NEWなタイプばかり称揚し、提灯記事で消費を煽り、プロモ期間を終えるや否や、過ぎたるはお呼ばざるが如しなのがメディアの常。「NEWなタイプは消費の道具じゃない!」ーOLDハイプの欺瞞を糾弾しつつ、自らもまたハイプである葛藤に奥歯を噛む。魂をメディアに縛られた人々へ。電波、紙に載らない本音の論評をもって我らがリテラシーの革新に挑む、NEWハイプ専用コラム連載。
ーー「カリスマ」という言葉が世間に垂れ流された頃からだろうか、
「予め”知って”いるもので、”親近感を覚える”ものでないと、読者は興味すら持たない」
という見解が雑誌業界の”常識”として、郊外の居酒屋に掲げられたヤンキー系の人生訓さながら、編集者たちの脳を白痴化しはじめた。
つまり、未知数の表現に挑み続けるDJよりも、お約束の曲の連発で客を喜悦させるDJの方が、客入りは確実だし、第一それが”プロ”ってもんでしょう? というマーケティング的ロジックだかスキームだかの浸透によって、男性ストリート誌の表紙はほぼ同じレパートリーの人物による使い回し日替わり弁当の様相を呈し、同時に、展覧会主催者から掲載を打診された編集者は、
「それってどんな展覧会スか。事前に情報がわからないと、ページが作れないんスよね〜」
という言葉を、以前にも増してハトのように思考のかけらもないまんまるな瞳で問いかけるようになったのだった……。

だのに。
写真家の梅川良満は電話をかけてきて、ペインターのやぶのけんせいと2人展をやることになったから、告知をよろしくと言う。
内容は、と聞くと、
「いやあ、まだ決まってないんですよね」
「じゃあこの、フライヤーの絵柄は、2人のコラボ作品、新作ですか?」
「いや、これはどちらの作品でもないんです」
自分の作品ではないのに告知状にそれを刷って配る。意味がわからない。
なんだと。展覧会めがけて制作していくことだってあるわけだから、何が展示されるかなど、わかるはずがない。むしろ、わからないくらいじゃなければ、面白いものなんて作れるわけがないだろ。
このボケ。予定調和の土バトめ。

梅川良満の作品『REAL GRAFFITI』
とは梅川は一言も言わなかった。でも自分は豆鉄砲を食らったようにガ〜んとなった。
最初から決まりきった絵図を描き、お客のウケまで計算してから、ようやく作品を制作する。別にそのこと自体が悪というわけではないのだが、そうした打算に先だって、
「なんだかわからないが、作りたい」
という、やむにやまれぬ必然性があるべきで、雑誌に限らず、現代という時代はその部分が薄らボケのハト豆のようになってしまった時代なのだった。
やぶのけんせいの作品『BATMOBILE』
梅川はといえば、宇川直宏、NIPPS、Illdozerなど、ただでさえイル極まりない人物たちの無防備な瞬間、ドープすぎる恍惚の表情を、持ち味である容赦ないマッシブ感で撮影し、展示する(らしい)。
人は恍惚の瞬間、欲望を社会的に抑制している理性がトんでしまうことにより、大人の身体を晒しながら、赤ん坊さながらに阿呆な境地に至る。その変性意識状態が現実社会に投げかける”ヤバさ”の強度を、東京カルチャー最深部で追い求め続けてきた梅川独自の文化ゲットー的ヴィジョンが提示される、ということだろう。
一方、BECKのアルバム『インフォメーション』のカバーアートワークなどで国際的に活躍するやぶのは、手軽なアルコールなどの恍惚感に浸りつつ、浮遊した意識に去来するイメージの数々をひたすらに描出するという。
要するに、放っておいても社会的通念に照らしてイル極まりない2人が、展覧会という場を借りて公然と共謀し、公衆の面前でおおっぴらにブッ飛ぼうとしているのである。
「展覧会のタイトルは、『FANCY HEAD』。”恍惚の瞬間”という意味です」
そう語って梅川との深夜の交信は終了した。
結局、果たして展覧会がどうなるのかはわからずじまい。しかし、「ヤバそうだ」という、いい意味で不穏な空気感は確実に伝わってきて、展覧会に赴く際にはなるべく先入観を持たない阿呆の心構えで行こう、と再びハトを決め込んだところ寝てしまい、ふと見渡せば周囲は灰色なのに自分だけが白っぽい土バト。
「自分でエサを獲る努力くらいしろ」という夢判断。疎外感チックがとまらない。

梅川良満 × やぶのけんせい『FANCY HEAD』
8月16日から9月18日まで、新宿のビームスジャパン6F「B GALLERY」にて開催。
Posted by:
深沢慶太
1974年生まれ。編集者。「STUDIO VOICE」編集部にてデザイン分野全般の特集や記事を担当したのち、現在フリー。「Numero TOKYO」コントリビューティング・エディター。「AXIS」「デザインの現場」「STUDIO VOICE」「Pen」「MACPOWER」「NYLON JAPAN」など雑誌への寄稿、webや書籍の編集のほか、展覧会の企画構成、アーティストのコーディネーションなども手がける。編集を手がけた書籍に、篠原有司男3部作など。











