Text:ECD
Photo:植本一子
「絶対反対なのに何ゆうとるの!47と23なんて親子の年齢差よ!その男はいちこに甘えとるよ!」
いちこが母親からのメールを見せてくれた。正月は僕と一緒に帰郷すると伝えたメールへの返信だった。

「CCCD反対!」「戦争反対!」—。これまで「反対」は自分が誰かに向かってすることで、自分が「反対」されるという事態に、この年齢になって立ち向かうことになろうとは夢にも思っていなかった。
付き合い始めてひと月も経たないうちに、いちこは僕と結婚しようと思っていることを母親に伝えた。すぐに返ってきたのが「そんな年寄りは寿命ないから反対!」という返事だった。
僕自身は、何はともあれ挨拶くらいはしておかなければと思っていたから、正月の帰郷に同行することにためらいはなかった。ところが、いちこの母親は僕と会うことが自動的に交際を認めることになってしまうと考えているらしかった。
一度は自ら東京に出てきて、僕の顔を見てやろうとしたのだが、頭に血がのぼりすぎてもいけないと思いとどまったということだった。
いちこはいちこで、僕を連れて帰れないのなら今度の正月は帰らないという。
出る幕がなく手をこまねいていた僕に、古い友人Tから何年振りかで電話があって、思い出したことがあった。Tは僕と同い年なのだが、何年か前に15歳年下のJちゃんと結婚したのだった。年齢差こそ僕といちこほどではないが、TはJちゃんと付き合い始めた当初は妻子がある身だった。そんな結婚をJちゃんの両親がどうして認めてくれたのか。Jちゃんの両親の存在など、それまで考えもしなかったことだった。
今年の春、乳がんの手術をした猫のプーちゃんの胸に、また大きな腫瘍ができている。春の手術では50万円を超える費用がかかった。しかも、術後の経過が思わしくなく、プーちゃんは何週間も食事を摂れない衰弱した状態が続いた。もう一度手術を受けさせることは、費用の面で今は難しい。それにプーちゃんをもう一度あの苦しい状態に戻すことでどれだけの寿命が延びるのかもわからない。プーちゃんはもう10歳だ。僕はこのままプーちゃんに手術を受けさせることはないだろう。その判断が正しいかどうか、それはわからない。
以前から何かあると相談していたという47歳の女性に会って帰宅したいちこは、すっきりした顔で、やっぱりひとりで帰って母親と話してくると僕に告げた。僕の出番はまだない。
Posted by:ECD
60年生まれ。ラッパー。本名石田義則。ファイナルジャンキー主催。 96年に、日比谷野外音楽堂で開催された伝説的なHIPHOPイベント「さんぴんCAMP」を主催したジャパニーズヒップホップのオリジネーター。アルコール中毒に悩まされた時期もあったが、今では立ち直り警備員をしながら音楽活動を続けている。『ECDIARY』(レディメイド・インターナショナル)『失点イン・ザ・パーク』(太田出版)などの文筆活動を始め、音楽活動以外でもその才能を発揮している。
ECD最新情報ECD最新刊『いるべき場所』(メディア総合研究所)が現在発売中。また、通算11枚目のオリジナルアルバム『FUN CLUB』(ファイナルジャンキー)は2月15日に発売予定!!
植本一子
84年広島県生まれ。写真家。02年、高校生の生活フォトコンテスト受賞。03年、日本写真芸術専門学校在学中に、キャノン写真新世紀で、審査員の荒木経惟氏らから賞賛を受け、優秀賞を受賞する。現在はフリーランスで活動中。












