オランダを代表する雑誌といえば、世界に燦然と輝くインテリアマガジン『FRAME』だろう。
とはいえ僕が『FRAME』がオランダの雑誌だったと気付いたのは、ほんのつい最近のことだ。
その洗練された内容を見て、ロンドンの雑誌だ、と勝手に思っていたのである。
そんな優れた雑誌を手がけている出版社が「BIS PUBLISHERS」である。
雑誌のほかに数々の質の高いデザインブックも数多く刊行している、オランダを代表する出版社を訪れてみた。
Text:草彅洋平(東京ピストル)
協賛・協力:ダッチデザイン・プロモーション「Premsela」、オランダ大使館 文化部、オランダ政府観光局
インタビュー協力:木戸昌史
通訳:西島教子、Bas Valckx
約束の時間。
地図を見ながら向かうと、学校を改装した建物の中にオフィスはあった。

教室一つほどのサイズ。
働いている人は少ない。
僕らが行ったときに編集者が2人で働いていた。
日本の殺伐とした編集部とはまったく違う、ゆったりとした職場の空気が流れている。

「BIS PUBLISHERS」の代表であるRudolf van Wezelさんが、30分ならインタビューに付き合えるというので話をする。

どうもこんにちは。今日はいろいろ教えてください!!
どうも、こんにちは。
日本で『FRAME』を買っていましたよ!
ありがとう(笑)。僕らはインターナショナルということをコンセプトにしてやっています。「BIS PUBLISHERS」(以下・BIS)ではほとんどの刊行物を英語で出版していますからね。そして、ほとんどのものを全世界で販売しています。そのほかにもさまざまな国の人とコラボレーションすることもありますし、韓国や中国をはじめとするアジア各国でも発売しています。広告やグラッフィック、ファッションなど様々な観点からのデザインを探していますね。
BISで最も知られている雑誌が『FRAME』ですね。
『FRAME』は最初に出版した本なのですが、7年前に別会社にしてしまいました。いまは『MARK』という新しいタイトルの建築誌も出しましたね。こちらも『FRAME』についで好評です。


BISはRudolfさんの会社なのですか?
BISもFLAMEも自分で持っている会社なのですが、その後2人が新たに入り、現在は3人で管理しています。クリエイティブなものと商業的なものとを統合させた会社を立ち上げようと作りました。
BISで重要な本はなんでしょうか?
長年出版しているのですが(ニヤリとして)、この本が一番重要な本かな…。2年ごとに出版している、最近のオランダのデザインがわかる本ですね。既に2巻まで出ていて、ディック・ブルーナがデザインに参加しています。日本でも売れるでしょうね。次号は限定で箱に入ったものも出す予定です。その他にもTシャツとか。この次の号は『My Dutch Design』というタイトルで作りました。いつも違うタイトルを使うんですね。こうやって重なるんですよ(書籍の裏面/ピンク色のプラスチックの部分が、分冊のブルーのプラスチック箇所とドッキングして2冊を合本できる)。


これはすごい! 日本の造本ではまずやらないですね。

『sketching』も良い本ですね。デザイン系の大学教授2人が、商品デザインに関してのスケッチをまとめた本で、2万部がすでに売れています。英語のみならず、ドイツ語、中国語、韓国語で出版されています。学校でも教科書として使ったりしていますね。実際のスタジオからスケッチを直接取り寄せて編集しました。
これはいい本ですね! スタジオジョブのスケッチなんて勉強になるなぁ~。車のデザインもありますね。オランダのデザイナーのみですか?
他の国の方もいるかもしれませんが、オランダのデザイン学校を卒業した方々がメインです。

どのくらいのタイトルを1年で刊行していますか?
25冊くらいですかね。
スタッフ総数は?
3人です。他の外部のスタッフと一緒に仕事をすることが多いんですよ。オランダではデザイン事務所がデザインのほかにエディトリアルの部分まで行い、お金の面もコントロールして、出版まで行うのです。僕らの本のデザインは、オランダのデザインオフィスがやっています。1社に絞るのではなく、毎回いろんなデザイン会社にお願いしますね。
ステキな本ばかりですね。オランダ政府は若い出版社を助けたりしてくれますか?
補助金を受けて作ることはほとんど無いです。どちらかというと、スポンサーを見つけて出版するということはあっても、できれば自分たちでマーケットを作って、売って、お金を作り出したいと思っています。お金をもらって本を出すと、補助金をつけてもらったところに気に入られるような仕事しかできなくなってしまうので。できればマーケティングをしっかりやっていきたいですね。
出版の方針は?
自分たちが感じているものや必要性のあるものをテーマとして選んでいます。例えば18年くらい前は写真集が主流を占めていたが、いまはもう飽和状態。だから作らないですね。市場が何を求めているのかということを徹底的に考え、本を作ります。
インターネットの出現によって出版が喰われていく、ということが日本だと起きています。
もちろんインターネットは非常に簡単で何でも情報をすぐに集められて便利なのでそう思われることもわかりますが、『FRAME』を例にとって話すと、5年前に「FRAME DIGITAL」というフォーマットを立ち上げたんです。でもそれはそのまま雑誌の内容を転載するのではなくて、検索している人が求めているイメージを、プレゼンテーション用にダウンロードしたり、リサーチをしたりすることができるものをフューチャーしてつけた。だからインターネットによって弱い立場になるのではなく、強みを新しく作り出すのが大事ですよね。BISの本について言えば、日本でも世界中どこまで行っても、僕らがつくっている本は必要とされると信じています。

草彅洋平(東京ピストル)
「東京ピストル」代表。編集者兼プランナーとして株式会社イデーを経て、独立。鈴木宗男をクラブに招き、DJプレイを行いクラブをつぶした伝説的なクラブイベント「ムネオナイト」を主催するなど、編集のほか、デザインディレクション、イベント、プロモーション、執筆など幅広く活動している。また、日本文学の水先案内人として、自社ブランドで「文豪T シャツ」シリーズのほか、文学に関するグッズを多数手がける。現在ビートニクに対抗するニートニク運動を起こすべく、Webマガジン「NOIS(ノイズ)」を構想中。












