格付けや、体の柔軟さを表現できたり、表情もいろいろ出てきますよね。いずれは、画面の中に役者をいろいろ配置するだけで何か起こるとか、そういうこともできるんだろうなと思うと楽しいですね。技術的な部分で敷居の高かったことが、ディレクションするだけでできるようになるのかもしれない。それこそアイデア次第だと思いますね。
猪子:絵を描くことってスゴく楽しいけど、上手く描けないと楽しくない。だから、上手くなくても絵を描くのが楽しくなるような、世界に落書きしているようなものができたらいいなと思ったんです。「1」は落書きというか、イタズラですよね。世界にイタズラするみたいな感じ。「2」はやっぱり、世界を作っていく、ドラマを作っていくようなところがあります。
タナカ:今、まったく絵の描けない人がマンガ描いたりするんですよね。全部素材を利用して。そういう漫画家が登場する時代になっちゃったなと思うけど、それで面白ければ読者はいいわけですよね。頭の中に面白いアイデアはあるけど、絵が描けない……、で終わってる人もいっぱいいると思うんですよね。そんな人はバンバン素材を利用してマンガ描いて、漫画家と言い張ってもいいんです。
猪子:反対に、きっちり面白いストーリーが書けなくても、マンガになるようなところが「2」にはあります。勝手にマンガになる、誰でもマンガを作れるっていう感じのものになりました。機能的には「1」と「2」はまったく一緒なんですけどね。

タナカ:猪子さんって、これまでメチャクチャマンガ読んできたでしょ? チームラボさんの仕事ぶりを見ていると、マンガを読んできた人の発想とか、ファンキーさを感じるんですよね。いわゆるマンガ的発想という言い方をしていいかどうかわからないけど、そういうものがいろんなところに散らばっていますよね。
猪子:作ってたんですよ、マンガ。中学校の時に。投稿したりしてたんですけど、落ちるんですよね。「ファミ通マンガ大賞」っていうのに出してたんですけど。
タナカ:出すところ違ったんじゃないの!?(笑)
猪子:ゲームも作りたかったんですよ。でも、いわゆる普通のゲームは、おそれ多くて。小さい頃、なんでBボタン押したら速くなるのか、なんでキノコ取ったらデカくなるのか、理由がわからなくて。
タナカ:みんなわかんないんじゃないの!?(笑)
猪子:だからゲームは無理だ、ゲームを作るような人間にはなれないなと思った。でも、みんなが作らないようなものだったら、こっそり作っても悪口言われないかなって。
タナカ:常に「なんで?」って考えるのが猪子くんのパーソナリティだなと思う。そういうものが、チームラボさんの仕事ぶりにも伺えるというかね。

猪子:これからは、Webの中にゲームコンテンツ、マンガコンテンツがあるというより、その境界がなくなっていく方が面白いと思っています。Web自体が、インターフェースやゲームと区別がつかなくなったり、インターフェースとマンガの区別がつかなくなってきたり。カッコ良いインターフェースもいいけど、インターフェースそのものがマンガや、ゲームだったりする方が面白いなと。
タナカ:今日見てもらった「SKETCH PISTON」は、ゲームっぽいとか、マンガ的という話も出たけど、まだ名称もない段階ということの面白味がありますよね。名前のない、この時期のクリエーションってやっぱり面白いと思います。今、この分野はまだ、みんなが知恵を出し合って生み出していくというような状態ですよね。プレイヤーにも発想やアイデアを頂いたりしながら、連携してものができてくる。ゲームとかマンガに断定されていないこの状態が、そういう連携を生むんだなと思うんですよ。マンガとかゲームも、過去はそうだったような感じがあると思いますね。


Artist Profileタナカカツキ1966年大阪生まれ。京都精華大学美術学部(現芸術学部)ビジュアルデザイン学科卒。在学中の85年にマンガ家デビュー。著書にはマンガ「バカドリル」「オッス!トン子ちゃん」など。映像作品集(DVD)「SUNDAY」をリリース。森美術館「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」に参加するなど幅広く活動する。2008年11月「新しいバカドリル」上下巻、12月blu-ray「ALTOVISION」発売。

猪子寿之1977年徳島生まれ。ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表。2001年、東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。2004年東京大学大学院情報学科中退。大学では、確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。テクノロジー、アート、デザインの境界線をあいまいにしながらインターネットから空間まで活動。












